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3.ヘンタイ捜査線―調査経過―

  1


 数十分後。里桜は電車に揺られていた。隣にはさやかと楓が座っており、二人で顔を寄せてスマホを覗き込んで何やら話し合っているようだ。雅子と桐は別のところへと調査に向かっている。


「じゃあ今から、始めますか」


 事件を調査しようという流れが決まった途端、雅子がぽんと手を叩いて言った。「えっ、今からですか」と里桜はこの前も口にしたばかりのことを繰り返す。


「まあ、いいんじゃない? ちょうどここにこもってるのも飽きちゃってたし」


 手を組んで上に伸ばしながらさやかが言う。彼女と同様に、北条姉妹もこれから出掛ける気満々のようだった。


「えっ、いいんですか。生徒会にここにいるよう言われたんじゃないんですか? それに私、皆さんの監視役なんですけど」


 しどろもどろに里桜は思い浮かんだことを並べていく。とりあえず、自分はどうしたらいいのだろう。


「じゃあ里桜ちゃんも参加すればぁ?」


 あっさりと提案したのは楓だった。


「生徒会には後で言う。事後承諾。それでいい」


 続けて桐。あっさりとした解決策に里桜はぽかんとする他なかった。


「あの生徒会長、いつも偉そうですからね。出し抜いてやって、たまには物事が自分の思い通りにはいかないことを教えてあげませんと」


 雅子がいたずらっぽく微笑んで見せる。美少女が無邪気に笑う様にぼんやりと見惚れ、それから里桜は思い出した。そういえば私も、あの会長にはむかついていたんだった。

 そういうわけで里桜も雅子たちの調査に参加し、地下の狭い部屋を飛び出すことにしたのである。

 とりあえずは二手に分かれて、別々の事件を調べてみるという形になった。さやかと楓で「女児猥褻事件」を。雅子と桐で「押し入り下着強盗事件」を。そして里桜は今回、さやかたちのチームに入ることにした。ちなみにチームを決めた時に楓は桐と同じチームになりたいととてもゴネたが、チーム分けじゃんけんで決まった結果なので何とか納得してもらった。

 そして今里桜たちは電車にて、事件が起こった現場のすぐ近くにある小学校を目指しているのだった。その周辺で目撃証言でも探すのかもしれない。

 実は内心、里桜はちょっとだけわくわくしているのだった。事件の調査、とはいい響きだ。サスペンス映画も好きなので、一度そういったことをしてみたいと思っていた。ようするに、ミーハーなのだと自分でも認め得ざるえない。


「ねえ、里桜ちゃんこれ見て」


 さやかがスマホの画面をこちらに見せてくる。事件関連のことだろうかと目を向けると、変な格好をした猫が写っていた。


「これ可愛いよね。ちょっとブサイクなところがまたいいというか」


 隣を見ると楓も楽しそうに頷いている。大丈夫なのだろうか、と里桜は少し不安に思うのだった。


  2


「その女の子に、話を聞けたらと思うんだけど」


 そろそろ目的の小学校が見えてくるかという小路地を歩いていたら、ふとさやかがそう言った。


「えっ、どの女の子ですか?」


 里桜は聞き返す。先ほどから楓にスマホに映った姉の桐のスライド写真を延々と見せられ、いかに彼女が美しく優れた人間であるかをとうとうと聞かされていたせいで聞き逃してしまったのだ。


「だからその、なんて言うのかな。……巻き込まれた女の子」


 さやかは慎重に言葉を選んだ様子で言った。つまり彼女が言いたいのは、変質者に猥褻行為をされた女の子に直接話を聞こうということなのだろう。


「いいかもねぇ。でも、そんな簡単に聞けるかなぁ」


 楓が言う。まだ桐の写真を見て恍惚とした顔をしていたが、思考ははっきりしているようだ。


「それにもしかしたらショックで休んでるかもしれませんよ、学校」


 里桜が言ったのは至極まっとうなことだった。知らないおじさんに、よりにもよって体を触られたのだ。自分でも登校拒否を起こす、と思った。


「まあ、ダメでもともとだよ。それなら他の子たちとか、近所の人に聞き込みしてみればいいし」


 さやかもわかっていたようだ。彼女の気さくな判断に里桜も気楽に構えることが出来るようになった。調査と言うことで少し緊張はしてたのだ。

 歩いているうちに、段々下校中の小学生と思われる少年少女たちとすれ違うようになってきた。その無邪気さに微笑ましくなりつつ角を曲がると、小学校が見えてきた。年期の入ったどこにでもある校舎だ。校門がありそこから子供たちが溢れてきているみたいだった。


