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10 修行開始


 さぁ、修行である。

 まず鍛えるのは、眩惑魔法。

 対象を煙に巻くというか、簡単な洗脳というか、精神に作用する系統の魔法だ。

 これを鍛える理由はふたつ。


 ひとつは熟練級魔法のひとつ、【透明変化】を使うため。まぁ、こちらは使用魔力軽減装備があるから、現状でも使えるんだけれど、装備に頼らずに使えるようにもなっておきたい。

 ついでに魔力容量も増やしたいしね。


 もうひとつは、眩惑魔法のパーク解放。かなり技量を上げないと解放できないけれど、【無音魔法発動】を解放したい。

 理由は、魔法は発動時にとんでもない騒音がでるんだ。

 とにかくうるさい。


 回復魔法を使ってた時も『ふぃぃぃぃぃぃぃぃん』って感じの音が酷かった。現状では隠密活動中に騒音を立てる訳にはいかない。

 だがこの技能があれば、この騒音を消せるのだ。……原理は謎だけど。

 隠形の技量が高ければ魔法に頼る必要がないんだけど、現状では素人レベルだからね。


 で、修行である。魔法はただ使えば技量が上がるわけではない。対象に効果を及ぼさなくては技量が上がらないのだ。


 ……まぁ、上がるものも眩惑魔法にはあるんだけど。対象が自身である【無音歩行】とか。普通はこれを使いまくるのが、技量上げの基本なんだけど。

 だが今回は徹底した効率重視で、とっとと眩惑魔法を限界まで技量をあげる予定である。地道にやらずに済むなら、楽な方を選びますとも。


 ではなにをするのかというと、達人魔法である【静穏】を使うのである。人心を落ち着かせ、戦闘行為を止める魔法だ。恐ろしいのは、なんで戦っていたのかさえも忘れさせる点だ。

 そして達人魔法は、術者を中心として発動する広範囲魔法である。それは壁で隔てられていようと、範囲一杯に発動する。つまり、この地下牢で発動させたとしても、城内にいる結構な人数に魔法を掛けることが可能であるということ。そして【静穏】であれば、なにも問題が起きようがない。修行につかうのに非常に都合がいいのだ。


 ということで、さっそくやっていきましょう。

 すでに装備は、眩惑魔法消費魔力軽減装備で、使用魔力百パーセント軽減となっていますからね。魔力ゼロで達人魔法も使いたい放題ですよ。


 ……装備、一個でも外すと使えないんだけどね。一個外した状態で使えるようになるのが、第一目標。そうすれば、魔力容量を増やしながら修行できるからね。

 えーと、達人魔法は両手に魔法をセットすることになるんだよ。魔法の器が片手じゃ足りないから、両手でやる感じ。そこへ魔力を込めるわけだけど、装備のおかげで自身の魔力を使わない代わりに周囲から掻き集めるから、いわゆる発動のタメは従来通り発生する。


 うん、このタメの時間がなんというか、両手を軽く広げた格好で棒立ちなのは間抜けな感じがするよ。

 ゲームだと、特撮ヒーローの変身ポーズみたいなことしてたけど。

 ……やってみるか。


 はっ!


 全身を使って、右手を大きく円を描くように回し、次いで左手も同じように回した後、天を仰ぐように胸を張り、そして右手に持った魔法を足元に叩きつける!


 ていっ!


 ボゥン!


 うるさっ!


 爆音とともに、魔法を叩きつけた足元から放射上に淡い緑色の光が走っていく。

 うわわ、なんだこれ!?


 頭に魔法の効果の情報が入って――ちょ、多い多い多い。

 これ、魔法に掛かった人の情報!? あわわわわわ。あ、終わった。

 びびび、びっくりした。

 あ、誰も抵抗できなかったみたいだ。

 ま、まぁ、平和的な魔法だしね……。


 ……なんか、感覚的にもの凄く技量が上がった気がするんだけど。なんというか、いろいろ最適化された感じがするよ。


 確かめてみよう。


 インターフェースから技能を開く。そして見るのは眩惑魔法の欄。


 えぇ、嘘でしょう。技量が二十以上上がってる。

 いや、ゲームの時もそうだったけどさぁ。リアルになってもこうなの?


