知りたくなかった
脱力である。
話し相手が居て、ついつい依存していた自分を認識した。
たった一人である。
"ぼっぢゃないぞー"と言いたいところだが、何だこの目から溢れる汗は。
近くにコンビニがないか検索・・・・・・もできないし、そもそもお金がない。
俯せのまま現状認識とか考えることだけは続けた。
"謎の声"とのやりとり中は余裕は無かったが、落ち着いて周囲に気持ちを向けると野鳥とか葉のこすれる音、そして潺の音が届く。
うーん、のどかだ。虫も居ないし昼寝にはいいな。
衣食住を何とかしなければっう気持ちはあるが、わしぐうたらである。このまま眠ってから考えよう。眠って起きたら「あー、夢だったか」ってなるかもしれない。
寝た。
肩をつつかれる感触にゆっくりと瞼を開けると変わらぬ雑木林の風景だ。
ああ残念と思う心と、それなら異世界を満喫してやろうじゃないかとワクワクしている感覚が入り交じる。
その前に、わしの肩を気安くつつくのはどこのドイツじゃい。
首をつつかれた方向に向ける、と?
あれ、わしどっち向いた。左右どちらにも向いたような違和感と、目に映る人影が男と女が重なって見える。
こりゃあまだ焼酎が抜けてねぇな。人からもらった"大魔神"て銘柄のを牛乳で割ったりコーラで割ったりと冒険して量が越えてたんだな。
目に入る情報が悪いのか、たぶん幻が見えている。頭痛がしてきた。
『混乱状態確認、"一括同調処理"から"併行分割処理"へとモードを切り替えます』
ほへ? "謎の声"とはちゃう機械的な合成音声が頭の中に響いた。
程なく頭痛が治まり、大きな男の姿がはっきりと見えるようになった。
それはそれとして、さっきの声ってナニ?
『申し遅れました、統括コーディネーターからサポートを引き継ぎます。そしてそちらの方々が当面の生活を提供して下さいますので、ご挨拶をお願いします』
「「ども」」
ハモらない声が出た。
ん? 上体を起こしてわしは自分の声が高くなっていたのとは別に、もう一つの高い声が聞こえた方向を観る。
おデブな全裸の人物が居る。
わしは自分のことは棚に上げることが出来る、優秀なデブである。
金髪碧眼のガイジンさんだ。耳が横に張り出している。全裸エルフのデブコスプレーヤーか?
あっちはこっちをガン見している。思わず立っていたので・・・ジュニアでなく本来の意味な。あっちの股間をチラ見すると、スジだ。パイパンだ。リンリンランランだ。あっ違った。あっちはエロフだ。
相手のを見た以上、わしは等価交換だと堂々と肩幅に足を開き、自慢の息子が見えるようにした。
ほほう、あっちも堂々として見せるではないか。ふふふっ、タイプじゃないが志は買ってやろう。
自分じゃ腹が邪魔でここ数年、観たことがないがな、わははははは。
しかしあっちの背後にいる、でかい女とこっちの背後にいるでかい男が不気味だ。
"協力者"とか言ってたがどうゆう協力者なのか、分かったもんじゃないし。
えと、いっぱいいっぱいで言い忘れそうだったが男と女のでかい意味が、横にもでかいというのととても背が高いと異なるのだよ。
ちょっとちびりかけた。
ばくばくの心臓をよそに、急遽要望を告げた。
「「とりあえず小用を済ませたい」」とな。
おおっ気が合うな。
他意もなくやってきた方向に視線を向けると、足跡とか踏みつけていた後とかから二人が平行に移動してきていたことが伺えた。なるほど、被召喚者はわしだけでなかったんだ。だから'達'がついてたんだな。
わしらは各々に距離をとり聞こえていた潺の下へと急いだ。漏らすとしゃれになんないからな。
召喚場所からここまでくるときもそうだったが、100kgを越えるわしが駆け足をしているのに"ドスンドスン"じゃなく"てちてち"な感触はなぜだろう。さっき出会った大男と大女との比較から感覚が混乱してんのだろうと。
思っていたのよりも大きな小川に到着した。
辺りに視線がないかを気にして周囲を伺ったが、遠目にエロフ女が見え隠れするぐらいだ。
ほーっと脱力して、片手をジュニアに添えようとしたが、スカッと空振りをした。
自覚がないが緊張して縮こまってしまっていたようだ。
先ほどは自慢げに、"どやっ"とやったのが・・・・ハズい。
しかし膀胱の限界が来ていたようだ。迸る黄金水。
なんか真下に出て足が濡れ始めた。縮こまりすぎて皮が邪魔してあらぬ方向に出てやがるようだ。火星だがどうかしたか。
はやく引き籠もりの愚息を外へ羽ばたかせてやらねば。まさぐるわし。
つ! 突然の電撃にちかい衝撃が体に走る。
「「なんじゃこりゃー」」わしの発する声とシンクロしてエロフからも上がった。
息子をどこかに落としてきていたようだ。
読んでいただけて感謝します。
本人たちは幼児になったことに気づいていません。そして子供の視野は狭いというのをネタにしてみました。
他のエピソードを準備するため、しばらく休みます。