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「あれ?」
どうやら本当に帰ってしまったようだ。ヒントって何がヒントなのかさっぱりわからなかった。
「口の中痛いし……」
何故かひとかけ齧られたりんご飴を見つめ、考えるも全く思い出せない。
「ヒントになってないと思うんだけど」
こうなったら神頼みでもしよう。ちょうど神社にいるのだ。
すっかり廃れてしまったお賽銭箱に小銭を投げてお願い事をする。
浴衣の子が誰だか思い出せますように。
「明日にでも思い出してるといいな」
りんご飴を舐めながら、拝殿の周りをぐるりと回ってみる。
「お、ここにも座れそうな石があるじゃん。懐かしいなぁ。昔はよくここでお祭りの日に1人でいたっけ?」
砂をほろって座り、岩肌をそっとなぞる。
別にいじめられていたとかいうわけじゃないが、何故かこの場所がお気に入りだったのだ。
忘れていたとはいえ、ここも無くなってしまうと思うとやるせない。
食べ終えたりんご飴の棒を、石の横に置かれた、苔の生えた木の棒が散乱しているところへ静かに突き刺した。
秋の夜風に身を晒しながら暫くの間、昔を懐かしむ。思い出までダムの底に沈んでしまわぬ様に。