 ……この体と頭は大丈夫なんだろうか?

 自分のことだけに心配なんだけど。

 いや、どうせ上げるんだから、早い分にはいいんだろうけど。


 よし、気にしないことにしよう。さぁ続けるよ!

 あ、変身ポーズどうしよう。魔力のタメ時間測るのにも丁度いいんだよね。

 でもあの動きを人前でやるのは度胸がいるんだよ。

 だけどあのタメ時間は微妙に手持無沙汰な間でもあるんだよ。


 ……こういう悩みはとりあえず先送りだ。ポージングありで進めよう。


 かくして、本日の修行だけで目的の【無音魔法発動】どころか、限界まで技量が上がりました。




 修行二日目。

 予定より早く眩惑魔法の修行が終了したので、今度は回復魔法の技量をあげることにしよう。現状、こっちは一気に上げる必要もないけれど。一応、目標として、安全確保のため【死の回避】のパークを開放することを目指そう。


 【死の回避】。これは、正確には死を回避する能力ではない。死にかけると、一気に傷を回復する能力だ。回復量は一定であるが、現状なら発動すれば全快して余りある回復量だ。

 尚、一日に一回のみ発動可能。


 今回修行に使う魔法は【神気円陣】。不死の怪物避けの結界魔法。円陣内にいれば、微量ではあるが傷も癒されていくという効果もある優れものだ。


 今日の装備は回復魔法消費魔力軽減装備。魔力消費軽減は、魔法の各系統ごとにわかれているのがちょっと面倒なんだよね。理由はわからないけど、まぁ、魔法のロジックが違うのだろう。


 さぁ、はじめるか。




 修行六日目。

 魔力容量も順調に増えている。よしよし。

 ついでだから、変成魔法も最大まで技量を上げて置く。もうこうなったら、ひとりで技量を上げられるものは上げてしまおう。とはいっても、この変成魔法で最後だけど。

 召喚魔法と攻撃魔法は、敵を倒してなんぼの魔法だからね。

 あ、スケルトンは召喚してみたよ。

 予想外に『可愛い』とか思ってしまった私は変態なのだろうか?


 ……。


 本日修行に使う魔法は【念力】。熟練級の魔法。これは持続型の魔法……っていえばいいのかな。発動時間が術者の任意の魔法、といえばわかりやすいかな。

 【静穏】と【神気円陣】は溜めた必要魔力分を一気に放出して発動するけれど、【念力】は発動中、魔力を継続的に消費する。

 素人級の魔法はだいたいこのタイプだ。


 【念力】だけど、まぁ、一番わかりやすい超能力みたいな魔法。

 で、消費魔力はどないだ?

 とりあえず魔力消費軽減装備のひとつである指輪を外して、ほったらかしにしてあった南京錠に掛けてみる。


 おぉ、浮いた! あ、手の動きにあわせて動かせる。引き寄せるだけじゃないんだ。結構、面白いかもしれない……って、消費量酷いなこれ、魔力容量かなり増えたのに、十秒かそこらしか持ちそうにないよ!? まだサークレットとペンダントつけてるのに!

 あ、魔力切――うわぁ!


 【念力】が切れた途端、南京錠が吹っ飛んでいって、壁に当たってこっちに跳んできた!

 あ、危な。危うく当たるところだったよ。気を付けないと。

 そういや、雑貨に弓の的がはいってたな。藁束まとめたやつ。

 あれをクッション代わりにだして修行しよう。危ない。


 牢屋の端っこに的を設置してと。


 しかしこれ、魔力の消費が酷いな。まだ技量が素人だから仕方ないのかもしれないけど。まぁ、魔力容量UPの修行もあるし、いいや。魔力が底をついたら指輪を嵌めてやればいいんだし。


 よぉし、やるぞー。




 修行十四日目。

 ただ今の時刻は夜です。正確な時間は分からないよ。

 ん? なんで夜だってわかるのかって?

