表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/363

146 天の怒りをとくと知るがよい!


 まるで夕立みたいな大雨の中、私はぱしゃぱしゃと泥水を跳ねながら歩いていく。足元は土を踏み固めただけの道。あっというまにそこかしこに水溜まりができた。一応、草履みたいな履物を履いているとはいえ、そんなところは歩きたくはない。歩きたくはないんだけれど――


 歩かないと進めないんだよねぇ。いやぁ、こいつは誤算だったわ。


 思わず苦笑する。


 【天の目】に映っていた周囲の赤い点は、軒並み灰色に変わった。それどころか、西門で抵抗していた連中の半数くらいも灰色になっている。


 雷は今も、容赦なくそこらに降り注いでいる。

 明らかに自然に落ちる頻度の落ち方ではない。

 もっとも、その雷の威力は本物の雷に比べると弱いものだ。とはいえ、ゲームで見た威力よりは遥かに強いみたいだけれど。


 なにしろ一撃で戦闘不能に陥っているみたいだもの。


 ゲームだと衛兵なんかは、何発喰らってもものともせずに殺しに来たし。

 ん? わざわざ攻撃したのかって? 違うよ。セットしてある魔法を勘違いしていて、誤爆したんだよ。


 私が移動すると効果範囲も移動するから、ちょっと気を付けないとね。軍の人たちを範囲にいれると大変なことになるから。


 窓から身を乗り出していたり、手を出していた連中は雷に打たれて昏倒。室内に倒れているようだ。問題なのは、室外、外で私を攻撃していた連中。

 同様に雷に打たれて倒れているわけだけれども、この言音魔法、生きている限り雷が狙って落ちる。……訂正。確か、死体になっても雷は狙って落ちたはず。


 さすがに死なれると、ルナ姉様の悪評というか、悪名があがってしまうからね。さすがにそれは頂けない。


 途中でみつけた倒れている連中は、近くの民家の屋内に放り込んできた。


 そういや私、結構出血したよね。血は雨で洗い流されたと思うけれど、服についていないかな?


 今更ながらに確認してみる。


 ……。

 ……。

 ……。


 Oh......。


 あはははは。雨でずぶ濡れになったせいで、キトンが肌にぴったり張り付いた上に、透けていろいろ丸見えですよ。


 肌色はもとより、ピンク色の先っちょとか。下は……うん、下は下着をつけているから大丈夫だ。……大丈夫だと思う。


 って、これどうしよう。さすがに――って、なんか急に透けなくなった!?


“キッカちゃん。そういう不具合は早くいってねー。私は露出狂じゃないのよー”


 ……女神様監視中。


 いや、私もいま気が付いたんですって。いくらいまの姿が変化した姿だからって、他人に体を見せつけて歩きたいとは思いませんよ。


 私にも露出癖はありません。


 とりあえず問題は解決した。


 そうそう、この姿を変える術は、幻術とは違うみたいだ。どんなものなのかは大雑把にだけれど説明して貰えたよ。まぁ、詳しい説明になると、私の頭じゃわからないからね。


 要はこういう事らしい。私の体が粘土でできているとしよう。この粘土をこねて違う姿に形を変える。と、こんなことらしい。

 当たり前だけれど、実際に粘土になるわけじゃないよ。


 なので、背丈は高くなったけれど、体重は変わらず。そして怪我も普通にする。


 目、治ってよかった。失明とか嫌だからね。


 そんなこんなで、私を襲撃した連中を屋内に放り込んだ。これで、雷に打たれまくって死ぬ輩はでないだろう。

 移動して、西門にいた連中は範囲外にしたからね。……大丈夫だよね? 死んで無いよね?


