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ボーンドレイクとイケてない竜騎士  作者: たまごいため
6/8

人助け、という道に、一歩を踏み出す。

 俺たちはミリアムを夕刻に出発。目の前に沈んでいく夕日を追いかけるようにして西に進んでいく。ほどなくシリルの村も通過して、遠くにリュミエールの夜景が見える所までやって来た。

 こうしてリュミエールが壊滅せずに夜景を残してくれているのも全部ルキフグスが一緒に来てくれたおかげなんだよなあ。そうすると冥府まで落下したのも無意味では無かったわけで、そうすると竜騎士を首になっていたのも無意味では無かった…のだろうかな?


「ルー、ありがとな。おかげで沢山の命が救えたよ。」


「カイン、こちらこそ。僕と友達になってくれた恩返しみたいなもんさ。」


 いやいや、友達になったくらいでこんなにしてくれるなんて、無いでしょ。とはいうものの、ルーも随分と地上では苦労したようだしな。そのくらいの感じなのかもなぁ。


「でも、まだ終わった訳じゃないよ。川も直ぐに汚染が戻っていくだろうし、それには王都や他の町々の衛生施設を改善していかないといけないしね。」


「そう…なんだよな。俺の力でどうにか出来る問題とも思えないんだけど…。」


「やれるところまで、やってみたら?」


 ルキフグスにそう言われ、少し勇気を貰って頑張ることにする。俺の知名度の問題じゃない。この周辺を守る一大プロジェクトともいえるのだ。何とか、それを領主や国王陛下の耳にまで通さないとな。

 さて、リュミエールの門が近づいてきたのだけれど、なにやら様子がおかしいな。妙にざわついているというか、何かあったのだろうか?近くの衛兵に聴いてみる。


「すみません、また何かあったのですか?」


 こちらを振り返り、一瞬ビクッと反応する衛兵。ああ、ルキフグスに乗ったままだから、びっくりさせてしまったか。すまんすまん。


「おお、カイン殿!ちょうどよいところにお戻りになられましたな。実は王都から疫病の査察団がやって来ているのです。」


「王都から?」


 随分対応が早いな。


「実は、疫病が流行り出した当初のうちに、使いの者を王都へ走らせてあったのですよ。」


 ああ、なるほどな、アトリーと町長のお手柄だなこりゃ。とは言え、それでも遅きに失している感はあるけどな。


「ともかく、どうぞ町長の屋敷まで。」


 そう言われて、ルーと俺は衛兵に連れられて町長の屋敷へと向かった。


「失礼します、カイン殿が戻られましたので、お連れしました。」


「おお、入ってもらえ。」


「カイン殿、どうぞこちらへ。」


 取りあえず、町長の居る会議室へ通される。そこには町長、病院の院長アトリー、それから査察団の騎士と、医療側の代表だろう人物が一名、それぞれ長机に向かい合うようにして腰掛けていた。


「ただ今戻りました。カイン・スティングレイです。」


 そう言って簡単な挨拶を済ませると、騎士と医師がそれぞれ挨拶をしようと立ち上がった。あれ?この騎士の人は確か…。


「久しぶりですな、カイン殿。ラルフです。今は王国騎士団で小隊を任されております。」


「ラルフ殿!暫くです。」


 いつぞやはご迷惑をおかけしました、という話は、まあ後でいいか。


「これは、お知り合いでしたか?私は王都の病院に勤務しております、メイザーと申します。疫病の研究を少しばかり行っておりましてな、こうして査察団に呼ばれた次第です。」


