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148 神罰(後)


 二十四日。面倒なことになった。


 住人の退去は予想に反してスムーズに進んだ。当初は反発もあったが、雑貨屋の婆さんの一声で住人の大半の者が我々の指示に従い、各々荷物を手に指示された場所へと移動した。


 その雑貨屋の婆さんは、ここバッソルーナの商店会……いうなれば、ちいさな商業ギルドとでもいうものだな、そこの顔役であるとのことだ。

 アブランが「酒は嗜むのか?」などと聞いていたが、酒は飲めない体質らしい。

 事実、鑑定盤で確認したところ毒の影響はなかった。だがあまりにも協力的すぎる。


 胡散臭い。


 俺だけじゃなく、隊長にアブラン、コンラッド殿もそう思ったようだ。簡単に話を訊いてみる。すると、婆さんはこんなことを云ったのだ。


「女神様に反抗するような気骨など、私は持ち合わせてなんかいないよ。私らはもう直接アンララー様に喧嘩を売っちまったんだ。どんなことをしてでも赦しを請うことしかできないんだよ」

「アンララー様?」

「みんなが神子を騙る娘を捕らえると躍起になっている時に、うちの店においでになられたんだよ。いまにして思えば、ここがディルガエアだからアンララー様はなにもなさらなかったんだ。ディルルルナ様の顔を立てて、見逃してくださったんだ。

 ははは……それがあいつら、今度は教会を潰しちまうなんて。もう私らは終わりだ」


 諦めきった年寄りの姿に、俺たちは顔を見合わせた。


「あの婆さんは何を云ってるんだ?」


 住人の退去場所から西門前に戻る途中、誰ともなく問うた。答えはコンラッド殿が教えてくれた。


「神子様がアンララー様と同じ顔をしているのだよ。教会でも、一部では神子様はアンララー様の化身ではないかという者もいる。もっとも、ディルルルナ様の化身だと譲らない者もいるがな。神子様が普段から仮面をつけて生活しているのはそのせいだ。素顔を晒して歩けば、跪いて祈る者が続出するからな」


 俺は目を見開いた。


「マジか」

「私も跪いて、神子様を困らせたからな」


 なにをやって……いや、それも仕方ないのか? 俺だったら……あぁ、うん。やるな。それどころか、感激のあまり泣くかもしれん。


 門を抜け、兵士たちが集まっている場所へと向かう。


 領兵の一部が退去に抵抗、昨晩から膠着状態に陥ったのだ。退去させた住人の警護兼監視のために、多くの兵士の手を取られたのが痛い。


 抵抗しているのはおよそ三十名ほどだが、制圧できずにいる。


 殺してしまえば楽なのだが……。


 神子様がわざわざ助命を嘆願したのだ。殺す訳にはいかない。だがその結果がこの様だ。予想以上に領兵が強いこともある。


 いや、なぜか異様に市街戦に慣れているといったほうがいいな。


 軍団兵の五名が重傷を負い、すでに王都へと戻されている。


 昨日から領兵が数名、右の商店に立て籠もっているが踏み込めずにいる。通りの先にいる領兵共が射かけてくる矢が非常に鬱陶しい。結果、足止めされている状況だ。


 夕べからこの有様だ。一体、どれだけ矢のストックがあるんだか。


 ゴロゴロゴロ……。


 雷鳴が響いた。


 空を見上げる。薄くなっていた雲が厚みを増し、辺りが暗くなってきた。朝方に止んだ雨が、また降りはじめた。それも、雷を加えて。


 だが……。


「なんだ? 向こうにだけ雨が降ってる?」

「そのようだ。珍しいな。雨の境界――」


 バン!