 心配だから確認しよう。死体表示を追加、色は黒で。


 ……うん。表示されない。大丈夫だ。




 雨が止んで、大体十分くらい経過したかな? 言音魔法のクールタイムも終わり、いつでも使える状態だ。【雷嵐招来】の効果時間は三分。クールタイムは五分。クールタイム短縮のペンダントを着けているから、現状は四分だ。

 おぉ、やっぱりクールタイムの長い言音魔法だと、効果が顕著にでるね。でも普段つかっているのは、長くても一分だから、あんまり効果を感じないんだよね。言音魔法は乱発するようなものじゃないし。


 でもって、ずぶ濡れなのは戴けない。水も滴るいい女神、なんてわけにはいかないからね。え? 女神様なのに雨に濡れるの? なんて思われそうだし。とりあえず【清浄】で余分な水気を飛ばす。乾きはしないけれど、ずぶ濡れ状態からは脱した。【炎の霊気】でも纏ったら乾くかな? いや、なんだか余計な問題まで引き起こしそうだからやめておこう。ここまで水気がなくなっていれば、自然乾燥でもすぐに乾くだろう。


 さて、目の前には私を射殺そうしていた連中が全員転がっていますよ。雷に打たれて気絶中。雨がやんでから、一ヵ所に運んだよ。まったく、手間のかかる。念のために縛り上げてはある。縄はその辺の民家から無断で拝借した。あとで軍の人たちに回収してもらうとして、なんの罰も与えずに私から解放するなんてことは、あり得ないよね。


 とりあえず回復魔法を掛けましょうかね。やっておかないと死んじゃう可能性があるから。


 ということで、自身を含めて周囲の者もまとめて回復する【大回復】を発動。ポイントにして二五〇も回復する回復魔法だ。たぶんこれで、こいつらは全快するだろう。


 さて、ちょっと離れてと。


 このくらいで、全員範囲にはいるかな?


 それじゃあ――


『死ぬがよい』


 私を襲撃した連中、恐らくは領兵であろう彼らに【死の宣告】を掛けた。

 これ、一定時間じりじりと命も削るから、回復しておかないと死んじゃうからね。だから先に回復魔法をかけたのさ。


 残りの人生、きっと短いだろうけど、それまでずっと自分のやらかしたことを後悔するといいさ。


 あ、そうだ。ついでだから毒を消しておいてやろう。ゾンビ化とか吸血鬼化みたいに最終段階に入ったら効かないような状態変化だったら、意味がないだろうけど。


 鑑定なんて便利な技能はないからね。鑑定盤もないし、生きてる人間はインベントリに入れられないしね。


 ということで、魔法合成で作った【治療】と【解毒】の合成魔法【キュアポイズン】をひとりひとりに掛けていく。【解毒】は基本自分にしか掛けられない魔法だから、他者に掛けるためには、他人に掛けられる魔法と合成する必要があるんだよ。で、合成するなら同じ回復魔法同士のほうが、消費魔力軽減のことを考えると利便性が良いので、このふたつの組み合わせだ。


 ……それでも消費魔力が単体でつかうよりも三倍くらいになっちゃうんだけどね。

 ん? なんで魔法の名前が英語なのかって? 日本語で解毒の他の云い回しで、しっくりするのが無かったからだよ。


 さて、これでよし。効いたのか効いていないのかはさっぱりだけど。


 それじゃ、つぎは軍の人たちと接触しないと。いや、軍犬隊の人たちのほうがいいかな。

 戦闘は……まだ続いているね。まだ抵抗しているのが三……いや、四人か。うん、四人いる。籠城されて手古摺っているみたいだ。


 ほかの抵抗勢力は捕縛されたのかな?


 元気な赤点はその四人と、北に十人くらいいるか。北の十人はあれだ、男爵邸のお留守番連中だろう。


 大貴族ならともかく、木っ端貴族の男爵程度だから、使用人とかもそのくらいの規模だろうし。イリアルテ家のあのサイズでも、三十人いないからね。




 西門前の直線通り沿い家の前に、大勢の兵士たちが集結していた。逃げられたりしないように、裏手にも兵士が回っているようだ。


 うん。見たところ、軍団+赤羊騎士団と軍犬隊は問題なく協力しているようだ。軍犬隊と仲が悪いのは、王都治安維持隊だけみたいだ。

 ちょっと心配していたんだよ。杞憂でよかった。


 それじゃ、ちょっと中に入って片付けましょうか。


 あ、私が歩いて行っただけで、みんな道を開けてくれた。声を掛ける必要もなかった。よかった。女神様らしく喋るのって、どうしたらいいんだろ? とかちょっぴり思っていたからね。


 まさか、いつものルナ姉様の喋り口調で行くわけにもいかないしね。やっぱり、物語に登場する堅物な女性軍人みたいな喋り方がいいのかな。


 一応そんな感じで、さっきふんじばって来た連中の確保を兵士たちに命じてみる。すると軍犬隊ひとりが敬礼し、兵士たちを連れて走って行った。


 指揮系統はどうなっているのかな? まぁ、うまくやっているならいいか。


 とりあえず喋り方は大丈夫そうだね。地味に偉そうにも見えるし。なんだか命令された人たち、すっごいいい笑顔だったし。


 うん。ここを片付け終わったら領主邸の制圧もしないと。がんばろう。あ、【天の目】に物品の表示ってできるのかな?

