13 価値が分からない
王城から城下町へとはいり、とにかくまっすぐ進む。
いかにも西洋風の建物がならぶ街並み。『古いヨーロッパの街』と聞いて大抵の人が思い浮かべる街。まさにそんな感じだ。
ただ、糞尿の匂いが微かに鼻につく。
まぁ、馬が主な交通手段だろうからね。日本も昔はそこらに馬糞とか落ちてたらしいし。
まだほの暗いのに、ちらほらと街中を歩いている人がいるけど、気にしてる様子はない。当たり前だけど、これが日常なんだよね。
……あれ?
でも見当たらないね? 臭いの元が。
この辺りは整備されてて、石畳が敷設されてるから、あれば目立つと思うんだけど。
ん? なんだあれ?
なんか、オレンジ色っぽい塊が蠢いてる。
おぉ? あれが魔物? スライム? でも誰も気にしてないね。
なんだろ、益虫みたいな扱いなのかな? あ、あそこのは何かにとりついてる。なんだあれ? ん? 馬糞?
あー、あのスライムっぽいの、多分、掃除屋だ。
見た感じだと、いわゆるアメーバ的な物じゃなく、あれだ。なんだっけ? えーと、そう! 粘菌みたいな感じだ。
……いや、粘菌って、菌っていうくらいだから菌だよね? いや、なに云ってんだ私。というか、糞を分解するの? あ、そういや森とかでその手のものを分解するのって菌類だっけ?
つたない知識をこねくり回してみる。
とはいえ馬鹿みたいに眺めてても仕方ない。というか、お上りさん過ぎて目立ってしまう。いまが早朝でよかったよ。
でも、なにをするにしても、先立つモノがないんだよね。まずは宝石を換金しないと。宝飾品店とかで換金できるのかな? その前にそのお店を探さないとダメなんだけど。
……【道標】使えたりするかな? 宝飾品店ってだけでラインがでるのかな?
やってみよう。……うん、問題なくラインが足元から出たよ。
ほんとなんなの? この魔法。謎なんだけど。
眩惑魔法修行装備にしてあるから、持続型の魔法である【道標】を使いっぱなしでも、魔力が減ることはない。
ラインをなぞるようにテクテクと歩いていく。
やがて道は広場へとつながり、ラインは右手の立派な構えの店に向かっていた。
えーと、あれが宝飾品店っぽいね。店先に取り付けられてる金属製の看板が、指輪を模してるし。
問題は、私、入って大丈夫なのかな? 平民お断りみたいな。
まぁ、それ以前に、まだ早すぎてお店開いてないけどね。
広場の中央には大きな樹。TVCMでみた『このー樹、なんの樹――』みたいな樹が広場全体の半分くらいを枝で覆っている。
樹の周囲を私の腰くらいの高さの石垣で覆ってあり、周りにはベンチが置いてある。
丁度いいから、このベンチに座ってお店が開くまで待とう。折角だし、奥義書でも読んでいようか。まだちょっと暗いけど、なんとか読めそうだし。
変更された魔法関連を確認しつつ、時折チラチラを店の方を窺う。
一時間くらい経ったかな? 感覚的には五時くらい? 人通りが出始めたね。籠一杯の野菜をもった人とかいるな。どこかで朝市でもやってるのかな?
お、店先にガタイのいいおじさんが出てきた。まさに屈強という言葉が似合いそう。バウンサーかな? 身なりは執事っぽいけど。
あ、あれ? こっち見てる? あ、こっち来た。
「失礼、お嬢さん。当店に御用かな?」
「お店が開くのを待っているんですよ。あそこの宝飾品店の方ですか?」
「その通り。失礼な物言いで申し訳ないが、お嬢さんには少々手が届かないと思うが?」
「いえ、買うのではなく、宝石の買取りをお願いしたいのですよ。ちょっとトラブルがあって、お金を含めていろいろ失くしてしまったので」
とりあえず、嘘はついてないぞ。命まで失くしてこの世界に来たからな!