 けたたましい破裂音が響き渡り、建物の影から矢を射ていた領兵のひとりが倒れた。

 さらに空から鋭角にうねるような光が、驚く領兵を打ち倒す。次々と。けたたましい音と共に。


「何が起きてる!?」


 隊長が叫んだ。


「全隊退がれ!」


 盾を構え、矢避けをしていた兵士たちが後退する。


 異常事態だ。


 降り注ぐ大粒の雨と共に、雷が降り注ぐ。こんなの、これまで見たことも聞いたこともない。そもそも、雷が降り注ぐなど、異常としか思えない。


「神罰……」


 すぐ隣にいたコンラッド殿の言葉に、体が震える。


 それはどれほどの時間だったろう。さして長くはなかったはずだ。


 雷が建物の影に隠れていた領兵を軒並み打ち倒した後、雨の堺が町の奥へと移動し、止んだ。


 あまりのことに俺たちはただ呆然としていた。


 降り注ぐ雷。打ち倒される領兵。倒れている領兵にさらに打つ雷。


 有り得ないだろう。明らかに、雷は狙って落ちていたとしか思えない。でなければ、倒れている奴にピンポイントで落ちるなんて有り得ない。


 ひぶしゅっ。


 誰かがくしゃみをした。それで俺は正気を取り戻した。


「商店を包囲! 倒れた領兵を確保!」


 命を出す。すぐに兵士たちは行動を開始した。隊長が恨みがましそうに俺を見ているが、気にしないことにする。


 商店に一度突入したが、押し戻されてしまった。


 店の構造が思いのほか面倒だ。盾を前面に出したまま進むのが困難なのだ。特に造りつけられたカウンターが非常に邪魔だ。


 多少の被害を覚悟して、強引に突入するかを隊長と相談していると、町の奥からひとりの女が歩いてきた。


 白いゆったりとしたワンピースのような簡素な服。白い肌。短めの金髪。そしてなによりも目立つ、側頭部より生える羊のような黒い角。


「ディルルルナ……様」


 呆然とした面持ちでコンラッド殿は呟くと、その場に跪いた。他にも何人か跪き、祈りを捧げていた。


 俺はというと、あまりのことにただ馬鹿みたいに立ち尽くすだけだった。


 女神様は商店の前にまで来ると、包囲している俺たちを軽く一瞥し、道を開けた兵士たちの間を縫って商店前に立った。


 そして、いましがた歩いてきた方向を指差した。


「教会近くの建物に抵抗勢力を無力化し、まとめてあります。確保しなさい」


 女神様の命を受け、ぼぅっと女神様を見つめていた兵士たちが慌てて敬礼をし、走って行った。


 それを確認し、女神様はまるで警戒をしていないかの調子で、商店へと入って行った。


 やがてガタガタと商店内からなにかが崩れる音が聞こえて来た。ついでバチバチとした聞き慣れない音。


 戻って来た女神様は、いまだ立ち尽くしている兵士たちに命じた。


「確保を」


 女神様に命じられ、兵士たちが商店に突入した。

 籠城していた四人はすぐに捕らえられた。三人は失神。ひとりは外傷もないが、他ふたりは髪の毛が大変なことになっていた。そして四人目は錯乱し、泣きながら赦しの言葉を叫んでいた。


 女神様はそれを確認すると、町の北側へと向かって歩き始めた。


 残りの抵抗勢力。それは領主邸に残っている使用人と兵士たちだ。


 領主邸は町の北側にある。女神様はそこに向かっているのだろう。


 そして、あることに気が付いた。


 いまだ濡れ、ぬかるんだ地面を女神様は歩いていく。颯爽と。足跡ひとつ残さずに!


 俺は震えた。だが、これは恐怖の類の震えなんかじゃない!


「整列! 全隊、女神様に続け!」


 復活した隊長が慌てたように命令を飛ばす。


 女神様に続き、進軍する。


 気分が高揚する。


 だってそうだろう? 俺たちはいま、二百年前の戦士たちと同様に、まさに神兵となったのだ。昂らないわけがない!