「あっ。あの子たちなんか、いいかも」


 立ち止まったさやかが前方を指さす。そこには女の子で固められたグループがいた。


「里桜ちゃんが声かけて見るぅ?」


 突然楓からお鉢が回されて、里桜は大いに動揺する。「わ、私ですか」と意味もなくきょろきょろとしてしまう。お世辞にも自分は人当たりがいいとは思えない。まして相手は小学生なのである。何と声をかけていいかわからない。


「こら、楓。ダメだよ、あんまり里桜ちゃん困らせたら。いいよ、私が行ってくるから」


 さやかがぽんと里桜の肩を叩いて笑い掛けてくれる。里桜はとても救われた気持ちになった。


「じゃ、行くね」


 何の躊躇もなく、さやかは少女たちのグループに向かっていく。そして彼女たちの前に来ると、「君たち、ちょっといい?」と柔らかく声を掛けた。ぎょっとした様子で少女たちは顔を上げる。


「私、中ノ原高校ってところの生徒なんだ。これ、生徒手帳。ちょっとだけ、お話を聞かせてもらっていいかな。五分だけ」


 さやかが自身の生徒手帳を見せにっこりと微笑み掛けると、警戒一色だった女の子たちの表情が緩んだような気がした。

 そこにすかさずさやかが質問を差し込む。


星野希美ほしの のぞみさんって今日、学校来てる?」


 聞かれて女の子たちの間にまた鬱屈とした空気が漂い始めた。誰だろうと考えて、すぐ気づく。被害者の女の子だ。しかしネットニュースでも伏せられていたのにどうして名前を、と思ったが口は挟まない。


「希美は今日、学校来てたけど……ちょっと、落ち込んでて……」


 歯切れ悪く少女の一人が言う。友人なのだろうか。もしかしたら事情も知っているのかもしれない。


「もうお家に帰っちゃったかな」

「いや、もうすぐ来るかも……あっ」


 少女が顔を上げる。視線の先、学校の校門から一人女の子が出てくる。長い髪で背も低く、まだ全然あどけない顔立ちをしている。そしてその表情は誰よりもどんよりとしていた。彼女が星野希美なのだ。


「えっ……」


 自分への注目に気づいたのか、希美は顔を上げて戸惑った様子を見せる。

 そんな彼女にさやかは、とびきり柔らかな笑みを差し向けた。


「こんにちは。星野希美さん? ちょっと聞きたいことがあるんだけれど、五分だけいいかな?」


  3


「最初は、近所に住んでるおじさんかと思ったんです。『やあ、希美ちゃん』なんて、気さくに声を掛けてくるし、見た目も普通な感じで……」


 希美という少女はぽつぽつと語り始めた。さやかに差し出された缶ジュースを受け取ったものの、口をつけようという気配は一切なかった。

 小学校の近くにある児童公園だった。ベンチに座る希美の近くに、里桜たちはそれぞれ腰を下ろしている。

 最初彼女は里桜たちにかなり怯えた様子を見せていた。あんなことがあったばかりなのだ、それは無理もない。だがさやかが懸命に話したおかげが、彼女は話を聞かせてくれることを最終的に承諾してくれた。こちらが女子高生三人というのも、警戒を解くには大きかったのかもしれない。


「今思えば、どうして名前を知っていたのか、わからないんですけど……。顔もよくわからなかったけど、私も立ち止まって挨拶を返したんです。そうしたらあの人、早足で近づいてきて……」


 べこっ、と音がした。希美が缶を持っている手に力を込めたのだ。表情が強ばっていた。


「いきなり……お尻を、触られました。それから、胸を、痛いくらい強く掴まれて……。ふ、服の中にも、手を……」


 彼女の声が震えを帯びる。目はここではないどこか遠くを見ていて、どろりどろりと次第に陰で澱んでいくようだ。

 不意に隣にいたさやかが、そんな彼女の手をぎゅっと握りしめた。はっとなり、彼女は握られた手に目をやる。そしてさやかを見上げた。


「もういいよ、ありがとう。……ごめんね、嫌なこと思い出させちゃって」


 そう言った彼女の声は優しい。だがその眼差しには強い光が宿っている。まだ知り合ったばかりの里桜にもわかった。彼女は怒っている。この上ないほど、憤っているのだ。


「帰ろうか。お家まで送っていくよ」


 手を離し、さやかは立ち上がった。話はこれで終わりのようだ。まだ聞かなくてもいいのか、とは思ったが、これ以上聞いてどうなることでもないだろう。里桜も、楓も立ち上がった。


