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第75話・魔王様の、幻想記

これからも、よろしくお願いいたします。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。

自分で言うのもアレだが、私は面倒ごとを背負しょい込みやすい性質たちだと思う。


ずばり、放っておけないのだ。

誰かが困っていたり、もしくは人の道に外れようとしていたり・・・

魔王に担ぎ上げられた一端には、この性格も大きく関係していた事だろう。

危なっかしいのを目にすると、どうにかしてやりたくなってしまうのだ。


「だからと言って、他人の事に首を突っ込むのは感心しないなァ。」


「・・・分かっている。」


今回も、セリアが結婚を嫌がっていたのを放っておけず、結果としてセリア母を怒らせる結果を招くことになってしまった。

今では少し後悔している。

一方、当事者であるセリアは泣き疲れたようで、背中で安らかに寝息を立てていた。

魔王は隣を歩く警備兵に、心から謝罪した。


「貴様には迷惑を掛ける、ありがとう。」


「ぼ・・僕は幼馴染が困っているから、手を貸そうとしているだけだ。 べつに君は関係ない!」


まるで突き放すかのごとく態度をとり、オルザは前を先行する。

こうして行動を共にしてくれる存在は、それだけでも心強い。

おかげで1人の責任者として、魔王自身も行動の決心を付ける事が出来たのだから。


「おい、なにしてる?」


「わ、待ってくれ!」


考え事をしているウチに、いつの間にかオルザは、ずっと前を進んでいた。

置いていかれた魔王は、急いで開いた距離を詰めると、それに気付いた彼も歩調を合わせてくる。

背中のセリアは重くは無いが、歩くのに支障はあった。

少しの沈黙の後、同時にお互いへ視線を向ける。


「「あの・・・。」」


偶然にも声がハモり、気恥ずかしさから、互いに顔を背ける。

その表情は、うっすらと赤い。


「・・・先に話せ。」


「い、いや! レディファーストと言う言葉もあるから・・・。」


お互い譲り合う姿勢を見せたため、そこで話が一旦、停滞した。

顔を更に赤くさせ、一時の静寂せいじゃくが2人の時間を支配する。

結局は、先に魔王のほうが折れ、お辞儀をして話を切り出した。


「ゴホン・・・お前はセリアと幼馴染と言ったな。 どうじゃ、セリアは好きか?」


「ぶふっ! なんだよ、やぶからぼうに!??」


あまりに直球の質問に、オルザは大きな声を出した。

だが気にせず魔王は、グイグイ迫る。


「お前は独身なのだろう?」


「そうだけど、それとこれとは、話が別だろう。 そんな事を考えたら、セリアに失礼じゃないか!」


リンゴのように顔を真っ赤にさせ、彼は激昂げっこうするが満更でもないのか、怒り方に覇気が足りない気がした。

その視線は、背中で寝ているセリアへと注がれている。

これを見て、魔王は顔をゆがめる。


「なんだ、随分な慌てようだな。」


「む・・・くっ・・・・!」


図星だったのか、オルザは狼狽して口を閉ざす。

もう少し、この顔を見たいとイジワルする画策をする魔王だったが、寸での所でソレは阻止された。


「そういう君はどうなんだ、セリアに気があるんじゃないのか!?」


「な・・・! 私は女だぞ!?」


一転して、形勢は逆転した。

その姿を見てオルザは楽しげに、「分かるもんか」と鼻で笑う。

しかし魔王が、どれだけ怒って見せても、相手を喜ばせるだけ。

それを悟った彼女は、ずり落ちそうになったセリアの体を担ぎ上げると、歩調を速めて彼の前に出た。


「私とセリアは友達、それ以上でもそれ以下でもないわ。 ヘンな勘繰りはよせ!」


「どうだか。」


オルザの逆襲は、それでも鳴りを潜めることは無かった。

言われっ放しでは魔族の、いや魔王としての威厳が保てなくなる!

だがそこは、礼節はわきまえなければならない。

決して魔法や魔族の力は、使わないのが舷側だ。

調子をこいて、イラつく薄笑いを浮かべている彼に対し、彼女は消極的な反攻に出た。


「・・・そんなだから、貴様はそのとしになっても独身なんだ。」


「きっ、気にしている事を・・・!」


グサッと言う擬音がよく似合う仕草で、彼は胸を押さえる。

勝った。

魔王はソレを見て、すまし顔になった。


「思い知ったか、これにりて、二度と私をからかわぬ事だな。」


背中に背負ったセリアを落とさぬよう、可能な範囲で胸をはる。

女を怒らせると、こわいのだよ。


「悪かった・・、反省する。」


「やけに素直だな?」


もっと何かを言ってくるかと思っていたので、簡単に謝罪してきた彼に、逆に魔王は違和感を覚えた。

それを払拭するように、彼が言葉を続ける。


「どうしてか、君と話していると他人で無いような気がするんだ。 それで遠慮が無くなってしまうと言うか・・・変だよね? セリアでも、こうはならないのに。」


「・・・。」


悪びれた様子で、いさぎよく頭を垂れる彼の姿を、ジッと見つめる魔王。

視線は、どこか遠くを見ているようにも見える。

その彼を責めることはせず、魔王は彼の元へと近づいた。


「のぅオルザ、お前の魔質を見せては貰えぬだろうか?」


魔質とは、そのものずばり魔力の質の事だ。

個人差があり、1人1人の魔力というものは質感が微妙に異なる。

目に見えるもので例えるなら、指紋のようなものだ。

魔力とは魂由来のものなので、たとえどんな事があっても、永遠に変わることは無い。

・・・そう、たとえば一度、死んで生まれ変わったりしたとしても。


「僕の!? それは、ちょっと・・」


ようするに魔王は、個人情報プライバシーを見せろと言っているのと同じだ。

オルザはモノすごい勢いで、狼狽した。

基本的に魔質が見られるのは、本人と家族に限定されている。

同意も無いのに勝手に覗けば、極刑となる国もある。

伊達には魔王はやっていない、その無理を承知で、こうして頼んだのだ。

彼が歯切れ悪いのも、そのためである。

しばし困惑しながら時折、何度となく魔王へチラチラ視線を送る。


そして何度目か、小さな溜め息をつくと右手を差し出してこう言った。


「ホラ、特別だぞ?」


「あ、あぁ・・・」


相手の魔質を見るには、体の一部分を接触させるのが一番、手っ取り早い。

魔王は差し出された手を取り、そこへ自分の手を重ねた。

初めて会って以来、ずっと魔王はある事が気にかかっており、眠れぬ夜を数週間過ごしたこともあった。

これは最初にして最後の、絶好の機会だ。


「!」


「・・・、どうかした?」


魔王は重ねていた手を離すと、影を帯びた。

この豹変振ひょうへんぶりに、否が応でもオルザの心中は、不安に駆られる。


「なあ、何かあったのか?」


「い、いや何でもない! すまん、やはり私の勘違いだった。」


さっきまで影を帯びていたのがウソの様に、笑顔を見せる魔王。

不安げだった彼の顔も、徐々におだやかさを取り戻していった。

おあつらえむきに、ちょうど目指していたセリアの家にも、到着する。


「オルザ、頼むぞ・・・。」


「ああ。 セリアのためだ、一肌脱ぐよ。」


2人は、怒っているらしいセリアの母親に話をつけるため、改めて気を引き締めた。


事後の後始末を付ける、それは1つの責任。

魔王はすべきことをし、成すべきを為すだけだ。

次回

第76話「魔王様、責任を取る」をお楽しみに。


※上記はあくまで予定ですので、急遽変更となる場合があります。

あらかじめご了承下さい。

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