 男爵邸の制圧はあまりにも簡単だった。


 俺たちの士気はいままでにないくらいに高い。


 女神様と共にあるのだ。負けるわけがない。それ以上に、無様をさらすなどできるはずがない。


 それに対し、抵抗していた男爵邸の使用人や兵士たちは、女神様の姿を確認し、絶望、諦観、そういった雰囲気をありありと滲ませていた。


 兵力の差に加え、士気の差がありすぎる。連中にまともに対抗できる術などありはしない。


 バッソルーナ最後の住人は、縛り上げられ、町の外の野営場所へと連行されていった。もちろん、反抗していた連中は罪人として扱われる。

 もっとも、その罪を裁くために別の街へと連れて行くという選択肢などは無いが。彼らはこのレブロン領を出ることは、もはや許されない。


 兵士たちが男爵邸の資産確保に向かう。これは金に換えて、今後のバッソルーナの復興資金となる。……んだけれど、必要なのか? 神罰はもう降ったよな?


 あの降り注ぐ雷。あれが神罰……いや、違う。地図から消えると聞いたぞ。ということは、本当の神罰はこれからということか?


 調度品やらなんやらが運び出されていく。まるで引っ越しだ。


 そんな騒ぎの中、アブランが戻って来た。肩掛け鞄はパンパンにふくらみ、丸めた羊皮紙がはみ出していた。苦虫を噛み潰したような顔でブツブツといっていることから、余程ロクでもないものが見つかったのだろう。


 ふむ。となるとだ、レブロン男爵はなんらかの罪で逮捕されるということだろうか?


 あー、そうすると、ここに派遣される代官に同情せざるを得ないな。なにせこの地は女神様に嫌われたみたいだからな。


 そんなことを考えていると、軍犬隊の連中がなにか担いできた。


 なんだあれ?


「まったくおもてーな いったい何がはいってんのかな」

「なにも入ってねーよ」

「いや、なんか湿った土がはいってたろ。変な白いのが表面に生えてたけど」

「え、泥がつまってんの?」

「いや、土っていっても、せいぜい両手で掬える程度だぞ」


 ……棺桶、だよな? ん?


 なにか変な気配がして、そっちに視線を向けた。女神様が立っている方だ。


 目を向ける。それに女神様が気が付いたらしく、俺と目が合った。


 やべ。なんて畏れおお……い……。


 女神様が微笑まれた。俺に向かってにっこりと。


 お……おぉ……。って、なんで俺はただ突っ立ってるだけなんだよ。やることはいっぱいあるだろ!


 俺は屋敷に向かって駆け出した。そうだ、確認だのなんだの、やることはあるはずだ。


 ……。

 ……。

 ……。

 やっちまったぜ。


 屋敷に入った。正面の階段を駆け上がった。そして最上段にまでいったのに、有りもしない段を登ろうとした。


 当然だが転けた。


 その上、階段を転げ落ちた。


 へへ、足が折れちまったぜ……。


 うわぁぁぁぁっ! なにをやってんだ俺はぁぁぁっ!


 頭を抱えた。


 俺の転倒で駆け寄って来た兵士は、俺が痛みに悶えていると思ったようだ。


 ちげーよ。自分の間抜けっぷりに頭を抱えてんだよ!


 情けなくも、その兵士に肩を借りて屋敷から出る。すると女神様に手招きをされた。


 恐縮しながらも女神様の前にまで行くと、女神様は俺のぶらぶらしている右足に手を翳す。


 俺の体の周囲に金色の光が舞ったかと思うと、足の痛みが消えた。


「え?」


 足を見る。ちゃんと真っすぐになっていた。地につける。痛くない。


「治った……」


 兵士の驚く声が聞こえた。


 俺はその場に跪き、祈りを捧げた。


 本当にあいつらは馬鹿だ。なんでこんなにもお優しい女神様を裏切ったんだ!


