第6話 アガディール攻略戦
今回長文になっています。
第6話 アガディール攻略戦
85年2月8日
カサブランカ作戦が開始してから丁度1週間が経った時、軍部は大慌てだった。なんせ軍がアンティ・アトラス山脈を超えてアガディールに侵攻した時。
その谷のような地形の底に陣取るように敵の新型のレーザー兵器を搭載した陸上要塞兵器サイクロプス級1体が行く手を阻む。
海軍の援軍も飛行艦艇も無闇に呼べず本隊も突っ込ます訳にもいかないと大きな行動を起こせずにいのだが。その日輸送機で多くの武装が第1独立航空隊に届けられた。
“航空機携帯型対要塞弾発射機構エクスカリバー”連合軍で共同開発された航空機で要塞に立ち向かうための刃.....
同日 最前線 仮設航空基地の中の一室
ここで第1独立航空隊第1から5小隊までが集められて今後行われる作戦について大隊長であるルドルフ・シンテルマイサー中佐が説明を始めた。
「これから今回の作戦の説明を始める。最初に言っとくが今回の作戦は至難を極める死を覚悟して挑むように。」
から始まった、作戦説明は今までの無茶とかではなく無謀に近しいものがあった。その内容というのが.....
〜作戦内容〜
作戦の概要
一段階:全5小隊のうち3小隊第1中隊として周辺のレーダー施設及び対空兵力の破壊を行い帝国軍の空の目を封じる。
二段階:残りの2小隊が第2中隊を担い今しがた届いとブツ“対要塞砲エクスカリバー”(装弾数1発)を装備した機体で装甲貫通可能距離まで近づき要塞の弱点である弾薬庫部を狙い破壊する。
三段階:第2中隊が要塞破壊を確認後第一中隊は基地別航空隊と共同でアガディールの制空権を確保する。
これが今作戦の内容.....『無茶言うな!』と頻りに思う。だが無常にも作戦説明が終わると部隊の割り当てがルドルフ大隊長より発表された。
「それで、各部隊の役職だが。第1小隊から第3小隊が第1中隊。残りの4小隊、そして私が率いる5小隊が第2中隊の役についてもらう。」
まさかよりにもよって一番の鬼門である第2中隊を任されるとわ夢にも思わず一瞬思考が停止しかけた。その最中にも話しは進み最後の隊長は最後の一言を話し始めた。
「最後に私はお前たちに言っておきたい、色々と文句もあるかもしれないが今は聞かない。パイロットは実績で語れ!言い訳聞かない!作戦開始は1時間後、しっかりと備えておけ!以上だ。」
そう言い放つと一同が一斉に席を立ち総隊長に向かい敬礼をして全員がその場を離れ各自各々の機体の元へと向かった。
自分の機体を見に来ると作戦参加に伴って要塞砲が機体下部へと取り付け作業が始まっていた。私は機体の性能低下が如何なものかと気になりハナードに聞いてみたが「無茶な機動しなきゃ大丈夫だ。」の一点張りだった。
性能低下の疑問を抱きながらも機体の調子も体の調子も万全なのを確認して、作戦開始の時間を迎えた。私、シドラド、リーアルは機体に乗り込むと互いに通信を取り合い始める。
「なあ、リーアルにウォント、オメェら今回の作戦どう思う?」
「シドラド?どうしたお前らしくもない。」
と私が聞き返すとリーアルも聞き返した
「体調でも悪いのか?お前、今回の作戦無理しない方がいいぞ....」
シドラドはそれを聞くなり少し焦り気味に答えた
「え....俺なんかお前らを心配させるようなこと言ったっけか?」
私とリーアルの二人は冷や汗かいているシドラドへフォローにならないフォローを入れる
「お前こういう作戦前って『ヒャッハー、俺が要塞なんか壊してやんよー!』って調子乗ってると思ったんだけど。」
と私が
「もっとバカなことを言うのかと思った。」
とリーアルが言うと
「はぁ?おめぇら俺を緊張を楽しむ変人とでも思ってんのか!?」
強く私たち二人にシドラドは言い返す。なんだと思ってると問われた私たち二人は顔を見合わせて
「控えめに言ってボンクラで能天気.....」
と私が言い
「空気読めないクズ野郎?」
とリーアルは言い放ったところ少し間を空けてシドラドは答えた。
「うぅっ、オメェら俺をなんだと思ってんだよ....俺だった弱音くらい吐くさ。」
「あーシドラド?悪かったな....リーアルもなんか言ってやって。」
「シド....なんか悪かったな、だがな今回は誰もそんな弱音聞いてる暇ないんだ。みんなそう思ってるのを我慢してるんだ、兎に角気張れ。」
「.....そうだな、悪かったな二人とも。今回の作戦しっかりこなそうぜ!」
そして間も無く作戦は始まる。
作戦開始 アトラス付近の連合軍制空権内