「よろしくお願い致します。」


 挨拶が済んだところで、町長が俺に尋ねてくる。


「カイン殿、その後、大きな進展は見られましたかな?」


「ええ、かなり具体的なお話が出来る所まで、原因究明が進みました。」


「なんと!それは重畳。それで、具体的にな原因とは…?」


 町長が首を傾げて訪ねてくる。かなり期待されているみたいだな。そりゃそうか、このリュミエールも崩壊しかけたんだしな。


「その前に、現状報告をしてもよろしいですか?」


「おお、これは、少し早まってしまいましたな。もちろん、構いませんぞ。現状報告からお願い致します。」


 俺の言葉に、町長はそのように謝辞を述べる。他の面々も、問題ない様子。


「まず、リュミエールの東隣、シリルの漁村ですが、住民の8割は疫病により亡くなっていました。」


 ううむ、という押し殺すような声が漏れる。皆、助けられる人間が多い方が良いとは思っているのだ。だが、現実は厳しい。


「シリルの瘴気はルキフグスによってすべて除去され、生存が確認できている村人の疫病に着いても、浄化が完了しております。」


「おお、それは不幸中の幸いと言うべきか。」


 アトリーが口を挟む。実際患者が治っていく現場を見ていたからだろう、それが事実だと実感をもって解ると言った風である。


「はい、もう少し遅れていれば全滅も有り得たかもしれません。さて、そのシリルの村もこのリュミエールと同じく、病気はさらに東から持ち込まれたもので、そのまま私も東、ミリアムの村まで行ってまいりました。」


「なんと、今日一日でそこまで!」


 誰ともなく感嘆の声が上がる。


「ラルフ殿には解るかも知れませんが、今パートナーを組んでいるルキフグスの移動スピードは飛龍にも引けを取りません。王都周辺の領地でしたら、一日で行き来が出来るほどです。」


「それは…また、馬で移動する我々からすると、途方もない話ですな。」


 確かに、現在この王都の周りをそのスピードで移動できるのは竜騎士隊かアホみたいに足が速い異世界の勇者一行のどちらかだけだろう。流石に勇者一行は一日中走っているほどの体力は無い様だけど。

 俺は話を続ける。


「ミリアムの村もまた壊滅に近い状況でしたが、ここで疫病の原因を発見いたしました。」


「ほう。」

「それは、どういう?」


 皆の聞き耳が立ったところで、下水の話をする。


「エル川の汚染が原因と考えられます。王都、および流域の町々から流れ出た下水が河口に位置するミリアムの村辺りではかなり汚染された状況で、不衛生になっています。今回の疫病の最初の患者は、エル川の魚を食事にしていた農夫でした。」


「何と…王都からの下水が、原因であったと?」


 町長が難しい顔をして問い返してくる。気持ちは解る。王都の下水処理の問題など、一町長にどうにか出来る話では無い。


「その可能性は高いと思います。今エル川河口はルキフグスのお蔭で一時的に浄化してありますが、また悪化するのは時間の問題です。」


 メイザーは首肯し、俺の意見に賛成だというように応える。


「今回に限らず、疫病は衛生面の問題から発生するとは考えていましたが…なるほど、下水ですか。」


「魔王が討伐され、急激に王都や周辺に人口が流入したのも、大きな原因の一つかもしれません。下水や上水が分けられていないスラムも拡大していますしね。」


 ラルフがそのように応える。ああ、多分騎士として警備をする仕事柄、スラムの巡回なんかもやっているんだろうな。しかし上下水が分かれてないスラムなんか拡大したら、王都も二の舞だぞ?


「このことについては、何かしらの対策が必要になると思いますが…何しろ私たちの領分を超えている問題でもあります。ラルフ殿、メイザー殿、一度王都にこの話を持ち帰り、検討していただけませんでしょうか?」


 俺はそのように切り出す。もし可能なら、俺も一枚かんで、王都の下水問題に取り組みたい。地元に汚水がドンドン流れ込んでいる状況なんて、さっさと解決したいじゃないか。


「うむ、早急に対処するようにしましょう。」


「町長も問題は無いですか?良ければ、私がこの問題、すべて引き受けましょう。」


 町長にも提案する。


「もしリュミエールの窓口として立ってくれるのであれば、私としては是非も無い。」


 よし、町長の承認も取れた。これで俺もある程度発言権を持ってことに臨めそうだ。







 翌朝、俺は久しぶりに自分の槍など握って、庭先で基礎訓練などを始めた。何というか今まで全くやる気が起きない時期を過ごしていたが、冥界に落ちて、人助けをして、これから下水処理の話もあって、何となく人生に張り合いが出てきた気がしている。竜騎士を首になったからって、人生全部が崩壊した訳ではないのだ。まあついこの前まではそんな気分だったのだけど。

