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ハルは知っている・1

短めです。

『きゃっ、ごめんなさい……!!』

『……君は……』

『もっ……申し訳ございません、殿下……!!私……私……っ!!』

『……そんなに怯えないで?君は?』

『あ……』

見つめあった二人。背後に咲き誇る春の花々はまるで二人の出逢いを祝福するかのように――――













「うげっ、なんだこりゃ。……おいおい本気マジか?」


思わず一昔前の少女漫画か?と突っ込んでしまった俺は悪くない。絶対に悪くない。



隣に置かれている気合い入った同人誌ほんとは明らかに違うヤル気無さげなこの紙束。これはクリスティーヌが『まぁ知識として知っておきます?知らない方が精神衛生上良いですよ?』と言いながら教えてくれた―――『薔薇の箱庭』とやらのストーリー(これが驚くほど細かい)が書かれたモノだ。

乙女ゲームとやらについての知識が皆無という訳ではないが――――冒頭の部分で早くも胃もたれを起こしそうになった。


というか、妹よ。

お前これを平然と書き上げるとか、何者?


同人誌といいこれといい、あいつ絶対ヲタクっつー部類だろ。



何と云うか、俺は乙女ゲームというものをナメていた。

まさかこんなに精神的な闘いを挑まれる代物だったなんて……!!



早々に全文を読破することを放棄し(すまん、妹よ)、必要そうな『あらすじ』と、親切に『実際に起きたストーリー』とを抜粋したモノに目を通す。


うわー、ぶっちゃけこれだけでも大概有り得んわー。


俺は再びヒルダに謝りたくなった。

何をだ。

総てだ。




そして目を通していけばいくほど不思議な感覚になる。

やっぱり、この『薔薇の箱庭』とやらは俺の知っている『剣の刻印』と似ている―――似すぎている。


俺も妹もお互いが知っているところは何一つ重ならないはずなのに、照らし合わせてみると奇妙に重なってくる。



これは一体何を意味しているのか。



「もうちょい情報が要るなぁ」



そう。

ただゲームを追いかけているんじゃない。ゲームとして知っていたハイヴァルクは、他の誰でもなく俺であり、今の俺はそれ例外の何者でもないから。

やっぱりいい人生には情報どりょくを先取っておくに越したことないだろ?



それに。


ちらりと視線を動かす。そこには、手元に置かれたひとつの『書類』。

これは次の任務に必要になるもので、出来るだけ多くの情報が必要になるモノだ。


間違いなく、ひとつの『カギ』になる任務ソレは、まだあやふやな部分が多い。



きっと、これは『始まり』になるはず。



その為には最高の『始まり』を演出しないとな?





兄貴や妹が見たら『何か企んでいる』と云われる笑顔が思わず零れた。






……あ、そういえば。


手元の『資料』を見ながら不意に思い出した。


こんなコッテコテな演出をしている『薔薇の箱庭』だけど、ひとつ、既視感を感じた所がある―――プレーヤーが望むような『お約束』があることだ。



さて、『剣の刻印』の『お約束』はどうなっているのか……




『お約束』をするであろう兄貴やヒルダを一瞬思い浮かべながら―――俺は再び資料に視線を戻すのだった。



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