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112 罰を与えることなど不要です


 八月十日となりました。悪戯は順調に続いていますよ。昨晩、五回目の悪戯をしてきました。このところ睡眠をほとんどとっていませんが、特に苦にもなりません。


 ゲーキャラの肉体万歳! ですよ。


 とはいえ、不健康になることは確かですからね。なんだか隈ができてきたみたいなので、今夜の悪戯はお休みにしようかとおもいます。

 なんだかリスリお嬢様に監視されているような感じになってきたし。


 で、二日目から行った悪戯はこんな感じ。




・細工をしてドアの建付けを片っ端から悪くする。

・さらにドアの取っ手を取れやすくしておく。

・男爵自室にあるワインの中身を酢と入れ替える。

・机の引き出しに細工をし、開け閉めを不自由にする。

・床の一部を徹底的に磨いた上に油を塗布。すっごい滑るよ。

・男爵のベッドに虱を放つ。捕まえるのが大変だった。

・鬘の幾つかに、地肌に触れる部分に擦った芋を塗布する。

・上記以外の鬘にデバフ系付術を施す。ひ弱、馬鹿、加重のどれかになるよ。

・お手紙。『お前を見ている』

・鏡を薬品を用いて曇らせる。金属製だから、職人に修理にださないと直らない。

・上記をやった上で、男爵の額に悪戯書き。部下に指摘され恥をかくといい。




 無駄に頑張ったものもありますよ。

 ……呪いの鬘だけは、後でなんとかしないとマズいなかな? もし売りに出されたら、回収して処分しないとね。二次被害は望むところではないからね。


 さて、夜はこんな感じでしたが、昼間は昼間で活動していましたよ。


 衣装を完成させました。二着。一着は私の。もう一着はタマラさん用です。サンレアンに戻ったら渡すとしましょう。

 仮面さえつけなければ、普通に可愛い格好なので、外を出歩いても問題ありませんよ。ただ、デザイン的には目新しいものになっているけれど。


 それと、こっちの冒険者組合にも錬金台は搬入されているはずなので、その確認がてら、錬金薬を作ってきました。丁度良かったので、ラモナさんに簡単にレクチャーしてきたよ。作ったのは自白剤。いや、教会から頼まれたからね。自白剤としての用法以外に使わないようにと、ファウストさんに釘を刺してきたよ。

 麻薬として使うなということだと思ったかな? あれ、多分、集団催眠の導入剤としても使えると思うからね。そんな使い方をされたら困ると云うものです。

 あと発毛剤も作って来たよ。これも必要そうだからね。


 あぁ、教会と云えば、アレカンドラ様のレリーフが光った理由がわかったよ。アレカンドラ様に連絡を取って、ご説明を頂いたよ。

 なんでも、大昔の名残みたいなものだそうな。六神を生みだす前に存在していた、神子の威光の為のシステムだそうな。


 アレカンドラ様の加護を持った者が祈ると、レリーフが輝くのだそうな。もちろん、六神の立像も光るらしい。


 ……そういや、サンレアンでディルルルナ様の立像に祈った時も光ってたね。ルナ姉様が降臨したせいかと思ってたけれど、それとは別だったのね。

 これ、他所に行った時に、下手に祈れないよね? 祈るポーズだけなら平気なのかな? サンレアンに戻ったら、ルナ姉様かララー姉様に訊いてみよう。


 それ以外にやった変なことと云えば、シューもどきを焼いたことくらいか。マヨネーズと玉子を軽く泡立てて、金属製のカップに流して焼いただけだけど。

 いや、最初はシフォンケーキを作るつもりだったんだけど、ついシュークリームっぽいものが食べたくなっちゃってさ。

 これはこれで便利なんだよね。シュークリームっぽくするだけじゃなくて、サンドイッチ用の具材を詰め込んでもいいからね。


 やってたことは、これくらいかなぁ。まだ蜜蝋は届かないしね。


 そんな、今晩はゆっくり寝ようと思っていた日の朝食後、エメリナ様に質問をひとつされました。


「ねぇ、キッカちゃん、他人を魅了する毒って知らないかしら?」


 ……はい?


「魅了する毒、ですか? 催眠導入剤とかではなく?」

「違うわね。飲むだけで魅了できる毒ね。ついでに、不老長寿の効果もあるみたいだけれど」


 ……は?