 それで、竜騎士になる前からかれこれ10年近くやっていた朝の基礎訓練を再開することにしたのだ。あんまり武器を使う機会なんて訪れないかもしれないけど、ルキフグスに跨ってる俺がちっとも強くないんじゃあんまりだ。勇者みたいな強さは無理かもしれないけど、いっぱしの騎士と互角以上にやり合う実力だって一応あったのだから、少し身体に火を入れれば元に戻るだろう。

 俺は自前のハルバートを構えては突き、払い、回す。色々な相手を想定して。人間では無いモンスター、魔獣、魔族も相手にするかもしれない。人間相手の型通りでは通じない。下水処理と関係ない?それはそうかも知れないが。

 

 フー、と一通りの型に取り組み、大きく息を吐く。気持ちがいい。こんなに気持ちがいいのは、半年ぶりだ。去年の秋口に首になり、早半年経ったわけだ。吐く息も白くならず、木の芽も芽吹き始めている。やり直すにはいい時期なんじゃないか。

 俺は、次に何をしたら良いかわからないけど、兎に角この下水処理を必死こいてやり遂げて、そこから広がる何かを追いかけてやろう。そんな風に心に決める。

 俺の方に優しい春風が吹く。気付けばメリーも背後で半透明の光のヴェールのように輝きながら俺の方へやって来て、その光で包み込んでくれた。






 俺は今は王国騎士となったラルフさん、それから医師のメイザーさんとともに王都に向かうことになった。ルキフグスについては、ラルフさんが話を通してくれることに。俺も一応元竜騎士だし、まあ大臣に直接顔を合せたことも数度あるから、何とかなるだろう。

 

「王都の警備は魔王が討伐されてからはかなり緩くなってきたから、きっと話も通るだろう。」


 ラルフさんはそう言って安心させるようにニッと笑って白い歯をのぞかせる。


「ラルフさん、警備が緩くなってきたことを言われると、何となく古傷が痛みますね…。」


 俺はわざと冗談でそんなことを言ってみる。俺たちが竜騎士を首になったのは、要するにその警備が要らなくなったからという訳で、結局俺たちが居なくなった、と言ってるようなもんだ。


「わはは、カイン、随分余裕出てきたじゃないか。お前はやはりそうじゃないとな。お前みたいな責任感の強い奴が竜騎士を首になるなど、やっぱりおかしいと俺は思うよ。」


 ラルフさんがそんなことを言ってくれる。うん、お世辞でも嬉しいな。この人は実直で、信頼を置ける人だし、こういう人に認めてもらえることは本当に良いことだ。


「そういえば、以前の飲み屋での件、有難うございました。王都に着いたら、一杯ひっかけに行きましょう。メイザー殿もどうですか?」


 俺は以前酔っぱらってぶっ倒れた時に、ラルフさんにお代を払ってもらってたのを覚えていた。酒場の元カノに会いに行くのは何となく微妙だが、別に酷い別れ方をしたってわけでもないから、構いやしないだろう。


「それは楽しそうですな!エールは飲むパン。医療従事者も少しくらい飲んだ方が健康になるというものです。ただし、ジンはダメですぞ。」


 うん、この人とは気が合いそうだ。







 ルキフグスと一緒に、王都正門で待たされることしばし。俺もすんなりと通るとはこれっぽっちも考えてなかったから、これくらいの待ち時間は十分許容範囲内だ。顔見知りの兵士なんかと世間話をしながら時間を潰す。それにしても、みんな顔が引きつってんな。まあボーン・ドレイクの威容はかなりパンチ力あるからなぁ。


