悲哀・・・当惑・・・混乱の
「リリア!」
そう叫んだ青年の瞳には叡智が宿り、悲哀が宿り、決意が宿り・・・
先には、一人の妖精が木の根に座り、こちらをみていた。
「ルーディア。全部思い出した?」
「いや、君が流し込んだ記憶だけだ。あとはまだ霞みがかったようにしか・・・。でも一つだけ確かなのは・・・僕は妖精王ルーディア=エル=カークスだ。」
「そう。あなたは妖精王。ずっと昔から世界樹とともに世界を見守ってきた」
「でも僕の体は今は人間だ。・・・・・・転生してしまったのか?」
ルーディアはふっと笑う。
「今のあなたは妖精よ。」
「え?」
透明の羽が背中に生えている。
手の色も、肌の感触も。
これじゃまるで・・・。
「僕は・・・妖精の体に戻れたのか?」
「そうよ。・・・今だけね」
「今だけ・・・?」
「あなたの本当の体は・・・つまり人間の体は地上で寝てるわ」
「どういうことだ?俺の体はここにあるじゃないか」
「ええ。これは正真正銘・・・・私たちが復元したあなたの体よ、ルー。・・・・・まぁ、どういうことかわからないわよね」
リリアが立ち上がり、僕の頭に触れ、僕の顔をぐっとあげる。
色素が薄くなっていく。
頭に何かが流れ込んでくる。
それは記憶。
いや、歴史といってもいいかもしれない。
悔いても悔いても、決して届かない・・・・、あまりにも悲しい、しかし、妖精たちの希望を託し、僕の決意を固めさせるに十分なものであった。