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「ねぇ」
「ん……。英祐君の意地悪。」
「本当に誰なのか思い出せないんだけど、何処であったの? いつ頃?」
こちらの質問に答えずにチョコバナナを食べる音だけが響く。
漸く食べ終わって、こちらにむけて言葉を発する。
「えー。覚えてないの? ショック。ここ……」
ここ……?
「いつ?」
「ま、いっか! 今日楽しかった〜。ありがとね」
「え、ちょっと⁉︎」
「よく考えたらもう英祐君も帰っちゃうし、会う機会なさそうだもんね。なら別にいいんじゃないかなぁ」
「余計に気になるでしょ」
「分かるまでずっとモヤモヤしてればいいんだ〜」
思い出せない仕返しだろうか?
それにしては酷すぎる……。こっちが悪いのかもしれないけどそこは素直に教えてくれてもいいんじゃないか。
「私もう帰らなきゃ」
「あ、ちょっと! せめてヒントを!」
こんなんじゃモヤモヤして寝れそうにない。
どうにかして思い出さないと……。
「ん〜。じゃあ、目瞑って?」
「うん」
言われるがままに目を閉じる。
すると隣でカリっと、音がして声が続く。
「口を開けて?」
閉じたり開けたら忙しい。
「ヒントねー。出血大サービス」
開けた口に何かを突っ込まれる。
硬くて痛く、とても甘い。出血大サービスの出血って物理的なの? これもただの腹いせじゃ……。
「はいっ、ヒントおわりー。それじゃあね、英祐君。最期に会えて良かった」
ばいばい。と耳元で囁いて。
目を開けて、口の中に入れられたりんご飴を取り出して辺りを見回す。