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ハルさんは見た・2

「…………ん?」








ぴた、と足を止める。

あー、なんでまたこういうタイミングにばっちり引っ掛かるのかなぁー、俺は。

と内心思いながら『こっちに来い!!』と凄い眼力で見てくる彼女に苦笑いを送りつつ足をそっちへ向け直した。



「珍しいな、お前が王宮ここに足を運ぶのは」

「仕方がないでしょ、貴方最近全然出てこないんですもの」

「湾岸地区の担当外れたからなぁ、俺」

「理由を付けて来なさいよ」

「ははは、無理無理」

「ほほ、ふざけるな?」

「何で疑問系なの、マリィ」

「五月蝿いわよハル」



ふん、と昔と変わらない態度で彼女自慢の銀髪がさらりと払われる。……こういったところ、昔と全ッ然、変わんねーなコイツ。


で、それはいいが。


「お前こんなところでマジで何していたんだ?」


ちら、と引っ張り込まれた茂みを見る。

……どうして俺はマリィに連れられて覗きをすることになったんだ?









************









「…………うわー…………こりゃぁ…………」


潰れる。

噂には聞いていたが実際眼にすると何かが潰れる。

とりあえず俺の中の何かが確実に押し潰された。


「何を仰っているの、これはまだまだ序の口ですわよ?」

「…………マジで?」


コレで?ヤバい既に胸焼けで死にそうだ。


目の前に居るのは第三王子(ヴィヴィアン)御一行様。別に居るのは構わない。王宮(ここ)愚弟(おとうと)の家だしな。


……でもコイツ――正確にはコイツら――何を考えているんだ?





「アリス、こっちだ。君に贈りたいモノを準備しているんだ」

「ヴィー、一体なぁに?」

「君の引き立て役として最高の演出になると思うんだ――ほら」

「まぁっ、凄い……!!こんなに沢山の宝石、キラキラしていて……!!」

「君の美しさには敵わないよ」

「本当にお美しい」

「アリス、君の前にはどんな宝石いしも霞んでしまう」

「ふふ、皆さんお上手ね」



……馬鹿だ。

馬鹿がいる。




つーか何であんなにゴロゴロと取り巻きがいるくせに誰も止めないんだよ!?




「ほーんと眼が腐りそうですわ」

「…………」

ああ、うん。

本当に腐るなコレ。


というかさ。


「なぁ、マリィ?」

「何ですの?」

「本ッ当ぉぉーーーに聞くのイヤなんだけどさ。この愚弟(バカ)は学園でもこんなんだったのか?」

「…………ふふ?」


あ、そう。

マリィ、笑っているけど表情筋死んでいるぞ。

というかもっと酷かったんだな?

そういうことだな?


どうしよう、ヒルダに土下座したくなってきた。



「私、一個人としてヴィヴィアン様のこと張り倒して差し上げたいわ」

「……気持ちは解るから止めてください」

「ええ、だから我慢しているでしょう?ヒルガディア様が何も『為さらなかった』のに」

「………………」



確かにコレは酷い。ぶっちゃけ有り得ないレベルなんだが……こいつこんなに馬鹿だったか?



超絶悶絶したい所を何とか堪えた。頑張った俺、偉い俺。




「ヒルガディア様は一体どういう御気持ちでコレを御覧になっていたのでしょうね?」

「…………ああ」




ポツリと呟かれた言葉はすとんと落とされた。

俺の、兄貴の知らないヒルダ。

物語が始まるのヒルダ。


王宮で嘆願をした侯爵令嬢。


女性の身で国王に訴えたあの姿―――あれはまだたった1年と少しだけ前のこと。


その時は詳しく現状を知らなかったけれど。






「まぁそろそろ制裁されるべきよね、彼方は」


ふふ、とマリィが笑う。

――――黒い。優雅に笑っているくせに笑顔が黒い。


「マリィ?お前何を企んでいる?」

「イヤだわハル。企んでいるのは私じゃないわ。貴方も良く見ているがいいわ―――面白くなるわよ?」

「……………………」


何だ?

マリィの奴、一体何のフラグを知っていやがる?



「ハル、覚えておいて。嵐は意外と近いところで起きるわよ」

「……それは忠告か?」

「いいえ、事実ね」

「学園から?」

「発端はそうね―――ヒルガディア様の周辺、良く見ておいてね」

「解った」




マリィがわざわざ口にするということは嵐はすぐそこと云うことだ。


さて、これはどう捉えるべきか。



近いうちにあの愚弟(バカ)は何かやらかすんだろう。




ならば用心に越したことはない。

つくづく騒動の中心な侯爵令嬢おひめさまだな、ヒルダは。本人の意識しない所で起きまくるから笑いと同情が紙一重か?





あー、また忙しくなるわけね。

とりあえず俺は早いうちに探りを入れないと。











――――それは驚きの事実を知る数日前のことだった。



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