「……あの、一つ気になることが」


 おそるおそるといった様子で、座ったままの希美が口を開いた。視線がおぼつかない。


「……えっと、こんなこと話したら、変な感じに思われちゃうかもって今まで黙ってたんですけど……」

「大丈夫だよ。話してみて」


 さやかがしゃがみこんで彼女を覗き込む。真摯な表情。希美も決心したようだった。辿々しく言葉を紡いでいく。


「あのおじさん、ずっと……謝ってたんです。『ごめんな。俺だってこんなことをしたくないんだ。すまん、本当に申し訳ない』って……」


  4


「さっきの希美ちゃんのお話、どう思った?」


 前を歩くさやかが振り向かずに聞いてくる。今まで沈黙が自分たちの間で渦巻いていたので、里桜は若干反応に困る。

 希美を自宅へと送り届けた後、さやか先導でどうしてか駅への方面じゃない大通りを歩いていた。夕方にはまだ早い時間だが、人通りは多い。


「そうねぇ。あの捕まったおじさんに何かされたのは間違いないみたいだったけどぉ」


 先に楓が答えた。「それはそうなんでしょうけど」と里桜は口を挟んでいる。


「でもどうして、謝り続けてたんでしょうか。謝るくらいなら、最初からしなければいいのに」

「それを全ての人がわかってたら、大体世界は安泰だよねぇ」

「でも、もしもの可能性もあるかも。その人は本当に、やりたくなかったとしたら?」


 さやかが言う。意味ありげな声色だった。「だとしたら?」と里桜は尋ねる。


「無理矢理やらされた、とか」


 口にしてから、さやかはふぅっと空気が抜けるような音を出して笑う。振り向いた顔はいつも通り明るい。


「あのさ。里桜ちゃんって何か好きなことある?」


 唐突な質問だった。


「……映画鑑賞、ですかね。たまに友達と集まって鑑賞会とかやります」


 少し考えてから里桜は答えた。「私はお姉ちゃんが一番好きぃ」と楓も便乗する。


「そっか」


 さやかは今度は声を立てて笑った。普段どこか大人びた雰囲気の彼女だが、その時はどこか子供のように無防備だった。


「……私はさ。好きな人と一緒に過ごしている時間が、一番好きなの。一番好きで、大切」


 しみじみと彼女は言う。そしてきゅっと唇を引き締めてから、続けた。


「だからこそ、こういう事件は許せないんだよね」

「えっ?」


 さやかは急に早足になって先に歩いていってしまう。


「怒ってるのよねぇ、さやか」


 戸惑う里桜に楓が声を掛けてきた。彼女もいつになく真剣な表情だった。


「雅子も言ってけど、そういうことなんだぁ。この一連の事件は、私たちへの侮辱なんだよね」


 楓はにっと笑って言うと、さやかを追いかけていく。里桜を慌てて付いていった。

 いつの間にか、駅前にやってきた。先ほど自分たちが下りてきた駅ではなく、どうやら一つ隣駅のようだ。いつの間にかそんなに歩いていたらしい。


「ごめん。実はあの子の学校がこの駅の近くでさ。ここで待ち合わせしようって連絡してたんだ。歩かせちゃったね」


 振り返ったさやかが両手を合わせて謝罪する。里桜は何が何だかよくわからなかった。


「あの、あの子って……?」

「さやちゃん!」


 喧噪を飛び越えるように、声が聞こえた。目を向けるとこちらに手を振りながら、女の子がこちらにやって来ているところだった。


「愛莉!」


 突然変異が起きた。さやかの顔がくにゃっとだらしなく緩んだかと思うと、彼女は一目散にその女の子のところへ駆け出していった。そのままぎゅっとその小さな体に抱きついた。女の子は難なく受け止め、彼女の頭を撫でてさえいる。


