プロローグ~殺されちゃいました!~
「わぁー、きれいなガラス細工!。」
「そ、そんなぁ。ナ、ナノちゃんの方がきれいだよ。」
「え?・・・ぇえとぉ。」
かわいい、とは言われても、きれいとはあまり言われた事がなかった私は、思わずうつむいて頬を赤らめてしまった。
そんな私を見て、三宅さんが言う。
「うわぁ、かわいいっ!。ナノちゃん、ホント、可愛いよねぇー。」
「あー、ありがとうね。」
さんざん言われ慣れた言葉に、ちょっとテンションが戻る。
「ホント、ちっちゃくて、小学生みたいな体つきだしぃ。」
「むー、気にしてるんだけどなぁ、体型とか背の高さとか。私、これでももう25歳なんだからね?。子ども扱いしないで欲しいなっ、と。」
私が、ちょっとむっとしてそう言うと、三宅さんは、ニタァーッと気持ち悪い笑みを浮かべて、あたしに顔を寄せて来ながら言った。
「そ、そうなんだよね、ナノちゃんは、もう大人なんだよね。
たとえ外見は幼女でも、年は大人だから、何したって合法なんだよね!。ぐへへへへ・・・・・。」
「ちょっ!、・・・」
三宅さんが、さらにずずずーいと近寄って来て、私は思わず後ずさった。
「だから、あーんな事も、こぉーんな事もして良いんだよね!。したって、警察に捕まらないんだよねっ!。」
「やっ、やめてっ!。」
私は身の危険を感じて、迫って来た三宅さんから逃れようと、した。でも一瞬早く三宅さんの手に捕まってしまい、そのまま押し倒されてしまった!。
私をがっちりと押さえ込みながら、三宅さんが気持ち悪い笑みを浮かべて言う。
「ナノちゃぁん、だめだよぉ、いい子にしないとぉ。さあ、かわいいお洋服にお着替えしようねぇー。そうだ、おむつも当ててあげようねぇー。ぐへへ・・・。」
うわぁーっ、三宅さん、本物の変態だったんだっ!。
いつもの無害なロリコンさんだと思ってほいほいついて来てしまった自分のうかつさを、私は心の底から悔やんだ。
「み、三宅さんっ、大人だろうが、子供だろうが、違法な事は違法・・・もががぁっ・・・」
「し、静かにしようねぇ、ナノちゃん。」
そう言って、三宅さんが、わたしの口を押さえる、って、三宅さんの手おっきいっ!。
私は口どころか鼻まで押さえられてしまい、息が出来なくて、必死で三宅さんの手から逃れようともがく。
でも、三宅さんの力は強くて、ちっちゃな私の力では逃れられなかった。
酸欠で薄れ行く意識の中で、私のこれまでの人生が走馬灯のようによみがえって行った・・・
私の名前は、中野美理子(なかの、みりこ)。
25歳、女性。研究職の会社員でーす。
幼稚園の頃までは、みんなと同じくらいの背だったんだけど、なぜか小学生の頃からあまり背が伸びなくなってしまった。
そのせいでついたあだ名が、『ミリちゃん』。
みんなは「『みりこ』の『こ』の字を取っただけ」なんて言っていたけど、絶対、算数で習ったばかりの『ミリ』から付けてたんだと思う。
そして数年がたち、普通の女の子なら胸がふくらむ年頃になっても、私の胸はぺったんこで、幼児体型のままだった。
顔も童顔で、中学の頃は『ロリちゃん』なんて呼ぶ連中もいた。
思春期特有の潔癖な女子達から「ミリちゃんは、永遠に清らかな子供のままの天使なのよ!。」と言われて可愛がられたりした。
一方で、そんな女子達から汚いもののように見られて傷ついた口下手な男子達とも普通に話していた。
そうしたら、「ミリちゃんは癒しの女神様だ!。」と影で噂されたりしてて。
まあ、そんなわけで中学時代は、ちょっと不本意ながらもおおむね可愛がられて過ごしたのだった。
中学を卒業した後は、理科とか科学とかが好きだったので、高専(高等専門学校)という5年制の工業系の学校の物質工学科に入った。
あいも変わらずのちっちゃい体と童顔で、『ミリちゃん』のあだ名は健在だった。
この学校では、女性の割合が少ない事もあってそれなりにモテたけど、まあおおむね近寄って来るのはロリコンな男子ばかりで、奥手なそういう男子達とは恋愛関係に進む事もなかった。
上級生のお姉様な女子には、それなりに迫られた事もあったけれど(笑)。
高専を卒業した後は、国立大学に編入して、ナノテクノロジー関係を専攻して、院まで進んで、専攻が生かせそうな会社に就職した。
その会社の面接で、
「中野美理子さん、ナノテクノロジーを専攻と。ナノちゃんだね。」
と言ってクスッと笑った面接菅の顔は忘れられない。
その面接官が、配属先の上司で、そのまま『ナノちゃん』が私の新しいあだ名になった。
ミリからナノだから、10のマイナス6乗ほどグレードアップしてしまった!事になる(笑)。
上司は、一応「『なかの』の『か』の字を略した」と言ってたけれど。
『ちっちゃい体で大きなパワー!』とか言って、会社のPRビデオなんかにも出演したりしながら、みんなに可愛がられて楽しく研究生活を続けていた。
そして、昨日、同僚の三宅さんが「きれいなガラス細工を作ったんだけど見に来ない?。」と言って誘って来た。
三宅さんは、その大きな体にもかかわらず手先が器用で、ガラス細工がうまくて、研究に使うガラス装置なんかも作ってくれていた。
同じ学校の出身者と言う事もあって、それなりに親しかったので、何の警戒もせずに自宅に来て、・・・冒頭に戻る。
激しく打っていた心臓の鼓動が弱くなって来た。
意識がさらに薄れていく。
私、このまましんじゃうのかな。
やだぁー!、誰か助けてぇーっ!!!
若い身空で、エッチも出来ずにしんじゃうなんて。
なぜか会社の巨乳コンビの顔が浮かぶ。
ううっ、受付の谷間さんや、営業の山田さんみたいに巨乳だったら、こんな変態の手にかかる事もなく、エッチも出来たのかな?。
ああ、エッチは無理でも、せめて一度くらい、きょにゅうになりたかった・・・
・・・・・