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第6話・魔王様、順番を待つ

これからも、頑張っていきます!

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!!

「はい、次の方ー!」


呼ばれるたびに前に立つ人間や馬車が、城門の番兵によって検閲けんえつされ、街の中へと入っていく。

ブライトの街へ入るための行列へ並んで、早いもので数刻。

魔王様は律儀りちぎにも、人間達の行列に並び続けていた。

今のところ、正体がバレそうな気配は無い。

そこは、安心した。


ちなみに彼女は気づいていないが、赤目はともかく人間で黒髪の存在は珍しい部類。

おまけに彼女は、背中に大きな大剣を背負っていたので、かなり集団の中では浮いた存在となっていた。

当の本人は角と翼を隠すだけで、満足してしまったのだ。

この辺りは、『世間知らず』が祟った様である。


周りの視線を気にした様子も無く、彼女は列の前方を幾度と無く視線を送った。

そのたびに「ふう・・・」とため息が漏れる。

なかなか自分に、順番が回ってこない。

少しづつ進んではいるのだが、人数が多い事もあり、進んでも進んでも、なかなか自分の番にはならないのだ。

既に西側の空には太陽が沈み終え、東の空は暗くなり始めている。

マズイ。

このままでは、街の城門が閉まってしまうのではあるまいか!?

昔は確か、日暮れと共に情け容赦ようしゃなく、城門は閉じられていたはず。

そうなっては、今日並んだ意味が無くなってしまう!

なるべく早くに街へ入り、ギルドへ登録する。

願わくば明日から、冒険者として稼ぎたい。

その計画が、このままでは水の泡になってしまう。

気ばかりが焦る。


「ん、嬢ちゃんションベンか??」


すぐ後ろに立っていたひげ面のオレンジを基調とした登山服のような格好をした男が、心配そうに声を掛けてきた。

旅人か、冒険者であろうか?

周りの人間達も、その声に呼応し、心配げな表情を送ってくる。

こんな事を言われたのは生まれて初めてなので、場の空気に付いていけず、「え?」とヘンな声しか出せなかった。

城門が閉まってはしまわないかと心配し、不自然なまでにソワソワする彼女の姿は、傍目には尿意をもよおす幼女にしか見えなかったのだ。


おしっこがしたい。

だが現況的に、そういうわけには行かないと、我慢する幼女。

少なくとも周りからは、魔王様の姿はそう映っていた。

実年齢は、どうであれ。


「順番なら取っといてやるよ、早く言って来い!」


「そうよ? おしっこはガマンしちゃダメだって、親御おやごさんからは教えられなかったのかい?」


「・・・・・・・ああ。」


合点が言ったといった様子で、ようやく彼女もなぜ周りの人間達が口をそろえて、そんな事を言ってくるのかを理解した。

そうだ、事情あって今は、幼子の姿をとっているのだった。

誤解は解かねばなるまい。

このままでは、我のプライドがいらぬ所で下がってしまいかねぬからな。

冒険者たるもの、イメージがまずは大事なのである。


「いや違うのじゃ、心配を掛けてすまぬ。 もう日暮れじゃ、城門が閉まってしまうのではないかと心配になってな・・・」


そうして、目の前に高くそびえる城壁を見上げ、不安げな表情を浮かべる魔王様。 

それに対し、困惑と共にキョトンとした表情を浮かべる人間達。

我は何か、おかしな事でも言ったろうか?


「ははは! 嬢ちゃんそいつは小説とかの読みすぎだ!! 日暮れになって門が閉まるなんざ、いつの時代の話だよ!?」


突如として大きな笑い声を上げ、「心配するな」と、肩をバンバン叩くひげ面のおじさん。

日暮れと共に城門が閉じると言う事はないのか!??

そんなはずは・・・

しかし周りにいる他の人間たちの反応も見るに、この男がウソをついている可能性は、かなり低いと見える。

とすると、我の記憶違いだろうか?

400年もの間に、軽くボケてしまったような気は、しなくも無い。

長い間、戦闘などの刺激的なことが無かったので、頭がさび付いている可能性は十分にあった。

そうあっては自分の『鑑定』すら、信じられないぞ。

しかも、もし本当にボケているとすれば、『冒険者』の登録は出来ないのではないか。

それでは、稼ぐ方法が絶たれてしまう!!

それは同時に、魔王城への仕送りも、不可能になる事に他ならない。

そうなっては、もはや目も当てられない。

襲いくる不安に、頭を抱える彼女。


「はい、次の方ー! ・・・おや頭痛かな、大丈夫かい??」


「?」


兵士の格好をした番兵が、城門を訪れた頭を抱える幼女に、心配をする。

頭痛だろうか、相当痛いのか、涙まで流しているように見える。

先ほどからの他の者たちとの話を聞くに、どうやら親同伴ではないらしい。


「お嬢ちゃん、ここには休憩所があるから、しばらくそこで休むかい? 体調が整ったならば、声を掛けてくれればいいのだけど。」


「い、いや、大丈夫なのじゃ! 体調ならばすこぶる良好である!!」


頭にのせていた両の手を下ろし、スパッと頭を上げる。

考え込んでいるうちに、いつの間にか順番が自分に回ってきたようだ。

これもただひたむきに、順番を待ち続けた甲斐があったというもの。

ちっぽけな悩みなんぞを、しているヒマは無いわ。

今こうしている間にも、配下の魔族たちは、空きっ腹を抱えて魔王城で待っているのだ。


「そうかい、それなら良いんだけど。 じゃあまずは、歳と名前、それとどこから来て、ここへ何をしにきたのかを聞かせてもらえるかな?」


「よかろう、我が名は『エティシア=ライザック』、歳は14歳じゃ。」


ここでは偽名などを使う。

我は名はきっと、有名であろうからな。

もし、『魔王』とバレるような事は、少したりとも出来ないのだ。

まあ、名前だけはそのままであるが。

ふう・・・ようやっと、街へ入れるようだぞ。

早くギルドへ行って、冒険者登録を!!

それが我のさしあたっての目標じゃ。

まだまだドタバタは続きます。

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