「ふむ……少し待っていろ」
そう言い残しておじさんが戻っていく。
執事みたいな服装だったけど、明らかに執事らしくない。というか、王城の騎士たちより強いんじゃないかな? 雰囲気が明らかに違うんだけど。
うーん、泥棒の下見とでも思われたかな? ちらちら見てるのを店舗から見てたんだろうなぁ。まぁ、フードを目深に被ってるから、あからさまに怪しいし。
かといって顔さらすのはマズそうなんだよね。正確には髪なんだけど。いや、神様方が揃ってアンララー様に似てるとかいうからさ。騒ぎになりやしないかと。
髪は染めたくないし、切るのは論外、かといってこの長さでウィッグっていうのもねぇ……。髪の色をごまかす魔法とか作れないかな。
それにしても黒髪の人がいないな。本当に。お城でもひとりもいなかったし。その代わり青系の髪色の人がそれなりにいて驚いたけど。
鳥や魚じゃあるまいし、青色なんて哺乳類で出るのか? なんて思ったけど、確か青色の毛皮の動物がいたよね。ブルーバック、だっけ? 乱獲で絶滅しちゃった鹿みたいなの。それを考えたら、まぁ、おかしくないか。
おかしいと云えばお兄ちゃんの髪色だったけど。ドライヤーを当てると、湿気った焼きのりを炙ったみたいな色になるんだよ。黒に近い赤紫っぽい色に。
それが分かってから、二度とドライヤーを使わなかったっけ。中学の時は坊主頭だったから、気が付かなかったんだろうなぁ。
さて、私は今はフード付きの外套着てるから、髪は露出していない。気温的には春先か秋口くらいの感じだから、この格好でも問題はない。これが夏場だったら暑くてどうしようもなかっただろうけど。
……うん、なるべく早めに髪をどうにかしよう。最悪、アレカンドラ様に泣きつくしかないよ。
あ、おじさんが戻ってきた。
「主人が会うそうだ。ついて来い」
「あ、はい」
さすがにここで本を戻すのは不味いな。入れるモノがないもの。ナップザックみたいなものも買わないとなぁ。それ以前に物価が分からないのが不安だけど。
立派なレリーフの施された扉をぬけ、いざ店内へ。
店内はなんというか、商談を行う部屋のような作りだった。立派なソファーと机。壁には女性の肖像画が飾ってある。
そして商品の類は一切見あたらない。
まぁ、現代とは違うから、防犯を考えるとショーウィンドウに高級品を陳列なんてありえないか。だからあれだ、えーと外商っていうの? 顧客の元へ商品を直接もっていく形式の売買。そんなふうに感じるよ。いや、ここは店舗なんだけどさ。
店内では口髭の似合うダンディなおじさまが迎えてくれた。おぉ、これがロマンスグレーという髪色か。服装は、これもローブっていうのかな? ゆったりとしたアラビアの民族衣装のような恰好。白いシンプルなデザインのやつじゃなくて、偉い人が着ているような感じのやつ。色は灰色がかった深い緑色で、縁に施された金糸(?)の、シンプルながらも細々とした意匠が凄く綺麗だ。
「はじめまして、お嬢さん。ベシエール商会のアントナンと申します。なんでも宝石を買い取ってほしいとか」
勧められるままにソファーに座り、挨拶もそこそこに商談へと入る。
商談といっても、私が宝石売るだけなんだけど。
あ、女の人がお茶を持ってきてくれた。ありがとうございます。
「えぇ。物取りに遭いまして。手持ちがこのポシェットだけになってしまったんですよ。こんな時の為にと宝石をいくつか持っておいたので、それを買い取って欲しいのです」
そういってポシェットを外し、膝に抱える。
下手に嘘をついたりしないようにしないと。プロの商売人に嘘なんか一発でバレるだろうしね。とりあえずここまでは嘘はないぞ。
「あ、そうだ。いま必要な宝石とかあります? 品薄になってるものとか? ダブついているものを売るのもなんですし」
「そうですな。ルビーがあれば高く買い取りましょう。テスカカカ様のシンボルでもある石ですからな、人気なのですよ」
ルビーか。それじゃルビーを三つくらいだそうか。優良品をひとつと、普通のをふたつ。
ポシェットを開け、手を入れる。いまポシェットに入っているのは、一番下級の回復薬二本と万病薬。それと自作したハンカチ(資材倉庫からくすねた布で作った)だけだ。そのハンカチの上にポトリとルビーを落とし、ひとつひとつ別個に包んだ状態でポシェットから出す。
「これが手持ちのルビーです。これの買い取りをお願いします」
テーブルに置き、それぞれのハンカチを開く。
するとルビーを見た店主の顔色が変わった。
おや?