 ◆ ◇ ◆


「いろいろ不満そうだな」

「だってそうだろう」

「俺は理解できるけどな」

「どういうことだよ」


 傍らにいるアブランに訊いた。


「解毒薬は組合だけで作っているわけじゃない。手が足りないから、神子様はレシピの公開をあっさり決めたんだと俺は思っている。当然のことながら、神子様も調剤をしているはずだ」


 アブランの答えに俺の口元が引き攣れた。


 今後必要とされる解毒薬の量。それこそ千や二千じゃきかないハズだ。毒の酒がどれだけ出回っているのか知らないが、わずかでも影響のある者には飲ませなくてはならないのだ。


 だがその生産速度を考えるとなると……。


「神子様の負担を減らすためか?」

「俺はそうだと思うがな」


 女神様は町の住人たちの解毒を行っている。一定範囲内に入れるだけの人数のグループをつくり、そのひとつひとつの中央に立ち、奇跡を行使している。


 金色の光が女神様を中心に舞い踊り、それで終わり。


 俺の骨折を癒してくださった時と同じ光景が広がっている。


 住人たちは治療が済んだ側から絶望したような顔をする者と、女神様を視線で殺さんばかりに睨む者と分かれていたが、女神様はそんな些事など一切気にせず、淡々と作業をしているようにみえた。


 周囲では俺たちがずっと警戒している。さすがにそんな中で、馬鹿なことを考える輩はいない。住人は全員地べたに座っている。もし立ち上がり、女神様に襲い掛かろうものなら、周囲に展開している兵士が槍で刺し貫くだけだ。