 吸血鬼の血の混じった毒の酒ってやって表示――できたね。


 ……あ、あの、ナナウナルル様? いまさらなんですけど、この【天の目】って、チート過ぎやしませんか?

 俯瞰で周囲を確認できるってだけでも、かなりのチートだと思うのだけれど。いや、私は滅多に使わないけれどさ。迷子になった時くらいに使うくらいで。


 ま、まぁ、いいや。


 それじゃ突入しましょ。使う魔法は雷撃系一択。屋内の狭さなら【連鎖雷撃】の一発で全員制圧できそうだけれど……殺しちゃうんじゃね? うん。【雷撃】にしておこう。前者の基本威力は四十五。後者は二十五だ。


 雷撃系の魔法は、下から【電撃】【雷撃】【連鎖雷撃】【雷撃衝】【雷嵐】という感じ。あ、射撃系のやつね。他に【雷の罠】と【雷の霊気】がある。

 範囲攻撃魔法は【連鎖雷撃】のみだ。ちょっと特殊だけれど、ひとりに当てると、周囲の者に電撃が伝播していく魔法。達人級の【雷嵐】も範囲魔法ともいえなくもないんだけれど、これ、いわゆる“手からビーム”みたいな魔法だから、薙ぎ払う感じになるんだよね。あ、それを云ったら【電撃】もそうか。


 ちなみに。【電撃】と【雷嵐】は魔力垂れ流しで使う魔法だ。いわゆる継続型。【電撃】は消費魔力はたかがしれているから、魔力消費軽減装備がなくともそれなりに使えるけれど、【雷嵐】はあっという間に魔力を喰いつくす。正直、装備の補助がないとまるっきり使えない魔法だ。威力はあるんだけれどね。


 それと指輪をふたつ追加。【技量上昇】と【敏捷上昇】。攻撃を躱せるようにしておかないとね。


 扉が壊れて、口を開けっ放しの入り口から屋内に侵入。【霊気視】……だと、兵士さんたちも見えるから、訳が分からなくなりそうだな。【生命探知】にしよう。敵と味方の判別ができるからね。


 ここは商店だったみたいだ。雑貨店のようで、商品が棚に並べてある。敵の四人は奥の部屋だね。この建物の中央部に陣取っているようだ。


 入り口の影にひとり潜んでる。うん、不意打ちする気満々だね。


 ……入り口側にまで行き、ちょっと思案。扉はなし。


 私はおもむろに【竜巻の罠】を入り口の所に仕掛けた。


 仕掛けた途端に発動。入り口の影に居たやつが範囲内にいたからだ。竜巻に弾き飛ばされたのだろう。いろんなものが崩れ落ちるような音が聞こえて来た。


 部屋に踏み込む。


 ひとりは崩れた棚の下敷きになっていた。あ、奥でもひとり崩れた棚に下敷きになってもがいてる。


 そして無事であったふたりがナイフと剣を手に突撃してきた。


 ……いや、振り回さずに突きを選んだのは評価できるけどさ、いくらなんでも雑過ぎるでしょう。


 というかね、どっからどうみても丸腰の女にそれって、どれだけクズなのさ。ディルルルナ様と認識できているのかどうかわからないけど。


 私はふたりの攻撃をひょいと避けた。


 【技巧上昇】と【敏捷上昇】万歳!


 そして左右の手で、ふたりの顔を掴む。そんなに手は大きいわけじゃないけれど、顔を掴むくらいはなんとかなった。


 そして【電撃】発動。


 顔面に直接二秒くらいバチバチとやって手を離す。


 ふたりはすっかりと気を失って、その場に崩れ落ちた。


 なんだか、ぷすぷすと音を立てながらピクピクしてる。髪の毛が爆発したみたいになってるけど、笑うところなのかな?