 【天の目】を使うと見えるからね。お城を上から見下ろせますよ。ここは東翼みたいだね。……このマップ、上が北で固定されているのならばだけど。


 で、変成魔法の修行だけど、思ったより時間が掛かったよ。まぁ、達人級の魔法じゃないからね。魔力容量も大分増えたよ。素人レベルの技量でも、達人級の魔法がなんとか一回発動できるくらいには。


 スケさんチーム出してみたんだ。うん、スケさんは私よりちょっと大きいくらいの体格(骨だけど)だったけど、英雄と覇者は見上げるくらいに大きかった。百八十、九十くらいあるのかな?

 私? 私は百五十センチだよ。ちびじゃないぞ。やや低めだ。ただ平均よりちょっと低いだけだ!


 でも五体も揃うと結構壮観だね。スケさんは棍棒。兵士はメイス。弓兵は弓矢、覇者は剣と盾。英雄は両手剣持ち。ゲームだったら召喚時間は一分くらいだったんだけど、前にスケさんを召喚した時は十五分くらいいてくれた。確かゲーム内時間だと、一時間四分なんだよね。だからリアルだと約十五分ということだ。現状だと十分すぎるな。パーク解放すると、一時間近くいてくれることになるわけだし。


 とりあえず消えるのを待とう。このまま出発すると、ついて来ちゃうからね。


 さて、今日からは牢から出て、お城内で修業ですよ。

 隠形の技量上げです。【透明変化】の魔法を併用していきますよ。

 今日の目標は城内の構造把握と、食料確保。

 ……今日まで水はあったけどずっと絶食だったんだよ。

 あはは、【魔力変換】万歳!


 ……厨房をみつけてなにかくすねてこよう。ごはん食べたい。

 ハムとかないかな。米はないだろうしなぁ。

 いや、現状でいきなり固形物なんか食べたら、腹痛で泣きそうだな。ハムはあれば確保するけど、最初は水でふやかしたパンとかにしないとダメだろうな。

 あっ、いけないいけない。召喚アイテムを探さないと。


 ……場所、わかるかな?


 右手に【道標】をセットする。

 個人的には、一番訳の分からない魔法。

 なにしろ、情報を得ただけで、目的の場所を教えてくれるという素敵魔法なんだよ。……例えそれが、行ったことのない場所であっても。それどころか、対象が常に移動していたとしてもだ。

 術者がさっぱり分かっていないのに、なぜ魔法が案内してくれるんですかね?


 まぁいいや。とにかく使ってみよう。現在の装備は暗殺者装備一式に、眩惑魔法消費軽減アクセ。さらに指輪とペンダントにはスリ技術上昇の効果も付与されている。

 ん? スリなんてするのかって? やりますよ。こそこそ動き回るのには必須ですよ。相手の攻撃力を奪うのに最適ですもん。


 こそこそ忍び寄って、敵のメインウェポンを奪うのです!


 ゲームだと防具までスれたけど、リアルだとどうなのかな? いや、無理だよね、さすがに。まぁ、武器を奪えるだけで十分だけど。いや、今は素人だからそんなことできないけどね。とはいえ、寝ている人をみつけたら何かスってみよう。


 では【道標】発動。

 ……ふつうに案内してくれるね。足元に白い煙みたいなラインがでてるよ。

 どうしよ。先にアイテム回収しちゃうか。

 ま、そこは臨機応変にいこう。いきあたりばったりとも云うけど。


 それじゃ、行ってきます。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前読んだ時は分からなっかたですけど、最近とあるmodだらけのゲーム五作目を始めたら、、なんか凄く見覚えがある要素が出てくるんねー
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