「それは毒なんですかね?」

「鑑定盤によると、毒扱いになってるのよ」


 実在するんだ。


「えーと、錬金薬の毒でしたら、いくつか知っていますけれど、魅了する毒というのはありませんね」

「そう……困ったわね……」

「どうされたのですか?」

「一日のパーティ用に納品されたワインに、一壜混じっていたのよ。出どころを調べているんだけれど、芳しくなくてね」


 エメリナ様が不愉快そうに眉根を寄せる。


 こっちでのワインの容器は硝子壜ではなく、陶器製……いや、磁器かな? どっちかはわからないけど、焼き物の瓶だ。なんというか、焼酎を彷彿とさせる感じだったりするんだ。

 なんでも、ワインは出来上がったら、樽から瓶に移し替えるのが普通らしいですよ。


 というかですね。魅了の上、不老長寿って、血族にされた吸血鬼みたいなんですけど。


「あのー、それって、吸血鬼に噛まれたのと同じような状態になってませんか?」

「あぁ、やっぱりキッカちゃんもそう思う?」

「……」


 えぇ……。なんと答えてよいのやら。


 私は困ったようにエメリナ様の顔を見つめた。

 そして、思い当たることを口にする。


「異世界の吸血鬼が関係しているんじゃないんですか?」


 すると、驚いたようにエメリナ様が目を瞬かせた。


「……なんで知ってるの?」

「神様方から警告を受けましたから。伯爵の召び出した吸血鬼が跳梁していると。召喚主である伯爵は、その吸血鬼の抑止になるのでしょう?」


 あの召喚器のもうひとつの効力だ。私は常盤お兄さんとアレカンドラ様のおかげで、その効力からは逃れているけれど。


 ……あぁ、今思ったけれど、下手するとあの髭に、夜の相手をしろとか云われた可能性もあったんだね。まぁ、どこまで効果があるのかは、あの髭も理解していなかったみたいだけど。


 そういや、一緒に召喚されたあのふたりはどうなったんだろ?

 死んだかしら?


「ね、ねぇ、キッカちゃん。その吸血鬼も、異世界の神の子なんでしょう? その、殺してしまって大丈夫なの? 神様からなにか、伺ってないかしら?」

「始末してしまって問題ないみたいですよ。その吸血鬼の世界は終わっているようです。そのため、その世界を担当している神はもはやいないそうですよ。僅かながらに人類は生き延びているそうですが、ほぼ完全に世界は不死の怪物に覆いつくされているとか。生き延びているという人類は、多分、家畜扱いになってるんじゃないですかね? 絶滅したら、吸血鬼共は食糧をなくしてしまうわけですし」


 あ、エメリナ様の口元が……。


 さすがにショッキングだったかな。まぁ、対処を間違えると、こっちもそう成り兼ねないからね。

 オーガとかがゾンビにでもなったら、冗談じゃなしに災害だよ。飛竜も大概だったけれど。あれ、陽動を命じられてたから、街の外縁にほぼとどまってたみたいだし。


「か、家畜扱い……なのね?」

「ほかに吸血鬼共のなんの役に立つのかと」


 いやぁ、ゲームでの吸血鬼の食卓はかなり刺激的でしたからね。

 赤かったからね。

 ……そういやあれ、Z指定のゲームだったね。まぁ、残虐表現があるからだろうけど、そこまで気にするほどじゃないと思うんだけれどなぁ。

 首を刎ねるのがまずかったんですかね?


 え? お前十七歳だろって? はっはっはっ。気にしちゃいけない。


「家畜といっても、血を吸うだけよね」

「うーん……いろいろと伝承はありますからねぇ。血と一緒に肉も喰らう場合もあるみたいですし」

「……そういえばオルボーン前伯爵が、あの吸血鬼は人食いだっていってたわ」

「……うわぁ」


 ってことは、食われた人がいるんだね。


「もう一度詳しいことを聞いておいた方がよさそうね。

 それじゃキッカちゃん、王宮にいきましょう」

「はい?」

「国王陛下と王妃殿下がお呼びなのよ」


 血の気が引いた。


「い、いったい何事でしょう? 私、なにかやらかしましたか!?」

「いえ、キッカちゃんはされたほうよ」


 こうして、私は侯爵夫妻と共に王宮へと向かうことに。


 ◆ ◇ ◆


 半ば連行されるように王宮内を進み、やたらと豪華な応接室へと案内された。

 あ、一応、鞄を背負ってきた。一昨日、商業地区で買ってきた、ブリーフケースっぽい、背負うタイプのスリムなやつだ。


 ほどなくして、国王陛下と王妃殿下が、宰相様を伴ってやって来た。

 そしていきなり――


「まずはキッカ殿に、国としてお詫びを」


 何事ですか!? すごい大袈裟なんですけれども!?


