趣味じゃなくて、仮装させられてるだけですから
わしらの声に何事かと駆けつけた大男と大女がすぐさま状況を認識し、目の前の川で汚した下半身を洗ってもらうことになった。だって体は弛緩して言うこと聞かないし、止めどなく涙が出て嗚咽してしまうし。
いい大人が屈辱である。
さすがにわしらのようなナイスバディが着られる服など持ち合わせているはずもなく、ポン○とナナ○という名の二人組のリュックへ潜り込み活動拠点へ運んでもらうことになった。
百キロを軽く越えるわしをいとも簡単に持ち上げるとかどんだけ怪力なんだか。ぶるっとちびりそうになったぞ。
拠点は住居兼店舗の一軒家で扱っている商品を尋ねると、子供にはまだ早いと言われた。わしをガキ扱いすんじゃねえよ、いい年したオッサンだぞ。
まず浴室で体と頭を洗ってもらう。ヨキニハカラエだ。自分でも出来るがどれがシャンプーでリンスなのかさっぱりだからな。
だけど似合う似合うと言われて、ついドロワーズとスモックを着せられて幼稚園児みたいになったじゃないかっ。
隣を見るとエロフさんも着替えていて、体型に似合ってウプだぜ。わしは仮装だがな。知り合いにばったり出会うとかすれば、どおいい訳・・・・まぁ会わないか。
この時、姿見とかで自分自身を見ていたら、ほんの少し未来が変わっていたかもしれない。φ(..)メモメモメモ
どうやらこの世界では、背が低くいと言うだけで子供に見えるようだ。さらにデブって居る体型がよけいにそうさせているのだろう。うむ、ムリやりだがそうにちがいない。
「ちょっとまっててね」と言われテーブルと椅子のある部屋へ移され、椅子の上に載せられるとなにやら大きなコップにフルーツの香りのする得体の知れない液体が入っている。
「飲んでいいわよ。どうぞ」
コップを近づけてくれたが、これまたデカいストローが添えられている。
毒かもしれないが、腹も減っているしプチ自暴自棄になっていて、一瞬の躊躇ののちストローを咥える。
!
粘度がスゴイ。吸い込もうとしたが、これはキツイ。息を思いっきり吐き出しても一度吸飲。顔が熱くなってきている。こりゃ脳の血管がぶち切れそうだ。
えーい、まどろっこしい。
ストローで吸うのはあきらめてコップを直に両手でホールドして傾けた。
コップの縁と口の大きさとの相性は良くないが、断然こっちが飲みやすい。
想像通りの濃厚果実汁である。おっさんでもこれは嬉しい。なにしろ空きっ腹だからな。
あっいけね、傾けすぎたのか頬にヒゲが出来てこぼれそうだ。少し傾きを調整。気づくの遅かったか少しこぼれて手についた。ぬるっとして不快だ。滑らないように力をもすこし込めてっと。
うーん、腕がぷるぷるしてきた。限界が近くなっていて事故を起こすと大変だ。
一度中断するのがベストだ。大人だからヤメドキというものを分別・・・・ダメだ。口が離せない。
ガタン!
やっちまった。コップを倒してしまった。
倒れたコップはテーブルを汚し、端からこぼれた液体がわしのスモックを汚していく。
どこか近くで子供が泣いている。辺りを見回すと大男と大女が各々何かを取りに行き、残されたエロフはこっをみて笑ってやがる。
泣き声の主は、σ(・_・)?
大男は風呂場の準備して洗濯物の籠、大女はテーブルを拭く。大男の手により浴室リターン。詳細は言わない傷心のわし。息子をどこかへ紛失してから調子が出ない。
そうだ探しに行こう。
ここの環境で自分という存在をカモフラージュするガキの仮装は完璧なのだろうか分からぬが格好はコレデイイダロウ。
大男と大女の二人が店舗へ行った。間をおいてそっと開けるとパートの兄ちゃんもが接客中だ。
日を浴びた店舗の向こうが輝いてるぜ。
今がチャーンス。
脳内に流れる大脱走のテーマ。
なんかの陳列棚を背に、交差する通路を匍匐して、わしは日の当たる屋外へと脱出した。
やったぜー。
例えようもない満足感とは逆に露出した肌を焼く痛みがわしの意識を刈り取った。
ベッドの上で気がついた。
顔がまだ熱いが意識ははっきりしている。
後で聞くことになるが外に出てすぐに倒れたわしをエロフが担いで運んでくれたそうだ。ただのデブにしてはどんだけ力持ちだよ。おそるべしエロフ。いやここの世界の生物か。
上体を起こし辺りを見ると、大きなベッドに寝かされていて、同じベッドにあのエロフが寝息を立てている。
窓の外から見える光でもう日は沈んだようだ。見つけた椅子を引っ張って窓に近寄りよじ登って外を見れば、月も出て灯りの点る民家がシルエットになってとても
綺麗だ。窓を開けると夜風も心地よい。おっと寝ているエロフに悪いからはやめに閉めないとな。でもあとちょっとだけ。
それにしても夜なのによく見える。空気が汚れていないんだろう。
月下の夜空もキラキラして翼があれば飛びたい気分だ。
夜空を飛び回る夢を見た、朝。
ポン○とナナ○を捜して迷惑を掛けたことを素直に謝罪した。大人の対応ってやつな。
だからオネショしたことも隠していませんから。
あっそうそう、ポン○とナナ○って夫婦じゃ無かった。趣味で繋がった同志?
コアな設定は理解できません。
精神的にも環境の変化に弱くなっているんだ。まさか太陽アレルギーに体質が変わっているとはショックだったしな。
意気消沈したわしはあてがわれた部屋の中で窓越しに外を見るだけにした。
いや、タイプじゃないとはいえ怪力エロフと同室だぞ。
どこで無くしたか息子が手元にないだけのわしは男だ。男女が一つの部屋で生活するなんて、魔が差して手を付けてしまいたくないんだ。わしは人妻しか認めん。まぁ喪服姿の若妻のほうだが。
ナナ○が昼頃になってフードのついた外套と手袋を持ってきてくれた。
装備するわし。
おそるおそる手袋をした手を日の下に。おーいける。
フードを深くかぶって全身を白日の下に晒すと、地面からの照り返しがちょっといやな感じがするぐらいで、えーやないか、えーやないか。
店舗の入り口に振り返り、心配そうに見つめるエロフとポン○とナナ○、ついでにパートの兄ちゃんと姉ちゃんにサムズアップ。
読んでいただけて感謝します。
・わしとワシ
[8] Me ミィ 金髪碧眼の耳長族。陽光の下では力が増加など。
[9] We ウィ 銀髪紅眼の耳長族。アルビノ。陽光の下では力が減少など。まず肌が赤くなって傷み出す。