「なあ、難しいかも知れないけど、こいつの事をあんまり怖がらないでやってくれないか?地上に来てから友達が出来ないで悩んでたくらいだからさぁ。出来れば友達になってやってくれると喜ぶと思う。」


「と、友達、か?竜と友達ってどうすればいい?」


「うん、僕は友達が増えるのは嬉しいよ。お兄さんも友達になってくれるの?」


「ヒッ、こ、言葉を話した!?」


「ルキフグスはかなり高位のドラゴンだからな、言葉くらい訳ないさ。」


「そうだよ。それから、あだ名ね。ルーって呼んでくれる?」


「あ、ああ、解った、ルー、よろしくな。俺はセバス。いつもこの辺の門を守ってるからさ、暇になったらこの辺に来てくれりゃ相手になるよ。」


 セバスは頑張って親し気にしているが、顔が完全に恐怖でひきつっている。そのうち慣れると良いな。


「カイン殿、ルキフグス殿、通行を許可します。真直ぐ王城前までお越しください。」


 お、そんなこと言ってたら許可が出たみたいだ。案外早くて助かったな。…と思ったら、やっぱりと言うしかないんだが、厳重な守りだな。正門から先、ズラリと石畳の左右を埋める騎乗した騎士たち。護衛兼見張りという訳だ。ま、これくらいしないと市民がパニック起こすだろうから、当たり前だな。

 上空には何人かの竜騎士もやって来ている。わりと物々しいな。


「あれがカインのやってた竜騎士?確かに、メリーと同じ種族だね。」


「ああ、そうだな、ルーから見ると、どんな風に見える?」


「うーん、今飛んでる彼らは、あんまり楽しくなさそうだねぇ。僕としては、鞭をうつようなやり方はやめてほしいな。」


 俺たちの会話を聴いて、周りの騎士たちが目を白黒させている。言葉を話す竜というのがどれほど珍しいか知らない彼らではないし、また言葉を話す竜の力がどれほど強いのか知らない彼らでもない。

 要するに、ルキフグスが話しているのを見て、また竜騎士に若干の憂いを現しているのを見て、緊張を露わにしている、という訳だ。大丈夫なんだけどね、そんな心配しなくても。


 そうこうしているうちに、王城の城門までたどり着く。そこでは文官たちと騎士たちが待ち構えていた。


「カイン殿、お話はラルフから伺っております。どうぞこちらへ。ルキフグス殿におかれましては、狭いところ恐縮ですが、竜舎へご案内いたします。」


 文官に言われるままにルキフグスから降りると、久しぶりの王城へと入っていく。ルキフグスは俺にとっては懐かしの竜舎に入っていった。



‐‐‐‐‐


「な、なんだ、あの竜は?見たことない種族だな…アンデッドか?」


「何でも、カインが連れてきたんだとよ。今はカインのパートナーらしい。」


「はあ?なんであのヘタレがあんな竜連れてんだよ?」


 マルケスはそう言うと苛立たし気に鼻に皺を寄せる。竜騎士団では団長に次いで2番手の功績を上げている、カインの同期である。


「俺も良く知らないんだけどな。結構な力の竜らしいぞ。」


 応えるのはバーナード、竜騎士団上位4人の中に入っている、これもカインと同期だ。マルケスはカインの事を少なからず目の敵にしているところが有り、バーナードはいつもその聞き役である。


「あのヘタレがパートナーに出来るくらいなら、俺が力ずくで従わせてやろうかな。」


 マルケスがルキフグスの方へ向かって歩き出す。


「おい、マルケス、いくら何でも止めておけ。人間にどうにかできるレベルの力じゃないらしいぞ。」


「馬鹿言え、だったらなんで竜舎なんかに大人しく入ってんだよ。外の騎士団どもが勘違いしただけだろ。見る目がねんだよあいつらには。ビビりやがって。」


 マルケスはそう言い放って鼻で笑う。彼は確かに若くして剣術・槍術の扱いに秀でており、その腕前はこの王都の中で異世界の勇者たちを除けば比肩する相手はほとんどいない。それ故に実力主義の竜騎士団のナンバー2で居ることが出来るのだが、それ故に他人を侮る風を隠そうともしない悪い癖があった。