「はいはい、さやちゃんってば。みんな見てるからさ、一旦離して?」

「んー、あともうちょっとだけ」


 きゅっと一度強く抱きしめたあと、さやかは女の子から離れた。満足気な顔をしていた。大人びた面影は欠片も残っていない。


「楓さん、どうもこんにちは」

「こんにちはぁ、愛莉ちゃん」

「こちらの方は、新しいお友達?」


 愛莉と呼ばれる女の子は里桜を見て言う。どうやら楓とはすでに顔見知りのようだ。あたふたしているうちに、さやかが横から口を開いた。


「うん、一年生の里桜ちゃん。里桜ちゃん、この子は秋村愛莉あきむら あいりね」

「いつもさやちゃんがお世話になってます」

「あ、いえ、こちらこそ……」


 会釈をする愛莉に慌てて里桜は倣う。

 見るからにしっかりしてそうな女の子だった。しかし顔立ちはまだ幼く、背も里桜より小さめだった。よく見れば水色のランドセルを背負っているのがわかる。小学生なのだ。


「妹さん、ですか?」


 尋ねてみる。しかしさっき聞いた名字はさやかとは違ったような気がした。

 さやかはほんの僅かに考えるような間を空けてから、何でもないことのように言った。


「ううん、彼女」

「あ、そうなんですか」


 あまりに自然すぎたのでそう流してしまう。二秒ほど経ってから、「彼女!?」と里桜は心の中で叫んでいた。


「あれ、さやちゃん、それ言っちゃってよかったの?」

「大丈夫。里桜ちゃんは信頼できる人だから」

「まあ、さやちゃんが言うならそうだよね」


 勝手に話が進んでいる。里桜は呆然としている他なかった。


「じゃあ私たち、ここで帰るね。調査報告は明日ってことで」

「はーい、お疲れさまぁ」


 さやかはそう言ってから歩き出し、愛莉はこちらにぺこりと頭を下げてから彼女に付いていった。そして並んだ二人は至極自然に手を繋ぐ。指を交差させる恋人繋ぎだった。


「びっくりしたぁ? さやかの恋人が、あの愛莉ちゃんだってこと」


 楓がにまにまと笑いながら言ってくる。里桜はまだドキドキしている心臓を押さえた。


「やっぱり彼女さん、なんですか」


 去っていく彼女たちの背中にはそれなりの体格差がある。端から見たら似てはいないが姉妹にしか思えないのだろう。というか里桜にとってもそうだ。


「さやかはねぇ、小さい女の子しか好きになれないの。恋愛対象っていうのがわかりやすいかなぁ。ちなみに愛莉ちゃんは、十歳だったっけぇ」


 私たちも帰ろうかぁ、と楓は駅の方へ歩き出す。固まっていた里桜だがぎくしゃくと足を動かし始める。

 一見普遍的なさやかがどうして生徒会にあの部屋にいるよう言い渡されたのかがわかったような気がした。

 まあ納得はできないけど、と里桜は思う。振り返って見たさやかと愛莉は、お互い笑い合っていて、とても幸せそうだった。


  5


 翌日。じりじりと授業時間は過ぎていき、ようやく放課後を迎えた里桜は手早く荷物を纏めていた。


「里桜、今日も生徒会の何かあるの?」


 美月が声を掛けてきた。もちろん花も一緒だ。


「生徒会活動に休みはないのだ」


 里桜は少し気取ってそんなことを言ってみる。実際は、その生徒会からは段々かけ離れた活動になってきているわけだが。


「具体的に、どんなことしてるのー?」


 花が美月の肩に肘を置いて前のめりになる。「あたた、ちょっと重いから花」と本人に抗議を受けていたが意に返さない。


「まあその、事件の調査みたいな?」


 里桜は頬を掻きながら言っている。昨日からの探偵や刑事のような立ち振る舞いと、これからその続きをするという優越感でつい口にしてしまった。


「何それ? 里桜、そういう映画見て影響されたんでしょ」

「ち、ちがうよぉ。ほんとなんだってば」


 美月の言葉にむっとした里桜はこれまでの顛末を語る。しかしヘンタイ部のことを一から説明するのは骨が折れるため、生徒会に携わる人と、置き換えて説明した。あまり的外れではないはずだった。事件の調査に関しても、裏で操る黒幕がいるかもしれないというのはひとまず伏せておいて、細々した事件に関連性があるかもしれないからということにしておいた。


「すっごーい、何か里桜が好きな映画みたいだね」


 花は素直に感心していたが、美月は複雑な表情で何やら思うところがありそうだった。


「生徒会って、そういうことまでさせられるの?」

「えっ」

「危なくないの? それ」


 眼鏡の奥、やや上目遣いで彼女が言ってくる。心配してくれているのだ、とすぐに気づいた。

 里桜はあえてにこやかに笑う。


「平気だよ。いざとなったら」

「いざとなったら?」

「アンジェリーナ・ジョリーみたいに、スマートに応戦するから」


 あはは、と花が笑い出し、美月もそれに釣られた。里桜も笑顔を浮かべる。


「じゃあ私、行くね」

「わかった。ほら花もテニス部あるんでしょ」

「あー、そうだったねー」


 美月たちに手を振って、里桜は教室を飛び出した。

 調査だ、調査だ、調査だ。事件の調査だ。

 探偵みたいな気分になって浮き足立っているのは、やはり認めなくてはならないようだ。


  6


「あっ」

「あっ」


 中庭を突っ切り、特別棟の玄関前までやってきた。そこで里桜は、さやかと鉢合わせになる。


「やっほ、里桜ちゃん。これから部室、でしょ?」

「あ、はい。そうです」

「じゃあ一緒に行こうか」


 さやかが手招きして先に歩き出す。里桜はやや気後れしながらも彼女の隣に並んだ。


「あたしに失望した?」


 地下に下りる階段に差し掛かった時、不意にさやかが言ってきた。固い口調に里桜はびくっとなる。


「失望、ですか」

「そう。澄ました顔しやがって。女のくせにロリコンかよ、気持ち悪りぃって」


 さやかは笑っている。だがそこには何の感情も温度もなく、無機質だ。

 彼女は階段を下りながら足下に目をやる。


「……私もね、この答えに辿り着くまでそれなりに試行錯誤はしたの。男の子とも付き合ったし、女の子とも付き合った。年上の男の人とも関係を持ったし、女の人もそう。でも、ダメだったの。何だかいつも相手に、嘘をついているような気持ちになって」