 オロオロとしつつも、私を逃がさぬよう、両隣に座っている侯爵夫妻に視線を交互に向ける。


「キッカ殿、バッソルーナの件を私も聞いたのだ」

「冒険者組合からも情報提供をうけてな。現在はレブロン男爵を取り調べ中だ」

「あー……」


 合点がいった。どうやら王妃殿下、オクタビア様が手を回して調べてくださったのだろう。全部話したからね。被害に成らなかったことは話さなかったけど。


「最悪、ゴルカっていう兵士が悪いってことにするかもしれませんね。ゴルカが勝手にやったことだと云って」

「ゴルカ?」

「私から白金貨を四枚巻き上げた人です」

「どういうことかね!?」


 国王陛下が詰め寄って来た。


 あれ? 国王陛下、聞いてませんか? 王妃殿下には話しましたよ?


 王妃殿下に視線を向ける。

 オクタビア様も顔を引き攣らせていた。


 あれぇ?


「馬鹿げた額を取られたとは聞きましたけれど、そこまで法外な額とは思ってもいませんでしたよ」


 王妃殿下のお言葉。


 どうやら私が具体的な金額を云い忘れていたみたいだ。


「それでだ、キッカ殿、レブロン男爵になにを望む?」

「え? 望みですか?」

「そうだ。ふむ。罰、と云ってもよいな。死罪でももちろん構わぬ」


 罰か。つまり、レブロン男爵をどうするか、私が決めてよいってことだよね?


 なんだか、もの凄いことになってませんかね?


 そして思いついたことがひとつ。

 ただ、これ問題があるんだよねぇ。


「……ひとつ考えていることはあります。ですが、これをお願いすると、国の税収に打撃がはいるかもしれません」

「キッカちゃん!?」

「キッカ殿、なにを考えているのだね」


 さすがに宰相様も顔色が変わった。


「いえ、簡単なことですよ。罰を与えることなど不要です。ただ、バッソルーナの町には、是非とも私に対して行ったことを徹底してもらいたいだけです。

 少なくとも入都税と出都税に関しては。例外なく。身分の貴賤に関係なく一律金貨二百枚分の取り立てをしてほしいです。向こう数十年くらいは」


 あ、さすがにみんな絶句した。


 そりゃそうだろうなぁ。だって、これを実行したらどうなるかぐらい、私にだってわかりますよ。

 都市は生き物ですからね。人の出入りが途絶えようものなら、それは死を意味します。なにしろ、例外なく取り立てですよ。農家の方は毎日金貨四百枚を支払って畑仕事にいかなくてはなりませんね! できるかそんなこと! さらには商人の移動が無くなります。物資の流通が途絶えますね。誰がわざわざそんな高いお金を払って町にはいるのさ。宿暮らし十五年分の生活費ですよ。


 町の中だけで自給自足は不可能ですからね。畑は町の外に広がっているし。


「き、キッカ殿、それは……」

「大丈夫ですよ。だって、それだけの大金を払う価値のある町なのでしょう? 私には終ぞ理解できませんでしたけれど。町に入るなり、服を脱げと脅され、どこの露店も商店からも売買を拒否され、ひそひそぼそぼそと延々と陰口を叩かれ、町を出るときには犯罪者にでっち上げられそうになった上、白金貨四枚巻き上げられましたけれど。きっと、それはそれは素晴らしい町なのでしょう? まったくもって、本当に、私には終ぞ理解できませんでしたけれど。

 大丈夫です。きっとレブロン男爵には自信があるのです。私の見識不足であるにちがいありません。税収が減るどころか、大いに増えるかもしれませんね。いえ、増えるに違いありませんとも!」


 あ、宰相様が頭を抱えた。国王陛下と王妃殿下は固まって……いや、オクタビア様、なんだか恐ろし気な雰囲気がでてるんだけれど!?