「おい、そこの竜、俺と話をしようじゃないか。」


 マルケスは蔑むような笑みを浮かべてルキフグスに話しかける。カインの飼い竜など敬ってやる道理はない、というのが彼の心象だろう。


「君は、カインの事を馬鹿にするようだね。僕は彼を馬鹿にするような奴と、話すことは無い。」


 ルキフグスはマルケスの方を見ることすらせずに、言葉を発する。


「なっ、言語を操る竜だと!?何故あいつがこんな高位の竜を操ることができる!?」


 マルケスは心底驚いた風に目を丸くする。そして直後、怒りで青筋を立て始める。


「カインのアホに出来て俺に出来ないなんてことが、有り得るはずが無い。おい、お前、俺のいう事に従え。」


「バカ、マルケス、いい加減にしろ!王城を危険にさらす気か!」


 バーナードが止めに入る。だが、マルケスはどこ吹く風。


「ビビったのか?バーナード。カインに出来て俺に出来ない事なんてある筈がない。おい、お前、いつまでも無視していると、痛い目に遭わせてやるぞ。」


 なおも言い募るマルケス。ルキフグスは全く意に介さない。頭を横にして、丸くなって眠っているような姿勢のままだ。


「舐めやがって!いいだろう!ボスフォラス!」


 マルケスが呼びかけると、一際巨大な体を持つ飛龍が竜舎の奥から飛んでくる。ボスフォラス。マルケスに従う、騎士団屈指の強さを誇る竜だ。


「こいつを傷めつけてやれ!」


 ボスフォラスの背中に跨ると、炎を纏った槍を構えるマルケス。魔槍使い。竜騎士団の中でも特に功績が大きい者に、国王から魔剣や魔槍が下賜されることがある。マルケスもその一人だった。


「「後悔しても知らんぞ!」」


 マルケスとバーナードが同じことを叫ぶ。もちろん、対象は別々だ。マルケスはルキフグスに。バーナードは、マルケスに。

 だが、ボスフォラスを突っ込ませようと意気込むマルケスをよそに、当の飛龍は一向にルキフグスの方へ進もうとはしない。


「かわいそうに、愚鈍な乗り主を持つと、飛龍もいたたまれないね。そうだろう?」


 ルキフグスは初めてマルケスとボスフォラスに向き直り、立ち上がる。その威容に息を呑むマルケスとバーナード。完全に、選択を誤った、と感じたのはバーナードだ。


「ボスフォラス!何をやっている!良いから突撃だ!」


「やめよう、ボスフォラス。君はまだここで死ぬべきじゃない。」


 ルキフグスの言葉に、目に見えて怯えはじめた飛龍は、マルケスのいう事を無視してルキフグスに背を向けると、竜舎の奥へと逃げて行ってしまう。


「お、おい!何をやってる!俺のいう事が聴けないのかあぁぁぁぁぁぁ…。」


 ボスフォラスに跨ったまま、マルケスは竜舎の奥へと消えていった。その姿に、若干の安堵と、この後の処理の危機感とをない交ぜにした複雑な表情は、バーナード。


「同僚が、無礼な真似を働きました。お詫び申し上げます。何卒、寛大なご配慮を頂ければ。」


「うん、構わないよ。貴方は話の分かる人のようだしね。貴方とカインは友達?」


 マルケスのことなど既にこれっぽっちも興味の無いルキフグス。


「ええ、まあ、友達という程でもありませんかね。以前の同僚ですよ。」


「じゃあ、僕たちはまだ友達になれるかも知れないね。今後ともよろしく!」


 そう言ってくるルキフグスに心底安堵するバーナードだった。この後、カインとは絶対に敵対するべからずという通達が竜騎士団全体に回ることになった。


いつも有難うございます。

日常的に居る、職場の嫌な人、みたいのを、

そこかしこに含めていこうかなと。

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