 彼女の手は木製の広い手すりをなぞる。指先が物憂い気に動いていた。


「そんな時にね、ある女の子に出会ったの。その子は小学生で、五年生だった。すごく可愛くて素直な子でね。あたし、すぐ好きになっちゃったの。自分でも最初は、彼女に抱いた気持ちが何なのかなんてわからなかった。でも気づいたの。相手に向かって一直線に、駆け出したくなるみたいな感じだったから」


 地下にたどり着いた。相変わらず薄暗くて、じめじめとしている。しかし今日はどこか暖かさが混じっているような気がした。春の陽気が、迷い込んだのか。

 さやかは立ち止まり、こちらを振り返った。そして笑う。


「愛莉はね、三人目なの。あの子はとても賢いし優しいし、とってもいい子なんだよね。あたしには、ほんともったいないくらい。だからあたし今、とっても幸せなんだ。それに愛莉のことも、目一杯幸せにしてあげようと思う。あたしのせいであの子がとか、うじうじ悩んだりもしたけど、もうやめたんだ。そういうのって、付き合ってくれてるあの子に、失礼だもんね」


 里桜は考えていた。だがそれも固まり、ゆっくりと口を開く。


「なら、いいじゃないですか」

「えっ?」

「さやかさんたちが幸せなら、それで。世界の常識とかそういうの、関係ないです。人はみんな、幸せになるべきですから」


 目の前で笑ってみせる彼女が、どれだけの苦悩を重ねてきたのかはわからない。でも里桜は言いたかった。少なくとも、言ってあげるべきだと思った。

 ぽかんとしていたさやかは、やがて力が抜けたように表情を緩める。今までで一番、ほっとしたような顔をしていた。


「……里桜ちゃんさ、変わり者だってよく言われるでしょ」

「友人にも言われてます」

「ふふ、そうだよね。……ありがとね」


 前を向いて、彼女は先に歩いていってしまう。やけに早足なのはきっと照れ隠しなのだろう。里桜は微笑ましくなりながら、付いていく。


  7


「今日は天気がいいですね。絶好の調査日和です」


 雅子が言い、燦々と降り注ぐ太陽に手を翳す。確かにその通り空は快晴で、形の整った雲がゆるやかに泳いでいっている。暖かく、過ごしやすい日だった。


「……雅子さん。その腕についてるのって、何ですか」


 いちいち尋ねなくてもいいのであろうが、里桜はそうせずにはいられない。雅子は翳している両腕を繋ぎ止める鎖を見て、ああ、と言った。


「手枷です。今日は外にお出かけするので、ちょっとアクセサリーは控えめにしてみました。似合いますか?」


 爽やかに笑い掛けられては、里桜も「素敵です」と言う他なかった。


「雅子はちょっと変わってる」


 里桜の隣を歩いていた桐が感情なく言う。そんな折りに春風が吹いて彼女のスカートが持ち上がり、一瞬見てはならないところまで見えてしまっていたのがわかった。里桜はもはや何も言わなかった。

 里桜と雅子、桐たち三人はよくわからない区画のそれなりに大きい商店街にいた。平日の昼下がりだが左右に立ち並ぶ商店は活気づいていて、それなりに人通りも多い。しかし里桜は自分たちがどうしてここにいるのかわかっていない。ただ雅子たちに付いてきただけだ。

 例のように第一特別教室に集まった面々は、とりあえず昨日調査で得た情報を交換し合った。里桜たちは「女児猥褻事件」の犯人が謝りながら犯行に及んでいたことを報告する。そして雅子たちも、「押し入り下着強盗事件」の加害者が被害者女性に対し「俺だってこんなことをしたくない」等の発言をしていたらしいと言った。

 ただの言い訳や、少しでも罪の意識を軽くするための自己弁護のようなものかもしれない。しかしこの、妙な符号は何なのだろう。場所も犯人もまったくバラバラな事件の、ほんの些細な共通点。無視はできないだろうと里桜は思う。