ルーペを取り出し、宝石の鑑定を始める。
おぉ、ルーペあるんだ。レンズが作れるなら、それなりにガラス加工技術はあるみたいだね。硝子工房があるってことだよね? ポーション用の瓶とか量産してもらえるかな?
それにしても、ああいう鑑定用のちっさいルーペの実物は初めて見たよ。あ、片目で見るイメージがあったけど、ちゃんと両目を開けて鑑定するんだね。
丁度いいや、お茶を頂こう。いただきます。
ハーブティーだ。酸味が凄い強いな。色も赤っぽいし、ローズヒップかな?
「お嬢さん、このルビーはどこで?」
手にした宝石から目を離し、アントナンさん訊ねてくる。
「知り合いから餞別に貰ったものなのですよ。こんな非常時の時に、換金するように渡されたものです。確か、その内のひとつは高品質だとか」
そういうと店主さんは残りのルビーを鑑定し始めた。そしてみっつ目を見たときに、顔を引き攣らせた。
あぁ、優良品……。いま思ったけど、このルビーって天然モノってわけじゃないよね。ってことは人工物? 常盤お兄さんがどういう基準で創ったのかはわからないけど、多分、優良品は傷や不純物無し。ほかが微妙に不純物有りかな。
現代だと、不純物なしの人造品は安値になるけど、創れない文明レベルだととんでもない値になるんじゃ……。
ひとつでよかったかな? きっとふたつが優良品。残りひとつが『あり得ない品』になってる可能性が。もしかしてこれ、やっちゃったか?
しかし、我ながら変な知識持ってるよね。サファイヤは青って思ってたから、ピンクサファイヤの話を聞いていろいろ調べたんだ。その途中で製造できるって知って驚いたんだっけ。ルビーとサファイヤが同じってことも驚いたけど。
「お嬢さん。すべて買い取りましょう」
「ありがとうございます。いかほどになりますか?」
「こちらの優良品ふたつを、ひとつ金貨百枚。こちらのひとつを金貨千枚でどうでしょう?」
……は、はい? え、ちょっと多すぎやしませんか? いや、それ以前に千枚って、えぇ!? 全部で千二百枚!?
さすがに私が物価とか相場を知らなくても、これは明らかにとんでもない額だとわかりますよ。バウンサーっぽい執事風のおじさんも目を剥いてますし。
なにより【看破】が反応してないもの! これ最低でも適正価格、でも見た感じかなりの高値だ。
「あ、あの、私がいうのもなんですが、高すぎやしませんか?」
「なにをおっしゃいます。ルビーが品薄であることもありますが、このサイズでこれほどの良品。さらにこのひとつは、恐らく今後目にすることもないだろう奇跡の石。これでも安いくらいです」
お、おぉう、鼻息が荒い。希少価値過ぎたか。
それと、ごめんなさい。その石。インベントリに一杯に入ってます。
「そ、そうですか。それでは、その額でお願いします」
「ありがとうございます。用意を」
店主さんが後ろを向き指を鳴らす。すると奥で控えていた、先ほどお茶を持ってきてくれた女性が会釈し、扉を開け消えた。お金を用意するのだろう。
「しかし残念ですな。先ほどのお嬢さんの口ぶりからすると、他にも同様の宝石があるのでしょう? できればそちらも是非買い取りたいですが、さすがにこれ以上は資金が足りませんな」
まぁ、現金でこれだけ用意してあったのも驚きだしね。いや、銀行的なものはあるのかな?