 さて、起きているのは、崩れた棚に埋まってる奥のひとりなんだけれど。


「た、助けて、助けて、ごめんなさい、ごめ……あ、あぁ、ああああああああ」


 ……ダメかな? これ。


 私は棚と崩れた商品に埋もれている男に背を向けないように部屋をでると、取り囲んでいる兵士たちに捕らえるように指示した。


 どやどやと兵士たちが入っていく。さっきの男の泣き言がよけい酷くなってるな。これはお前らが望んだ結果なんだから、嘆くことはなかろうに。本望だろう? まったく。


 そんなことを思っていたら、軍犬隊を指揮をしていると思しき騎士さんが、私の前に跪いた。


 う、うん。いまの私はディルルルナ様だからね。妙な罪悪感染みた気持ちが胸にあふれてるけど、我慢せねば。あ、でも、泥で汚れるよ?


 ……騎士さんが立ち上がったら、さりげなく【清浄】を掛けておこう。うん。


 私は騎士さんを始め、兵士さんたちに労う言葉を掛け、領主邸の制圧に向かうと宣言。


 反抗していた連中を連行する兵士たちを除き、この場にいる全騎士、兵士たちで領主邸へと進撃。


 途中で私が回収を頼んだ、反抗者を担いだ兵士さんたちとすれ違う。

 兵士さんたち、凄く残念そうな顔をしてた。その際に、担いでいるその連中には特別に呪いを掛けたから、手荒に扱わないようにと命じておいた。とにかく死にやすくなってるからね。簡単に死んでもらっては面白くありませんよ。


 そして領主邸へと到着。


 名目上、まさに神兵となったこともあるのか、テンションが異常に上がったみんなのおかげで、あっというまに領主邸を制圧。


 ……さっきまで四人に手古摺っていたのはなんだったんだろう?

 あぁ、領主邸とくらべたら、狭いからね。戦いにくいというのもあったのか。こっちは四方から強襲できるくらいに広いし。


 捕縛した護衛や執事にメイドは、町の外へと連行された。そして残った兵士には、価値あるものを運び出させる。


 町の破壊後、ここを復興させる資金は必要だからね。そして赤羊騎士さんたちには、毒ワインとかの証拠品の回収。軍犬隊のみなさんには不死の怪物の存在の痕跡の確認を命じた。


 クラリスの寝床が棺桶だったりしたら楽なんだけれどね。さすがにそこまでテンプレな吸血鬼じゃないと思うけれど。


 領主邸といっても、そこまで広い建物ではない。


 日本で云うところの、大邸宅くらい。


 え、十分大きいだろうって? いや、侯爵邸とか、ふつうに公共の、いわゆる箱物っていわれる施設くらいあるからね。


 家宅捜索は一時間くらいで終わった。人数は多いから、隅々まで調べるのも早かった。調度品とか美術品が馬車に載せられ運び出される。書類関連は鞄に詰め込まれて、赤羊騎士の隊長さんが所持。そして地下室から運び出された酒樽も騎士さんたちが運んでいった。それ、毒入りだから飲んじゃダメよ。


 で、軍犬隊の皆さんが運び出したのは豪奢な棺桶。


 ……えぇ。マジ? クラリス、テンプレ吸血鬼だったのか。


 びっくりして、危うく変な声を上げそうになったよ。ルナ姉様の名誉のためにも、頑張って声を呑み込んだよ。


 近くに控えていた騎士さんが気配を感じたのか、私の方に視線を向けて来たから、ニコッと微笑んでおいた。


 やる気があがりすぎて大変なことになった。領主邸に走って最後の確認に行ったと思ったら、なんだか階段で転んだっぽい。大丈夫かな? 