「き、キッカ様? その、裸にしようとしたというのは事実なのですか?」

「事実ですよ。この胸のせいなんですかねぇ。バッソルーナの兵士もですけど、えーっと、パチェコ子爵でしたっけ? そこの隠し子に強姦目的で捕まった時も、最初は取り調べと称して服を剥ぎ取ろうとしてきましたし。触られないように、魔法で弾き飛ばしたら、大騒ぎになりましたけれど」

「陛下、いまからでも遅くありません。あの恥知らずの首を刎ねましょう」

「オクタビア!?」


 あ、あれ? なんだか物騒なことに。


「妃殿下、どうか落ち着いてくだされ。まだ罰を決定するわけにはいきませぬ」

「あれは女の敵です。女神様を犯そうとする不埒な下衆です。生かしておく道理などありません。いえ、我々で裁くことができないのなら、教会に預けましょう。教皇猊下であれば、きっと正しい対処をしてくださりますとも」


 ちょっと聞き流せない部分があったけれど。えーっと、女神様というのは私じゃありませんよね? 女神様が顕現されていたならば、きっとそれを犯すに違いない、という言い回しですよね? オクタビア様。


 一応、この世界は男性優位的な部分はあるけれど、いわゆる男尊女卑の世界というわけではない。なにしろ、女神様を崇めているわけですからね。なにより主神となる立ち位置にいるのがアレカンドラ様だし。


 ただ、女性である以上、月の障りとか、妊娠出産とかで不自由になる期間がどうしてもあるという理由から、男性優位っぽくなっているだけだ。

 ある意味、蟻とか蜂の社会性に近い部分があるのかもしれない。

 まぁ、蜂は雌ばっかりだけど。雄は女王と交尾した後、死んじゃうんだっけ?


 とりあえず、憤っているオクタビア様をなんとか抑えよう。


「あのぅ、宰相様? 強姦殺人犯共はどうなったのですか?」

「現在は拘留中ですな。被害者に関しての捜査が終わるまでは。もっとも、パチェコの小倅以外は死罪が確定しております。パチェコの小倅は被害のほどを確認してから、より相応しい罰を処しますよ。すでにパチェコ家は取り潰しましたしね」


 あぁ、処刑は確定なんだ。そりゃそうか、連続殺人だもの。それも王家のお膝元で、王家に雇われている者がだよ。厳しいのは当たり前だよね。となると、処刑方法ってことか。


「私のいた国でも、そこまでやったら死罪になりますからねぇ」


 もちろん、昔の話だよ。江戸時代とかの。


「確か、死罪でも一番重い死罪が、市中引き回しの上、打ち首獄門。っていう感じですかね」


 一番重い処罰がこれだっけ?


「……キッカ殿、それはどういった刑罰なのかね。死罪なのは分かるが」


 国王陛下が興味深そうに訊ねて来た。

 あぁ、この云い回しじゃ、こっちの人は分からないよね。


「まず、罪人の処刑を行う際、処刑場まで罪人を馬に乗せて、この罪人がなにをやったかを知らしめるべく、罪状を記した看板を掲げて街中を進みます。当然、罪人は拘束した状態ですよ。服装も処刑用の白装束です。

 そして処刑場で打ち首、首を刎ねます。もちろん公開処刑です。

 最後に、その刎ねた首を広場などの目立つ場所に、先の罪状を記した看板と共に数日間晒します。

 これは捕らえること叶わなかった者への警告とともに、悪いことをすると、こんなことになるよ、という人々への教訓になりますね。

 ついでに、その罪人の名誉から何から粉砕もできます。これまでの功績? そんなもの、これだけで地に落ちますよ」


 あ、あれ? 国王陛下と宰相様、お顔が真っ青ですよ。

 で、オクタビア様、その、胸元で手を合わせて目をキラキラさせているのはなんなんですかね?


