第2話 防空戦闘
鳴り響いた警報音を聞いて慌てながら出撃の準備を進めていると、ハンガーにやってきた隊長と副隊長に集められる。そして手短に現在の状況と作戦がロイヤー隊長から伝えられた。
「状況を説明する。数十分前に最前線に設けていた我が軍の基地が帝国軍爆撃隊から爆撃を受けたとの報告、そしてその爆撃隊がこのサン=ルイ基地に向かってきていると言う情報も得た。今回の我々の任務は“他の小隊と協力して敵爆撃隊を迎撃し撃退せよ。”とのことだ。」
そう言い切るとロイヤー隊長に変わってロード副隊長が話し始める。
「キリアン少尉、トカイ少尉、フローゼン少尉、3人は今回が初陣だ危ないと思ったら逃げろ。自分に余裕があっても深追いはするな。空では自分の力だけが頼りだ、気を引き締めろ!」
訓示を終えたロード副隊長と入れ替わる様にロイヤー隊長が出てきて最終確認を始める。
「もう一度今回の任務の確認だ。主な任務は敵爆撃隊の撃退だ無茶な追撃は避け任務の遂行と生還を優先して行動しろ!それと作戦内でのコールサインは“ストライカー”になる。私を1として、ソメリアが2、キリアン少尉、トカイ少尉並びにフローゼン少尉を3、4、5とする。以上だ。」
そしてメンバーを見渡したロイヤー隊長は最後に「解散」と号令を掛けられ、パイロットは各機体に乗り込み次々と蒼く無限に広がる大空へと吸い込まれて行った。
〜迎撃ポイント〜
飛び立って数分が経つと先行していた部隊が戦闘を始め色取り取りの曳光弾の光空を彩ったのが見えた。すると、別方面からやってくる爆撃機隊ロード副隊長が捉えた。
「こちらストライカー2正面の爆撃隊以外の機影を9時の方向に複数確認。」
それを聞いたロイヤー隊長が冷静に対応する。
「こちらストライカー1、視認した。全ストライカー隊員は各個に迎撃、敵を通すな。」
そうライド隊長が言い切るとメンバーは別々に計12機の爆撃機(4機)や護衛の戦闘機(8機)に向かって行った。
ライド隊長にロード副隊長はてこずること無く一機また一機と敵を堕としていく。
その中で私は二機の護衛を相手にすることになるり機首の機関砲で攻撃を行う。銃身から飛び出した無数の弾丸は狙っていた機体に飛んで行き命中...しなかった。
機体を狙っていたはずなのに弾丸が全て大きく右にズレて飛んで行くのだ。これには、思わず「はぁ!?」とコクピットの中で叫んでしまった。
そんな中、前方の二機は射撃を回避し別々の方向に散らばって行った。敵に構っていないとならないのに“俺”は真っ直ぐ飛んでいかない弾丸の対処に追われていた。
「どうして撃った途端に弾丸が右にズレるんだ?まさか、銃身が曲がってるんじゃ...考えるのは後だ、今はできることをしよう。まずは自動照準機が影響を及ぼしているかもしれない。これをカット。他には....」
こうして知ることを全て試した。俺は全力で散らばった敵の一機の後ろに取り付き射撃を敢行する、のだがやはり右にズレる。
確かに自動照準を使っていた時よりかはマシ....いやもっと悪化している。打開策を考えるが、そうしている間にも、もう一機の敵機が下方から突き上げてくる。
俺は機体を下方からくる敵の方へ機首を向けて弾道のズレを予想して機体の位置を調整しながら、ヘッドオンの形に持ち込む。
そして射程距離に入ると即座に射撃を始める。ズレを考えた機体運びのお陰でほとんどの弾丸が命中し敵機は火だるまになって爆散していった。
残る一機は高速で上方から降下してきた。俺はその敵の射撃を上手く躱し高度優位を取りつつ相手の後ろに滑り込み射撃し、苦戦しながらも撃墜した。
軽く安堵した“私”は冷静に周囲をレーダーと目視で確認する。気付くとシドラドの機体が近づいてきて無線で話しかけてきた。
「おお、ウォント生きてたか!」
軽く煽っているとも思えるこの一言に少し頭に来たが、怒鳴ってやろうと声が口から出掛けたが口論してたら撃墜されたなんてことは避けたいと心の奥に押さえつけ皮肉を言った。
「おう、生きてたさ。弾が真っ直ぐ飛ばない機体で。」
これを聞いたシドラドは困惑したようで数秒返事がなかった。シドラドが何か発しようとしたその時のことだった。敵機接近の警告音が鳴った。新手の二機が後方から接近して来ていた、するとシドラドが冷静な対応をしてきた。
「パターンAで行く、いいな?」
と聞いて来た。(Aパターンとは、訓練生時代の一撃離脱主体の編隊行動のこと。)迷うことなく「わかった。」の一言で返す。
機体をシドラドの機と共に上昇させると敵の二機も釣られて追いかけて来る。乗機のLadF-2は敵機よりも上昇速度には分があるようで徐々に距離を離して行く。
機を見計らってシドラドが機体を思い切り減速させて反転、降下を行い、敵の一機に手傷を負わせた、その勢いでシドラドは降下していくと敵は二機とも上昇するのを諦めシドラドの方へ向かって行く。
そして降下して行った二機の敵機体と十分な距離を取ると自分の機体を反転しそれを追った。反転してからシドラドを発見すると低空で飛行して、なんとか敵の攻撃をかわしながらも無線越しに騒いでいるシドラドの機影が確認できた。
「あー!ウォントまだか!」
これに私は焦りながらも応えた。
「当たっても恨むなよ。」
そう言い放つとシドラドを先頭に三機並んで飛んでいる中の最後尾の手傷を負った敵機に狙いを定め射撃を行う。弾丸は思い通りに敵機に向かって行き、着弾し敵機ごと爆散した。
すると敵の行動が乱れてシドラドに動く隙ができた。もちろんその隙を見逃すことなくシドラドは機体を旋回させ攻撃を加え最後の一機撃墜した。
敵の反応がなくなり武器の弾数の確認をしているとシドラドから通信が入った。
「お〜いウォント、敵見えるか?」
そう聞かれ、視界、レーダーを隈なく見回したが敵の反応は無いと伝えた。
それを聞いてシドラドは落ち着いたのか深いため息を無線越しで吐く。しばらく飛んでいると、ロイヤー隊長から全機に向けて無線が入った。
「ストライカー1から各機へ。現空域からの敵を撃退に成功、基地に被害もない。各自帰投せよ。以上」
この時の私は安心や疲れなど一切感じずに機関砲の問題をふと思い出し疑問を浮かべていたのだった。
第2話 防空戦闘 終わり
追記
ウォントにシドラドが必死こいて護衛の二機を相手している間にソメリアはほかの3機の護衛を撃墜し隊長と副隊長は先に飛来した5機の爆撃機を迎撃して落としたようです。