まずは地形から
えっとぉ、まずは地形モデルの選択かぁ。
私は、神様(?)からもらった『世界創造補助ツール』(以下『創ツ』と略)に表示される案内にしたがって、世界の創造を始めた。
まったくのゼロから作るのではなく、ある程度基本形から選んで、それを細かくいじるようになっている。
『パンケーキモデル』と『地球モデル』、『その他モデル』が選べるようになっている。
あんまり凝った世界を作ってもなんだし、『パンケーキ』か『地球』で良いかな?。
『パンケーキモデル』というのは、いわゆる世界がまっ平らで、亀さんとかゾウさんの背中に乗っていて、世界の果てに行くと海が滝になって落ちているやつですね。
うーん、ちょっと迷う。
ファンタジーっぽい世界と言うなら、まっ平らな世界だけど。
神様(?)の話からすると、私が元いた世界の人が転生して来るようだし、パンケーキだと戸惑っちゃうかな?。
うーん、でも神様(?)が嘆いていたような世界の改変はやりにくくなるから、かえって良いような気もするし。
しばし考え、ふっと笑って、私は肩の力を抜いた。
「まあ、いっかぁ。」
声に出して言うと、私は『地球モデル』を選択した。
いい加減な気持ちで選択したわけではない。
神様(?)の言っていた事を思い出しただけだ。
前世の不幸な人生を埋め合わせるための幸福な世界を作るのが、私の役目。
プレイヤーをちまちまといじめて楽しむゲームを作るようなまねをしても仕方ない、と思っただけ。
前世での自分の知識をひけらかして良い気分になるのも、幸福な生活の一つだろう。
だったら、極力そういう小さな幸せは、かなえてあげよう。
何か問題が起こったら、修正すれば良いだけ。
なにせ私は、全知全能に近い力を与えられた女神サマなのだから(おーっほっほ)。
あ、高笑い、なんか気持ちいい!。
高笑いって、ちっちゃい子がやっても、似合わないものだからなぁ
と、思ったら心に『ギャップ萌え』という言葉が浮かんで来る。
そうか、そういう感じ方もあるわけですね。ふむふむ。
こういう風に思った事についての知識が浮かんでくるのは、神様の持ついわゆる『全知全能』の力の内の『全知』に関連した能力らしかった。
肩の力が抜けた私は、次々と地形要素を配置してゆく。
転生して来た人が安らげるように、感動出来るように、風光明媚な景色を作ろう。
空には月を。ついでなので、地球の周りを回る土星のような美しい輪も配置する。
細かいサイズの衛星で構成される輪は、必要な時には、神の怒りを示す巨大隕石として降らせる事も出来るらしい(ふふふ)。
海と2つの大陸。暖かなさんご礁の海に浮かぶ多くの島々。
一つの大陸には、登り応えのある高い山と、雄大な渓谷を
もう一つの大陸には、牧歌的な高原とやさしいせせらぎの小川が集まるゆるやかな川を。
美しく厳しい砂漠と、実り豊かな平野と海。
多種多様な生き物の住める大きな森や湿地。
取り合えず、こんなもんかな?。
すると『創ツ』にメッセージが出る。
『では、この設定で、気候帯バランスに基づき地形の論理的再配置を行います。』
ぴろろろろぉーーん!
大雑把に配置した地形の形が、フラクタル化されて現実感を帯びると同時に、『高い山で湿気が取り除かれてその後ろに砂漠が出来る』みたいな若干の位置移動が行われて、不自然さのない地形配置になった。
大気の動きも表示されて、気候帯区分が色分けで表示されている。
おお!、カッコイイ!。
自分で作った世界ながら、惚れ惚れするなぁ・・・
『地形配置は、後でまた修正出来ます。生態系を配置しますか?。』
お、またメッセージが出た。
そうだよね、地形があっても、生き物がいなくちゃ『森』や『砂漠』じゃないよね。
取り合えず、『地球標準設定』で配置して・・・
でも、ドラゴンとかカッコイイのとか、面白い生き物も配置したいよね・・・。
なぁんてことを思っていたら、またメッセージが出た。
『ドラゴン:標準生物として配置しますか?。隔絶環境生物として配置しますか?。なお、『神使生物』として特殊能力を持たせて自由に配置する事も可能です。』
『神使生物』!、なんかカッコイイ!。
よし、地水火風それぞれのドラゴンを『神使生物』として配置しよう。
『地』は、なだらかな方の大陸の一番高い山が、実は亀さんみたいな姿のドラゴンの背中、と言う事にしよう!。
『水』は、海に。細長い感じの、いわゆる東洋の竜の姿で。
『火』は、険しい方の大陸の一番でかい火山の火口に。いわゆる西洋のドラゴンの姿で。
『風』は、空に。巨大な積乱雲に乗ったり、遥かな高空を飛んだり。羽が大きめのドラゴンの姿に。
よし、4大竜、見参っ!
ついでに、それぞれの姿のちっちゃいドラゴンも配置しちゃおう。
『地』のドラゴンの山に、全長・・・うーん、10mはないと、トカゲか呼ばわりされるかな?を数匹と、20mのを1匹。
海には、鯨に負けないように50mくらいのを数匹。
大きい火山には、15mくらいのを1匹づつ。
空には、・・・まあ良いか。大きいのが1匹いれば。無理に配置しなくても。取り合えず。
ついでに、ファンタジー系のモンスターも配置・・・うーん、どうしよう?。
あんまりいると、街とか村とかを襲って、生活が苦しくなるよね。
でも、多少はいた方が隊商の護衛とかで冒険者が必要になってカッコイイかも?。
しばし考えた後、とりあえず、今はまだ配置しないでおく事にした。
よし、実行!
ぶわっ!
地形の上に雲のようなものが広がる。
それがゆっくりと降りて行って、色々な色調の緑色に変わって行く。
そして、森からにぎやかな小鳥達のさえずり、生き物のうごめく音が聞こえて来る。
森に風がざわめき、むせ返るような森の匂いが香って来る。
女神様としての感覚で、それらのすべてを同時に感じた私は、ちょっぴり幸せな気持ちになって、ほっとため息をついた。