「素晴らしいわ。処刑以上の罰はないと思っていましたが、そのやり方は実に理にかなっています。犯罪抑止にもなりましょう。

 陛下、我が国でも取り入れましょう!」

「け、検討はしてみよう」


 王妃殿下、過激ですね。王様は及び腰だけれど。

 別にこれだけなら、恐怖政治になるわけでもなし、問題ないと思うけどなぁ。

 これでガタガタいうというなら、そもそも犯罪を犯すなという話だもの。


 微妙な空気になりながらも、次の話題に。


 あ、男爵の件は保留になったよ。さすがに私のアレを採用するのは問題だろうからね。

 で、こんどはオクタビア様のほうのご用事だ。


「これを見てくださいな。宮廷画家に描かせましたのよ」


 そういって出されたのは女性の描かれた羊皮紙。いわゆるラフ画というか、下書きというか、そんな感じのものだ。


「えーっとこれは?」

「アレカンドラ様の肖像です」


 あぁ、本格的に描く前に、間違っていないかどうかの確認か。それで何枚かあるのね。

 王妃殿下のあの時のメモだけから、ここまで起こしたのか。画家さん、凄いな。


 で、でもね。う~ん……。

 良く描けてる。良く描けてるんだけれど、ちょっと違うんだよね。上手く云い表わせないんだけれど。


 そうだ!


「すいません。ちょっと失礼します」


 私はそう断りを入れると、腰のところに押し込んでおいた鞄を引っ張り出し、そこに手を突っ込む。

 そして取り出すふりをして出すのは【菊花の奥義書】。


 これ、普通に頁をめくる分にはただの植物図鑑でしかないんだけど、私が念じて頁を開くと、私が見聞きしたものが記載されてる部分が現れる。

 多分、私以外には開けない頁。一種の安全装置的なものだと思う。


 なにしろ、私の持つ現代知識部分も表記されるからね。それも、私の知識に無いというか、欠けている部分を補って。まぁ、日本語表記だから、読まれても大丈夫だとは思うんだけれど。


 さて、それじゃ神様の頁を開いてみよう。

 うん。あるね。ちゃんと御姿も表示されてる。ライオン丸が、まるで不動明王みたいな感じに、炎を背負って仁王立ちという、素晴らしく迫力のある画像なのが納得いかないけど。

 で、問題のアレカンドラ様の頁なんだけれど、うん、どうしよう。例の呪われた幼女形態だ。

 えーっと、アムルロスの管理者だった頃、で頁を開き直せば昔の姿になるのかな?


 頁を開き直す。


 お、やった。大人バージョンになったよ。というか、こっちが本来の姿だ。

 おぉ、ルナ姉様のゆるふわ感を排除して、いわゆる知的美女感を増し増しにしたみたいだ。もの凄く凛々しい。


 簡単に云うと、『絶対に逆らっちゃいけないお姉さん』って感じ。


「キッカ様?」


 おぉ、いけないいけない。


「アレカンドラ様の御姿ですが、こちらにありました」


 そういってテーブルの上のお茶やらを退けて戴き、そこへ本を置いた。


「あ…あぁ……これが、これがアレカンドラ様の御姿!」


 ちょ、王妃殿下、泣かないでくださいよ。


「き、キッカ様、この本はお貸しいただいても?」

「すいません。無理です。それ、ナルキジャ様から頂いた神器なので」


 あ、みんなの顔が固まった。


「私がナルキジャ様より授かった加護の部分なのですよ。ですから、貸したくとも貸すことができません。なので、写しをとるなら、今のうちにでも」


 私がそんなことを云ったら、ずっと気配を消していた執事さんが会釈をして、扉から出ていった。

 すぐ戻って来たから、多分、宮廷画家の人でも呼びに行かせたんだろうなぁ。


 まぁ、これでアレカンドラ様の姿も広く知れ渡るかな?


 正直、扱いに関して割と酷かったからね。

 いや、ちゃんと崇め奉ってる人は多いよ。でもね、髭とかジョスリーヌみたいなのも、また多いんだよ。

 六神に対してはあれだけ畏れをもっているというのに、なんなんですかね、あの宗教家共。


 欲の権化にしか見えないし。


 あいつらに対する抑止にでもなればいいんだけれど。


 そして、これが元で、私が後に頭を抱えることになるなんて、この時は思ってもみなかったのです。




 と、なにか嫌な予感がしたので、敢えてフラグを立ててみる。多分、これで折れるはず。




 折れるよね?




誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そして、フラグは折れなかった…(笑)
[良い点] アレカンドラ様大人バージョンのお姿を広めるキッカさんの優しさに、アレカンドラ様もにっこりしている気がしました。 将来的に、大人バージョンが広まることで呪いが解けたりすると良いですね…。 […
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