作戦の経過は順調だった30分もしないうちに敵のレーダー及び対空砲の破壊に成功した。味方機である第1中隊の隊員たちは作戦空域から続々と離脱し、上空待機していた私たちに吉報の通信を入る。
第1中隊の全機体が離脱したことを確認すると第2中隊にルドルフ大隊長から突入命令が言い渡される。
するとライド隊長からも順次突入の合図が掛かり中隊全機が一同に大西洋に出て海面ギリギリを飛行させ機体をアガディールに陣取る機首サイクロプスへと向ける。
その姿は東洋の島国“大和皇国”にあると言われる“城”と海軍の戦艦を足して二で割った様な出で立ちだ。
機体は水柱を立てながら“巨人”へと向かって行く。最中に海上に展開し始めた小型艇の射撃を喰い白煙を上げ始める機体もいたが構わず突っ込んだ。
着実に機体があの巨人へと距離が近づくと壊し切れなかった直近の対空砲から弾幕が張られ空を彩った。水面を舞う10機の機体群は左へ右へ回避していく、その中で飛来してきた砲弾が私の機体を掠め、他の機体を火だるまへと変えていく。
近くを飛んでいた3機の機体が海面に消えて行く中で私の機体のコクピットのディスプレイには“Fuel leakage(燃料漏れ)”と赤い文字が点滅していたが、目標とそう距離がない為完全に無視した。
残り距離が1kmを切るとディスプレイの上部にある照準器に射撃ポイントを示すマークが点灯し始めた。
この時点で大隊長から通信が入る
「全機散開!敵の懐に滑り込め!」
そう声がかかると固まって飛んでいた機体群は散らばり各々が巨人の懐を目指した。
『目標まであと600..5..4.....ここだ!このタイミングで。』
次の瞬間、私の機体そして他の機体から計7つの弾頭が巨人の体に吸い込まれて行った。ドンドンと大きな音を立て爆発音が聞こえてくると数秒の間だった、私たちの機体が制空権を目指し山脈を登り始めようとした時、大爆発を起こし大きなキノコ雲を浮かび上げた。
私たちはこの後追っ手の心配もなく基地へと戻ると先に作戦を終了し待機していた第1中隊の面々が各々の機体を準備して滑走路で待機していた。第2中隊の機体が着陸し切ると無線で「第2中隊の皆さんお疲れ様でした。後の処理は俺らに任せてください!」と聞こえてきた。
私たちの作戦は無事成功したらしい。私はコックピットでホッとしていると香ばしい匂いに周囲のサイレンの音、そしてハワードが大きな声で
「少尉!!何やってる早くコックピットから出ろ!丸焼きになっちまうぞ!」
と叫ぶ声が聞こえて来た。キョロキョロと周囲を確認すると右側に被弾後から漏れていた燃料がなんらかの拍子に引火して燃えていた。
俺は急いでコックピットを開けて機体の左側に飛び降り待機していたハワードの元まで思い切り走った。
「おいおい、少尉まさか燃えてたの気づいてなかったのか?」
息を切らしながら私は答える
「ハァハァ、イヤーなんか香ばしい匂いはしてたんだ。まさか燃えてるとは。」
「ご無事で何よりだよ。お疲れさん、あとはこっちでやっとくからあんたは始末書書くなり休むなりしな。」
「あっ、頼みます。」
こうして一体の巨人との戦いは幕を閉じアガディールは解放されたのだった。
第6話 アガディール攻略戦 終
兵器紹介のコーナー(今回から)
・戦闘機LadF-2
ウォントたちが乗っている機体でリードシエル共和国内の企業(リードシエル航空機設計社)で作られた機体。
古くなっていたLadF-1を置き換える形で配備が進められていたが、御察しの通りの性能であまり使い物になっていない模様。
新型機の製造も始まっているとかなんとか。
・航空機携帯型対要塞弾発射機構エクスカリバー
リードシエル共和国内の兵器開発社で開発されたもレールガンタイプの兵器で大要塞兵器用弾とともに使用される兵器である。だが一発しか装填できずLadF-2の使用上では再発射をすることができず一度基地に戻る必要がある(要するにただのデッドウェイトと化す)。
だが、その威力はお墨付きで要塞用弾頭FAPHEを使用すると戦艦よりも装甲の厚い貫通し破壊することが可能になっている。
・陸上要塞兵器サイクロプス
帝国軍で造られた陸海上拠点防衛要塞兵器で要所に配置されており文中でっもあったとおり「東洋の島国“大和皇国”にあると言われる“城”と海軍の戦艦を足して二で割った様な出で立ち」でサイズ的には300m以上の大型戦艦に部類されるサイズ間で、武装は50cm連装主砲4基と多数の副砲、そして対空砲をハリネズミの如く配置されている。
要塞兵器はデータリンクそして全自動で稼動しているため運用人数は少ないてすむようだ。