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第52話・魔王様、またも肩を落とす

これからも、楽しんで書いていこうと考えています。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい!

ブライトの中心には公園があり、それを囲むように役所などの公共施設が立地している。

その中の一つ『領立図書館』の休憩スペースに、3人の魔族の姿があった。

魔王のエティシア、四天王ベルナンデス、その他女魔族1人である。

それぞれが席に着くと、まずは魔王がベルナンデスに質問をぶつけた。


「まずは話を聞かせてもらおう。 なぜ貴様がブライトにおるのか、そもそも300年も何処に居たのかを。」


「ははっ小姓ベルナンデス、魔王様の命に従いまして300余年、ひたすら土地の開墾作業に精を尽くしておりました。」


「300年も・・・!」


魔王は呆れ果てた。

魔族の土地では、作物は育たない。

これは随分前に分かったことで、早々に諦めたことだった。

だと言うのに馬鹿の一つ覚えと言うか・・いや、こんな事を言ってはベルナンデスに悪い。


「そうか・・・、ご苦労だったなベルナンデス。」


「魔王様直々の労いのお言葉、感謝のきわみ。 して魔王様、このベルナンデスが参りましたのは・・・!」


「で、お前は?」


脳筋バカの方は放っておき、もう1人の女魔族へと声を掛ける。

彼女はベルナンデスが、ひきずるようにして連れていた魔族だ。

魔力が残り少ないのか魔族姿のままだったため、応急的に魔王が魔力を与えて今は人化している。


「私はフレアと申します、魔王城で静養していました。 水汲みに行っていたところを、ベルナンデス様に連れさらわれまして、ここまでの案内を・・・」


表情の柔らかにその女性は、包み隠さず経緯を魔王に話して聞かせた。

別にベルナンデスに復讐などという他意はなく、ただ純粋な気持ちで。

だが内容が内容だけに、魔王の表情は、どんどん失われていった。


「ベルナンデス、貴様は病み上がりの者を引きづり回したのか?」


「そ、そんな魔王様、それは誤解です!」


何が誤解か。

力ない女性を無理やり荷物のようにひきづるとか、最低としか言いようが無い。

こいつ、とんだ悪魔だ。(魔族だけに)

魔王のベルナンデスに対する評価は、地に落ちた。

大きくため息をつく魔王を傍目に、フレアという女魔族はベルナンデスへ首を向ける。


「ベルナンデス様、魔王様へご報告申し上げたい事があったのでは?」


「・・・まだ何かあるのか?」


フレアと言う女魔族の言葉で一抹の不安を抱く魔王だったが、その先を聞いてみることにした。

当のベルナンデスは息を吹き返したように、ガバッと顔を上げる。


「おおお、そうであった! このような事をしている場合ではなかったぞぉ!!」


善は急げと彼は魔王とフレアの2人を軽々と持ち上げ、猛牛の如く速さで街から森の方へと出た。

こいつに女をいたわる気持ちは無いというか、力任せに他人ひとを引っ張るのは、早急に止めるべきだろう。

そんな注意をするヒマもなく、走るスピードは心なしか徐々に速くなって行った・・・



◇◇◇



魔王様が失職して、早数日。


彼女は来訪した四天王ベルナンデスに連れられ、魔の森にやって来ていた。

四天王であるが現代魔王に火力は入用でなく、もっぱら彼は森の開墾作業に従事していた。

食料を自活できるようになれば、魔族は飢餓状態から脱退できる。

そんな淡い期待からの事だった。


―しかしそれは、すぐに見果てぬ夢だと思い知らされた。

魔の森は『魔素』と呼ばれる地のエネルギーが強く、とても農作物が育つ環境ではなかったのだ。


時は流れ数百年。

道中に聞いた話によると彼は悲願である作物を、とうとう魔の森に実らせることに成功したらしい。

もしソレが本当なら、これは大変な事だ!

魔王が人間の街へ出稼ぎに行く必要も、消滅するのだから。


読者の皆様、ご愛読ありがとうございました。

たぶん来週からは『魔王様は開墾しておられます!』を新たにお送りします。



森を走り抜けること数日。

やっと目的地に到着したらしく、ベルナンデスは脇に抱えていた2人の女性を、地面へと下ろした。


「ご覧ください魔王様、この我輩の血と汗と涙の結晶を!」


「・・・?」


得意満面の様子で仁王立ちするベルナンデスを尻目に、目の前に広がる光景に目を凝らす2人。

そこには、延々と続く広大な赤茶色の土地がどこまでも続いていた。

なるほど、300年も開墾作業していたと言う話は、伊達ではないらしい。

それは分かったが・・・


「ベルナンデスよ、実った作物と言うのは何処だ!? どこまでもむき出しになった土ばかりではないか!!」


視界に広がるのは、遠くに森がある他は、緑の影すら見当たらない、じつに殺伐とした風景だ。

目の前に広がる予想外の光景に、魔王は落胆の色を隠しきれなかった。

だが彼は、どこから湧いてくるのか自信たっぷりの様子である。


「魔王様、どうかお足元をご覧ください。」


「は、足元??」


魔王城のフレアと共に、視線を下げる魔王。

そこには茶色の変色してカラカラに渇いてしまった、一本の草があった。

見たことがある、これは人間の世界で、パンの原料となる植物の苗だ。

数日前に芽が出て、真っ先にその足で魔王城へ向かったのだとか。


「・・・・これ、一本だけか?」


「やっと生えてきたのです、今まで開墾してきた甲斐がありました!」


「これだけかと、聞いている。」


魔王の質問に対し、彼は首をかしげた。

目は口ほどに、モノを言う。

懸念していたとおり、どうやら芽を出したのは、この枯れた草一本きりらしい。

現実は、かくもキビしいのか。

期待していただけに落胆も大きく、ベルナンデスの「どうです、魔王様!」という声も耳に届かず、魔王はブライトへの帰路についた。

短な夢を見せられていたのだろう、かくもはかない夢を。


「あの・・・魔王様、私も働きます。 及ばずながら私も、お力添え申し上げます!」


「お前は病み上がりであろう、私に気など回す必要は無い。 城へ戻れ。」


城には病人も多いことだし、フレアのような存在は貴重だ。

何より魔王自身が失職している今、人間生活を彼女へ指南している時間はとれない。


「魔王様! 小姓ベルナンデスも魔王様に、お力添え申し上げますぞ!!」


お前はマジで、城へ帰れと魔王は思った。

何日も森をひきづったあげく、結果はごらんの有様。

引きずられていた間の痛みも尋常ではなかったが、それより数日もの時間を棒に振ってしまった事が勿体無い。

一刻も早く仕事を見つけなければ、その分だけ魔族たちが困窮するのだ!


「魔族の王として命ず、両名とも魔王城へ帰れ! 私はブライトへ赴く、決して付いて来るなよ!?」


「「魔王様!」」


転移の魔法は、術者が行った事のない場所へは使えないのが原則だ。

畑へ連れ去られた時も、目的地が分からなかったために行使できずに時間ばかりが経ってしまったが・・。

今は魔力を消耗することより、時間が惜しかった。


転移の魔法が発動し、赤茶色の畑の真ん中に青白い光の柱が立ち上ると、魔王の姿は一瞬にして消え失せる。

取り残されるような形となってしまったベルナンデスとフレアの両名は、顔を見合わせながら荒れた畑の真ん中で、立ちすくむのだった・・・・・・・


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