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狂言誘拐  作者: たか
7/9

身代金完了

「いらっしゃいませぇ〜」

バックに金を詰め、全速力でなんとか指定された喫茶店に到着した。時計を見ると、なんとか一時間以内に行く事が出来た。それを確認し、香久耶は心臓に手を触れ、深呼吸をした。そして息を呑み、喫茶店の中に入ると、店員の女性の呑気な声が今の状況を煽っているようにしか見えなかった。

「すいません……。ただ今満席でして、こちらにお名前を記入してもらってもよろしいでしょうか?」

と、女性は記入帳を渡し、ボールペンの芯を出す。それを受け取るとミナミノとカタカナで名前を書いた。

「おや? ミナミノ……南野……香久耶様でしょうか?」

「え? ああ……はい」

名前を呼ばれ、少し焦った。

「あのぅ……。御予約を承っておりますが……?」

「は?」

「こちらです」

女性が指差すと、たしかに御予約席と名札が置かれてあった。そのまま流れに身を任し、香久耶は席に座った。

「ご注文は?」

水を出すと営業スマイルをしている女性に聞かれた。

今は何も注文する気にはならないのだが、何も注文しなければ怪しまれてしまう。香久耶はアイスティーを注文した。と、その時。

香久耶の足元が突然振動した。

初めは地震かと錯覚したが、机の下からバイブ音が聞こえた。誰かの忘れ物だろうかと拾い、通話相手を見てみると相手は柴田恵里奈と表記されていた。

「恵里奈⁉︎ 恵里奈なの?」

『私です。さて、ではそのアイスティーを飲み終えたら早速そこから少し歩いた先にある児童公園の女子トイレ前まで来てください。あ、そのスマホは失くさないように』

こちらのリアクションを無視して一方的に話し終えられた。アイスティーを飲み干し、料金を払うと再び五千万を持ち地獄のランニングが始まった。指示通りトイレの前に着くと、そこには黒色のリュックサックが落ちていた。いや、置かれていたという表現の方が正しいか。

その時、ポケットに入れていたスマホが再び震えた。相手はもちろん犯人からだった。

『駆け引きなしに一人で行動しているようですね。偉いです。では、次の指示です。そのリュックサックに五千万を入れ替えてもらいたい。入れ替えた後は今金を入れているカバンをリュックサックを置いていたところに置いといてください。その後、その先にある宝石店に入ってください。詳しいことは後ほど』

慌ててカバンに入れた金を詰め替え、そのカバンをトイレの前に置くと再び走る。恐らくカバンに入れ替えさせたのは細工してある事を見越しての事だろう。

恵里奈は絶対に私が助ける。

心に決め、香久耶は走る。

宝石店に着いた。今までのパターンから考えるにそろそろ……。

やはりスマホが鳴った。

『お疲れ様です。では、ここで五千万のダイヤを購入してください。そしたらそれをこの先の小川に置いてあるコーヒー牛乳のビンに入れ、栓をして流してください。どうやらこちらの指示通り警察を呼ばなかったようですね。あなたが変な駆け引きをしない限りお嬢さんは丁重にお返しいたします』

やっぱり……。ヤツは私の事を監視している。

そう確信し、香久耶は周囲をそれとなく見るが怪しい人物は見当たらなかった。

だが、今までのタイミングは全て完璧なタイミングだった。監視しているとしか思えない。

宝石を舐めるように見ていると、確かに五千万で買える宝石はあった。それを手に取り、レジに持って行った。

「お客様……。あなたが……」

店員は香久耶の顔を見ると驚いたような表情を見せた。しかしその顔はすぐに柔和な表情に戻る。

「では、五千万円ですね。クレジットでしょうか?」

「現金で」

と、香久耶はリュックを開けバサバサと札束を落とす。慌てながら店員はそれを拾った。

「ありがとうございます。こちらですね」

店員は机の下から商品のダイヤを出した。

机の下から……?

店員の不自然な行動に香久耶は若干の違和感を覚えた。それに金をきちんと確認しないというのもおかしい事だ。だがそんな疑問は先ほどの司令を思い出しすぐに吹き飛んだ。このダイヤを川に流さなければならなかったのだった。そして香久耶は小川を探し、宝石店を後にした。

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