あ、そうだ。
「それなら、宝石を交換しますか? 私としては、非常時の換金用として持っているだけなので、普通に流通している宝石のほうがありがたいですから」
「よろしいのですかっ!」
お、おぉう、そんなに身を乗り出さなくても。
「え、えぇ。そんな希少価値のものとは思っていませんでしたからね。それなら価値を分かっている方が持っている方がいいでしょうし、なにより、そんなものを持っていると、却って身の危険を感じますし……」
「なるほど、確かにそうですな。むしろ、交換して頂けるのなら、こちらとしては願ったりです」
ということで宝石を交換。こんなことを提案したのには理由がある。
……いや、他にも持ってるって云っちゃったからね。後付けられて闇討ち、というか強盗されたりするの嫌だしね。
それならここで放出しちゃおうと。これで手持ち全部ですと。
まぁ、この店主さんがそういうことをするかはわからないけど、手が後ろに回る危険を冒すくらいなら、合法で手に入る方を選ぶだろう。この感じだと、普通の宝石と交換したところで、それ以上の価値を得られるんだから、出した宝石を惜しんで取り返そうなんてこともなさそうだしね。
そんなわけで宝石を出しますよ。サファイヤとエメラルドをふたつずつ。そしてアメジストをみっつにダイヤモンドをひとつ、くらいでいいかな?
……いや、ルビーを三個も出したからさ、各種ひとつずつだとかえって怪しまれそうだったからね。
店主さん、手が震えてたよ。ダイヤを鑑定してた時は涙を流してたし。
「いやぁ、今日は実に良い日だ。まさかこのような素晴らしいものを目にすることはおろか、手にすることができるとは。惜しむらくは、私が商人であることでしょうな。商人である以上、これらをいずれは手放さなくてはなりませんからな」
アントナンさんは上機嫌だ。
宝石も幾つで交換するかの商談も終え、現在はその宝石待ちだ。傷がつかないように宝石をいれる木箱と、それを運ぶための鞄を用意してくれるとのこと。ありがたいことだ。
「それなら、いっそのこと気に入ったものを店の看板代わりにしてはどうです? 客寄せ的な意味で。まぁ、警備とかが大変になるかもしれませんけど」
「ふむ、それも良さそうですな。ルビーは国王陛下への献上品とするとして、このエメラルドを当店のシンボルとしますか。エメラルドは幸運を運ぶ、と云われておりますからな」
アントナンさんは嬉しそうだ。
この様子なら、さっきの考えは杞憂で済みそうだ。よかったよかった。
で、運ばれてきた薄い木箱。中は細かく格子状に区分けされていた。
これなんだろ? 革なのかな?
格子状に区分けしているものの材質がいまひとつよくわからない。スウェード? かな? それで区分けするように内張がしてある。まぁ、宝石がぶつかって傷がつかないようにしてあるのだろう。
もちろん、蓋にも同じものが張り付けてある。
そんな箱が三つ。結構な数になっちゃったな。全部で五十個くらいに増えたからねぇ。ただ価値的には、私が大損していることになってると思う。というか、増えすぎても困ると無理矢理この数で決めた。……そしたら金貨百枚分増えちゃったけれど。
「では、こちらが代金になります。白金貨になりますが、よろしいですかな?」
そういってアントナンさんが白金貨を十三枚並べた。
……これって、一千万の札束が十三あるようなものよね。おおぅ……。
と、これじゃちょっと問題があるのよ。
「あ、ひとつお願いがあるんですけどいいですか?」
「なんですかな?」
「さすがにこれだと使い勝手が悪いんで、できたら金貨一枚分を、銀貨で頂きたいです」
「あぁ、お嬢さん、物取りに遭ったんでしたな」
「あはは。まぁ、こうして今は命があるだけめっけもんですよ」
本当、そう思うよ。まぁ、お兄ちゃんには逢えなくなっちゃったけどさ。
そんなことを考えていたら空の巾着袋ふたつと銀貨が四十枚、目の前に置かれた。
あ、あれ? 両替されてませんよね?
「あ、あの、アントナンさん?」
「こちらが大分得をさせていただきましたからな。金貨一枚分程度誤差のようなものですよ」
せっかくだから貰ってしまおう。
両替で金貨九十九枚っていうのも邪魔そうだしね。使いにくい白金貨は拠点確保のために使おう。まぁ、この国では絶対に拠点を持つ気はないけどな!