 住人の治療が終わり、女神様が歩いてくる。先ほどの俺たちの会話が聞こえていたのだろう。俺たちの疑問に答えをくださった。


「彼らは我らの庇護下から離れることを選んだのです。ならば、なんらかの餞別くらい渡すものでしょう? 今後は、ナニモノも彼らを助けはしないのですから」


 ニコリとほほ笑まれる。


 そして女神様はある一点を指し示す。


「あそこに見える白い岩。あの岩より向こうへ移動しなさい。巻き込まれますよ」


 女神様のお言葉。


 それは、これより神罰を執行するという宣言。


 そして女神様はバッソルーナの町へと戻って行った。


 女神様直々の指示に軍犬隊が気味の悪いほどのやる気を見せ、町の住人たちの移動を急き立てはじめた。それこそまるで牧羊犬が羊を追い立てるように。


 いや、確かにあんたらは軍犬隊だけどよ。

 まぁ、俺たち騎士団も軍団も似たような感じだけどさ。


 住人の移動を横目に見ながら、俺は白い岩に登った。高さにして六、七メートルくらいはあるだろうか。

 ちょっとした岩山といえなくもない。


「ハイメ、落っこちるなよ」


 隊長の声が聞こえた。


 さっき骨折したことを、しっかり誰からか聞き及んだらしい。


 大丈夫だと答え、俺は岩の天辺に腰を据えた。落ちないように、しっかりと足場を確かめる。


 よし。


 ウェストバッグから遠眼鏡を取り出す。そして確認するのは女神様の動向。


 遠眼鏡でバッソルーナの町を見る。この高さからなら、大体の場所は見えるはずだ。建物の影にでも入っていなければ。


 倍率は上げず、大雑把に女神様の姿を探す。


 ややあって、女神様を見つけた。破壊された教会の瓦礫の上。


 考えてみれば当然だ。教会は神々の座す場所。例え破壊され尽くしたとしても、そこに女神様がいるのは当然のことだ。


 遠眼鏡の倍率を変え、そのご尊顔を拝謁し、そして――


 遠眼鏡の角度を下へ落とし、慌てて目を遠眼鏡から離して首を振った。


 いかん。


 いかんいかんいかん。


 不敬どころではないぞ。なにをやっているんだ俺は。


 俺は額を、右拳でやや強めに叩いた。


 下では住人たちがノロノロと移動をしている。いまだに女神様に対し、ガタガタと文句を云っている不敬者もいる。


 あんな奴等、首を刎ねてしまえばよいのだ。


 我々が豊かに暮らせるのは、女神様の祝福による恩恵があったればこそだ。

 まぁ、もうこの地の祝福は失われたらしいが。


 よくコンラッド殿は堪えていられるものだ。背信者の首など、刎ねて回りたいだろうに。


 改めて女神様に目を向ける。


 それからどれほど眺めていただろうか。


 動きがあった。


 それは住人たち全員がこの岩よりも西側に移動したと同時のことだ。


 女神様が空を見上げる。拾い上げた神枝を天に突き上げ、なにかを叫んだようだ。


 そして、異変がはじまる。


 空が赤く染まった。


 バッソルーナの上空だけ、赤く染まった。雲が湧きたち、妖しく揺らめいている。


 あまりのことに呆然としていると、空からなにかが降って来た。巨大な……そう、それは巨大な岩。真っ赤に燃える岩が降って来たのだ。


 いくつも。いくつもいくつも。


 直径にして、小さくとも二メートルほどはあるだろうか。


 降り注ぐ燃える岩が町を破壊していく。そこかしこから火の手が上がり、町はたちまち炎に包まれた。


 降り注ぐ岩は容赦なく町を叩き潰し、焼き尽くしていく。


 神罰。


 神の怒りが、町を破壊していく。


 町の住人たちはこの光景に恐れ慄き、胸元で手を握り締め、祈り、赦しを請うていた。


 なにをいまさら。貴様らが神を見限り、裏切り、侮辱し、教会を破壊し、立像を破壊し、アレカンドラ様の象徴を踏みにじった結果がこれだろうが。


 なにをいまさら赦しを請うのか。恥知らずが。


 お前たちが自分の子供、或いは親、妻、夫が殺されたとして、その犯人が赦しを請うたとして、そう簡単に赦すのか? それもだ、罰を与えられることが分ってから、慌てふためいて赦しを請うような輩を。


 俺はその醜くも浅ましい、身勝手な連中から視線を移した。


 遠眼鏡を覗き、女神様の姿を見る。


 女神様は両の腕を大きく広げ、天を仰いでいた。まるで、空から降り注ぐ燃える岩を歓迎するように。


 やがて女神様は両腕を降ろし、こちらに視線を向けた。


 ……え?


 目が合った?


 思考が停止し、その美しい女神の尊顔に見惚れる。


 微かにディルルルナ様は笑むと、光に包まれ、消えた。


 崩れ果てたバッソルーナの町は、炎に包まれていた。


 ◆ ◇ ◆


 すすり泣く声がそこかしこから聞こえていた。


 だがコンラッド殿は容赦なく、今後のことを町の住人たちに云って聞かせていた。


 もはや教会は支援しないと。国も、最低限の援助はするが、他の町への移住を許可しないと。

 それは、彼らにとって厳しい処置だ。だが自業自得だ。


 くすぶり、煙をあげる廃墟を眺める。


 隊長は俺の隣で、さっきからずっと地べたに座りこんだままだ。


「隊長」

「どうした?」

「俺は、今日の栄誉を、将来、子供たちに自慢したいとおもいます」


 疲れ果てたような顔をしていた隊長に、わずかに活力が戻ったように感じた。


 ゆっくりと立ち上がると、俺を見て笑う。


「はは、それはいいな。だけどな――」

「なんですか、隊長」


 途中で言葉を切った隊長に問う。すると隊長は言葉を続けた。


「孫子供の前に、嫁を見つけろ」


 くそ、ほっといてくれ。




 こうして俺たちの任務は終わった。

 もっとも、いましばらくはここに留まらなくてはならないが。



 ふふ、帰ったら留守番連中に自慢してやろう。

 きっと、悔しがるに違いない。



誤字報告ありがとうございます。


※ “あったればこそ”の部分に誤字のご指摘をいただきました。ありがとうございます。特に用法なども間違いはないようなので、古めかしい言い回しではありますが、修正をしないことにします。

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