 だがまだ材料が少ない現状で頭を悩ませていても仕方ないので、次なる調査に踏み出すことにした。さやかと楓は「マヨネーズ会社員事件」。里桜は雅子と桐たちと一緒に「通勤ラッシュ露出男事件」を調べることになった。

 そんなわけで里桜たちは外に出てきたのだが、未だに目的地さえわからないのはいかがなものか。さすがに里桜は口を開くことにした。


「あの。私たち、どこへ向かってるんですかね」


 ふむ、と桐が顎に手を当てる。


「なかなか哲学的な質問」

「あ、いえ。人生においてとかそういう難しいお話ではなくて、単純にこれからどこへ行くのかっていうことです」

「なるほど」


 すると自然と先導する形で前を歩いている雅子がようやく話した。


「加害者の男性の、ご自宅ですよ」

「自宅ですか?」

「はい。ご家族からご本人のお話を伺おうと思いまして。奥さんと息子さんが一人、いるそうなんです。奥さんは専業主婦らしいので、この時間帯でもご在宅のはずです」


 本人とは加害者男性のことなのだろう。なるほど奥さんと息子さんが、と納得しかけたところで里桜はおかしなところに気づく。いや、おかしなところしかない。


「何でご自宅を知ってるんですか。しかも家庭環境まで」


 当然だがネットニュースには加害者に対してそこまで詳しい事柄が書かれているはずがない。それどころか完全に個人情報の範疇だ。


「楓」


 まるで里桜の思考を呼んだように桐が短く妹の名を告げる。


「彼女の情報ネットワークは広大でしてね。少し頑張れば日本の首相のスキャンダルも握れると言ってました」


 そういえば初対面の時、彼女に自白剤なるものを飲まされそうになったことを里桜は思い出す。その情報ネットワークとやらがどう出来上がっているのは知る必要もないし知りたくもなかった。おそらく作られた経緯は、姉の桐に近づくものを排除するためなのだろうが。

 そういえば、と歩いている最中に雅子がこちらを振り返る。


「さやかの話は、もう聞いたんですね?」

「えっ? あ、はい」


 いきなりの話なので戸惑ってしまう。雅子は再び太陽の光に自ら縛り付けた両手を透かすように伸ばす。


「随分前にありのままの姿を見せようって映画の主題歌が流行ったじゃないですか。あの映画でもそうでしたけど、ありのままの自分の姿を見せながら生きるのって、すごく大変だと思うんです」


 雅子が言うと、隣の桐がその歌を口ずさみ始める。あまりにも綺麗な声だったので思わず里桜は聞き入ってしまった。


「だから私たちは、わかりやすい先駆者になろうと思いまして」


 雅子の言葉に里桜は「先駆者ですか?」と鸚鵡返しした。そうです、と彼女は頷く。


「私たちがいたら、あるいは同じような思いを抱えている人たちも後に続きやすくなったりしませんかね。『あいつらがいるし、自分たちもちょっとやってみよう』という感じで。そうやって最初は一人だった演奏者が、やがては大がかりなオーケストラになるかもしれません。そう考えるとちょっと、面白くないですかね」


 里桜はちょっと思い浮かべてみる。一人ラッパを鳴らしていた演奏者の元に、やがて様々な楽器を携えた仲間が集まって一つの曲を奏で出す。なかなか爽快な眺めだと思った。映画なんかでもきっと、映えるワンシーンだ。


「いいですね、そういうの」


 里桜は頷く。雅子たちの振る舞いを少しは理解できたような気がして、嬉しかった。

 そして彼女たちが一連の事件を自分たちへの侮辱だと憤っていた、その理由も。

 桐が口を挟む。


「でも雅子はちょっと、目立ちすぎ」

「むー」


 可愛くないですかこれ、と彼女は不満げに手枷を眺めている。これは里桜も言うしかなかった。


「桐さんの方が、もっと悪い意味で目立ちすぎだと思います」

「むー」


  8


「ここですね」


 里桜たちはとある一軒家の前に立っていた。

 モダンな佇まいでそれなりに大きく、中庭があって門までついている。素敵なお家、という他ない。こんなお家を持つような人がどうして公衆の面前で露出なんて、里桜は心底思った。まあやる人はやるかもしれないが、それなら雅子たちの言う誰かに操られてというものの方が納得できる内容だった。