白金貨と銀貨を、それぞれ別個の巾着にいれ、ポシェットに詰め込む。結構場所取るな。
そして木箱は頂いた革の鞄に詰め込む。この鞄は手で下げることも背中に背負うこともできるようになっている。これは助かる。
私は鞄を背負うと、アントナンさんと握手をして店を後にした。
やー、いい人だったな。足元みられるかと思ってたんだけど、少なくとも適正価格。感覚的には、かなり高めで買い取って貰えたみたいだ。まぁ、交換のほうは下がっちゃったのは仕方ないけどね。
ん? なんでわかるのかって? ほら、ノルニバーラ様の加護があるからね。嘘はわかるんだよ。それに私の目にも、商人というより職人って感じに見えたからね。職人さんは価値をさげることは侮辱と思うものだからね。大抵。少なくとも私の知ってる陶芸家のじっちゃんはそうだった。
そういや宝石だけど、どうも私、創れそうなんだよね。まだ試してないけど。変成魔法に【鉱石変換】っていうのがあるんだけど、これ、ゲームだと――
鉄→銀→金
って、変換することができる魔法。使い道がなかったんだけどね。変換できるのは鉱石でインゴットじゃないし。で、リアルの現状だとこの縛りというか、変換できる鉱石の幅が、取説によると広がってるらしいんだよ。それでどうも、そこらの石を宝石にできそうなんだよね。ある程度条件があるのかもしれないけど。ダイヤなら炭からじゃないとダメとかね。ただ金属ならなんでも大丈夫になってるみたいなんだよ。
まぁ、そうそう使うことはないだろうけど。でもこれ合金とかもできそうだ。
いずれこのあたりの検証とか実験もしないといけないなぁ。
個人的にはタングステンカーバイドを作ってみたい。おにいちゃん曰く、簡単に手に入れられる最強の刃物は、美容師が使うプロ仕様のタングステンカーバイド製の剃刀だって云ってたし。本当かどうか知らないけど。
さて、軍資金もできたわけだし、散策を再開しよう。足りない必需品とか買わないと。
あ、もちろん木箱と白金貨はインベントリ行ですよ。いただいた巾着には銀貨を十枚だけいれて、あと十枚をポケットに。残りの二十枚はインベントリですよ。
さて、もうひとつくらいお財布が欲しい。あと外套。いや、マントのほうがいいのかな。いまは髪をフードに突っ込んで襟首から服の中にいれてるから、蒸れてる上にすごいごそごそしてるんだよね。
これをなんとか解消したい。
まぁ、このだだっ広い広場は商店が集まってるみたいだから、服飾店なんかはすぐに見つかるだろう。
で、お買い物の際に問題となる貨幣関連。
一応スリ修行の時、興味本位でどんな硬貨があるのかは確認したんだよ。
悪銅貨、銅貨、銀貨、金貨とあるみたいだね。で、いまさっき知った白金貨が金貨の上と。
問題は、これらの価値が分からないってこと。レートっていえばいいの? それがわからん。
白金貨が金貨百枚。金貨が銀貨四十枚というのは分かったけど、この下はどうなってんだろ。百枚単位なのかな? 銅貨百枚が銀貨一枚? なんか、十円玉百枚が百円玉一枚って感じがして凄い違和感があるんだけど。いや、百円玉は銀貨じゃないけどさ。
まぁ、使ってみればわかるか。
しかし悪銅貨か。悪銅貨といえば、二枚で55。キャノンボールレース! アメリカも昔は無茶なことをやってたもんだね。堂々と交通法無視のレースを開催したりするんだもの。まぁ、ここの硬貨は五セント玉じゃないけどさ。でもなんだろう、気分が高揚しているよ。ふふふ。
悪銅貨でご機嫌になる私。ははは、なんて安い女だ!
……いや、なに訳の分からんこと考えてるんだ私。相当浮れてるな。
うん、落ち着こう。
さぁ、買い物に行くとしよう。
いや、だからまだ早すぎてお店開いてないんだって。
落ち着け私。
とりあえずベンチに座ろう。
この世界の貨幣については以下の通り。円換算での目安になります。
実際の価値感覚はこれより下がります。
白金貨はプラチナではなく、金とミスリル銀の合金です。
一般的には銀貨が中心に使われています。金貨は金持ちが使うくらい。
白金貨は大手の商人が大口取引などで使う程度です。
ちなみに、安宿暮らしで掛かる費用は、週銀貨二十枚程度になります。一日辺り約三枚。
(宿代:銀貨二枚 食費:銀貨一枚)
白金貨 :12,000,000円
金貨(3グラム): 120,000円
銀貨(1グラム): 3,000円
銅貨(2グラム): 300円
悪銅貨 : 150円