 は? 足を折った? なにをやってるのよ。


 肩を貸している兵士に、騎士を連れてこっちに来るように手招きした。


 はい、【キュアディージーズ】。これは【治療】と【疾病退散】の魔法を合成して作った、他者の病気を治せる魔法。

 骨折治療にはもってこいかな。骨を接いで、ダメージも回復できるからね。


 治してあげたら驚いた顔で私を見つめたかと思ったら、跪かれて祈られた。


 うぅ、「そういうのいらないから!」とか云えないし。なんとも居たたまれない気分。


 そんな出来事もあったけれど、領主邸の家宅捜索兼差し押さえ? は終了。


 西門まで移動し、私は周囲を見渡して、丁度いい位置にある岩を発見。妙に色の白い尖った大きな岩が地面から突き出していた。門から右斜め百……二十メートルくらいのところかな。


 その岩の西側へ全員避難するように指示。


 これからこの町を粉砕しますからね。あ、そうだ、町の住人の解毒をしておこう。ここで魔法で解毒しておけば、必要になる解毒薬の数が激減するはずだ。

 一昨日、ラモナさんが調剤していたのも解毒薬だったらしいし。というか、組合にいる間は、ほぼずっと調剤してるって云ってたからね。


 ……悪いことしちゃったかな。解毒薬に関しては丸投げしちゃったからなぁ。


 それはさておいて、魔法を掛けるよ。ひとりひとり魔法を掛けるのは面倒だから、範囲版の解毒魔法だ。【大回復】と【解毒】を合成した魔法。一応、作っておいたんだよ。あ、もちろん広範囲の【疾病退散】も同様に作ってある。

 実用性はまるでないけれど。


 うん、消費魔力が達人級をかるく越えちゃってね。普通に千四百の魔力が飛ぶ。私は消費魔力五割軽減の技能があるから、七百で済むけれど、それでも一般の人が使うのは不可能だろうね。


 もともとは私も魔力量は百だったのに、今はもう三千ですよ。育ったものです。


 ということで、一ヵ所に町の住人を集めて、解毒。親の仇を見るみたいな目をしてるけど、知ったこっちゃない。解毒してすっきりした頭で、これから起こることを見て、絶望するといいよ。お前らはもう神に見放されてるから。そもそもお前らが神を見限ったんだし、問題ないよね。


 さすがに一回だと全員を範囲に入れられなかったから、複数に分けたよ。魔力消費は技能の半減だけじゃ足りなかったね。指輪が更に二十五パーセント軽減していたからなんとかなったようなものだ。指輪を入れ替えて、魔力回復速度を上昇させたのも大きかった。


 これで、この町の住人は手遅れになった者以外は問題ないでしょう。


 毒が抜けてある程度理性的になったのか、なんか、いまさらながらに青くなって震えてる住人もいるけれど、知らないよ。教会の破壊云々は、毒の影響は関係ないって分かっているからね。それはあんたたちが自分で選んだことだ。


 悪いことをしたら罰せられるのは当然でしょう? 人の家を壊しておいて、俺は悪くない! っていうのは通用しませんよ。


 私は軍犬隊の隊長さんに指示をすると、西門にまで戻った。そこで立ち止まり、振り返って確認する。


 退去させられ、野営をしていた住人たちは荷物をまとめて岩より向こうへと移動を始めた。


 二時間くらいあれば移動は終わるかな? 


 それじゃ私は教会跡地へと戻ろう。丁度あそこが、町のほぼ中央だからね。


 私は教会にまで戻ると瓦礫の上に登った。


 あれ? もしかしてこれ、罰当たりなことになるのかな? 多分、この瓦礫の下に立像とかレリーフの残骸があるだろうし。


“気にしなくていいわよー”


 あぁ、うん。女神様監視中だったんだっけ。


 みんなの移動終了まで暇だな。そうだ、ルナ姉様に農研にもちこんだ作物に関して聞いておこう。把握しておいたほうが良さそうだ。

 そして世間話的なことをし始めたのだけれど。


 あの、ルナ姉様? さすがにゲーム由来の作物は、どんな影響を及ぼすかわからないのですが? え、ちゃんと管理するから大丈夫って……。は? 神の作物とする!? いやいやいやいや……。




 そしてほぼ二時間後、全員の移動を確認。改めて【天の目】で【流星雨】の範囲を表示する。


 うん。問題ない。範囲は、住人たちの位置から五〇メートルくらい離れている。これだけ離れていれば、余波の影響も受けないだろう。


 私は足元に転がっていた、七支刀みたいな教会のシンボルを手に取った。


 そして、それを剣の如く天に向け掲げる。


 さぁ、最強の言音魔法の発動だ!



『天の怒りをとくと知れ! 【流星雨】!』




 そしてその日、バッソルーナの町は廃墟となったのです。



誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