 門を越え、玄関の前へ。そこにあるインターホンを押した。

 中で軽やかなチャイムが鳴るのがわかったが、しばらく待っても誰も出てこない。


「竜宮城から来ました」


 雅子が唐突にそう玄関に向かって呼びかける。


「何ですか、それ」

「いえ、ちょっと突飛なことを言ったら居留守でも出てくるかもしれないと思いまして。あの時助けた亀が恩返しに、って」

「多分、いたずらだと思われるだけだと思いますよ。それにそれは鶴の恩返しです」

「そうでしたか」


 結局家の人が出てくることはなかった。諦めて「帰りましょうか」と踵を返しかけた里桜を、雅子が呼び止めた。


「ちょっと待ってください。留守にしろ居留守にしろ、不用心すぎやしませんか。玄関が開けっ放しです」


 雅子がドアノブを引いただけで、玄関の扉がこちら側に開いた。鍵が掛かっていなかっただけではない。ちゃんと閉まらずにうっすらと扉自体が開いていたのだろう。


「……少し、嫌な予感がします」


 そうひとりごちて、雅子は中へ入っていく。土足で上がっていく雅子と桐に続いて、里桜はちゃんと靴を脱いでから家の中へ入る。


「いいんですか、勝手に上がって」

「仕方ないと思います。どうやら今は、緊急事態のようなので」


 断定的な口調がいまいち腑に落ちないが、止めはしない。雅子はそのまま廊下の左側の扉を開けた。

 中は居間になっている。広い。ソファやテレビなど、置かれている家具も大きいものばかりだった。


「えっ……」


 そんな部屋の真ん中に転がっているものを見て、里桜は一瞬自分の目を疑った。最初は、そういうインテリアなのかと思った。

 それは人だった。女性が荒縄のようなもので手足を縛られて転がされている。着ている服がところどころ裂けていて、血が滲んでいた。彼女は泣きじゃくっていたが、入ってきた里桜たちに気づくと猿ぐつわをはめられた口で必死にうーうーと唸り始めた。


「雅子さん、これは……」

「ええ。おそらくこの家の奥様だと思います。息子さんはどうやらまだ学校のようですね。難を逃れたようです」


 雅子は冷静にもがく女性の元へ行き、縄を解きにかかった。しかしよほどきつくしてあるのか、なかなか解れないようだった。


「縄がミスチョイスですね……。この縛り方じゃまるで梱包みたい。痛いばかりで何の工夫もないし、それにこの傷は……」


 ぶつぶつと呟いていた雅子の手が縄を緩めたところで止まった。


「どうかしたんですか?」


 彼女の隣にしゃがみこんで足の縄に奮闘していた里桜は不思議に思い尋ねる。何かに気づいたような顔だった。


「傷の一つが、つい今し方出来たばかりの新鮮なものです。きっとこれをつけたのは……」


 まだ血がじわじわと染みている傷をのぞき込んで彼女が言う。その時だった。

 ギッ、と近くにあるソファが軋んだ気がした。その瞬間里桜は、雅子に両手で思い切り突き飛ばされている。

 えっ、と思った時、彼女の背中に黒い蛇のようなものが襲いかかるのが見えた。噛みつくのではなく、胴体をしならせ全身で体当たりするような感じだった。

 里桜の尻が床にぶつかる。痛かったがそれどころではない。いつの間にかソファのところに男が立っていた。息を切らし目を見開いて、手には何かだらりと長い紐上のものを持っている。鞭だ、と気づいた。それは黒塗りの一本鞭だった。


「何だよおまえら……何で入ってくんだよおまえらぁっ……!」


 男は口から泡をこぼしながら叫ぶ。明らかに冷静な状況ではなかった。おそらく彼が夫人を縛り、鞭でいたるところに傷を作った張本人なのだろう。

 男がばっと腕を振り上げる。鞭の一撃が来るかと身構えたがそうではなかった。


「こんなの……聞いてねぇよっ……!」


 そう譫言のように言い、彼は入り口に向かって一目散に走り出した。そこには仁王立ちしている桐の姿がある。


「桐!」


 雅子の鋭い叫び声が聞こえた。それに対し桐は薄く唇を開き、「了解」と言葉を発したように里桜には見えた。


「どけぇっ!」


 男が走りながら桐に向かって鞭を振るう。ぶつかる、と思った。しかし違う。うねりながら体当たりしたそれの動きはぴたりと止まった。桐が片手で受け止めたのだ。


「なっ……」


 男には驚愕する暇も与えられなかった。飛び上がった桐の膝蹴りが顎にクラッシュしていた。ごぶっ、と濁音を走って彼の体は傾き、そのまま床に倒れ込む。同時に着地した桐のスカートが持ち上がりとんでもないものが見えそうになったが直前で里桜は目を閉じた。


「さすが桐です。それじゃあ、さっさと縛り上げちゃいますか」


 立ち上がった雅子が、夫人から外したらしき縄を持って気絶した男に近づく。そしておそろしく慣れた手際で縛り上げていった。


「雅子さん、血が……!」


 その時里桜は、雅子の制服が裂け、背中に大きな傷が出来ていることに気づく。


「かすり傷ですよ、こんなの。行きつけの女王様の方がもっと強烈で、刺激的な鞭振る舞いをしてくれます」


 手を止めないまま雅子が言う。行きつけとはどんなところなのか気になったが、今は聞いている場合ではないだろう。


「警察と救急車、呼んだ」


 スマホを手にした桐が声をかけてくる。それを合図に作業を終えたらしき雅子も立ち上がる。男はエビ反りのような姿勢でやや芸術的に縛り上げられていた。


「わかりました。では私たちはそろそろ退散しましょうか」

「えっ、帰るんですか?」


 思わず聞き返している。雅子も桐もさっさと玄関に向かい始めていた。


「ええ。状況はそこにいる奥様が説明してくださるでしょうし、警察に私たちがここにいる理由を説明できませんから」

「撤退あるのみ」

「あ、待ってください!」


 慌てて追いかける。今日は何だかよくわからないまま付いていくばかりだな、里桜は思った。


「あ。奥様、お邪魔しました。素敵なお家ですね」


 一度雅子が振り返ってぺこりと頭を下げた。まだ床に座り込んでいる彼女は、「えっ、ああ……」と上の空の返事をした。


  9


 里桜たちは再び同じ商店街を今度は逆に歩いていた。まだ夕暮れですらないのが不思議で、里桜は能天気に光を注いでいる太陽を見上げた。もう何時間も経っているような感覚だったのだ。


「私、今回の件で確信しました。この一連の事件には、黒幕がいます」


 唐突に、雅子がそう言い切った。彼女は両手に手枷が付いている上に背中には先ほどこさえた傷があるので、時々通行人にぎょっとされている。


「えっ、そうなんですか」


 里桜は聞き返す。今日はずっとそんな調子だ。


「はい。束縛の仕方は稚拙でしたし、鞭の使い方もまるでなってない。それなのに上級者向きの一本鞭なんか使ってました。明らかにミスマッチです」

「でもただ単に慣れていなかっただけなんじゃないんですか?」

「それがおかしいんですよ。人を縛り上げて鞭を振るうような人間が、慣れてないなんてことありますか。こういうことを実行に移す場合、ある程度のステップは踏んでいくはずなんです。でも先ほどの男にはまるでそんな感じは見られなかった。いきなり実行した感じでした。つまり――」

「――やりたくないのに、やらされた」


 雅子の言葉を桐が引き継ぐ。「人の台詞をとらないで」と不満げな雅子だったが咳払いをして続ける。


「それにあの男が言っていた言葉、覚えてますか?」

「『こんなの……聞いてねぇよっ……!』」


 臨場感たっぷりに桐が再現する。


「そうです。決定的ではありませんか。彼は誰かから指令を受けて、やらされていたんですよ。間違いない」


 自信たっぷりに頷く雅子。そうだろうか、と里桜はいまいち決めかねていた。


「とにかく今回の一件で私、堪忍袋の緒が切れました。崇拝しているマリア像に泥を塗られたキリスト教徒並みです。こういうことをやりたくもない人に無理矢理やらせるというのは、許されない冒涜ですよ」

「どうするの?」

「首謀者をひっつかんできて縛り上げ、SMというものがいかに神聖で信頼性が必要とされているものか、長々と説教してやります」


 雅子は珍しく鼻息を荒くしていた。相当に憤慨しているようだ。

 でも、本当に黒幕なんているんだろうか。

 ふと、そう思う。仮にいるとしても、まったくその人物のイメージが湧いてこない。それが黒幕のいるということをいまいち信じられていない理由だった。

 一体どのような思いで、人に無理矢理こんなことをさせているのだろうか。それがまったく感じ取れないのだ。まるでコンピューターが無差別に選択して、何の思慮もなく行わせているような無機物さがある。そのイメージに少し里桜は背中が薄ら寒くなった。

 突然、軽快なメロディが鳴り響く。とある海賊映画のメインテーマだ。里桜のスマホだった。

 画面を見ればさやかから着信が来ていた。そういえば連絡先を交換したことを思い出し、里桜は電話に出る。


「はい。どうしました、さやかさん」

「どうしよう里桜ちゃん。何なのこれ、訳わかんない……っ」


 通話口の向こう側から聞こえてくる彼女の声は明らかに取り乱している。あちこち歩き回っているのか、呟く声が遠くなったり近くなったりしていた。


「さやかさん、何かあったんですか?」


 先ほど自分たちの身に降り懸かった出来事を思い出し、里桜は慌てて尋ねている。

 一度深く深呼吸するような音が聞こえて、それから彼女は悲痛な声で告げた。


「――愛梨が、誘拐されちゃったの」

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