それゆけケインくん!・1
本編10話にあった『実地訓練』ネタが入っています
実地訓練はぶっちゃけ苦痛以外の何物でもない。
言葉は厳ついけれど何てことはない。サバイバル実習をして無事に生還すりゃあいい。
……そう、この場合実地訓練自体に問題はない。
それよりも生還というのがミソだ。
如何せん現在の騎士団は紛う事なき男だらけ。
重要だからもう一度繰り返す。
男だらけ。
そりゃあ婦女子が騎士団を希望するなど殆どない。軍部にはそれなりに女性が所属しているが『騎士団』に上がることは殆どないのが現状だ。何故なら騎士団はおいそれと入ることが出来ない『事情』があるからだ。
そんな中で料理に精通している男などどれ程居るかって?――――答えは聞くな。
そんな連中が取り合えず作る食事、しかも騎士団のように整備が整っている訳でもない場所でなど。
はっきり言う。
地獄だ。
一応騎士団として日々肉体酷使をしている身としては、飯くらいマトモなものを食わせろ!!と言いたい。
だけど。
『何時有事が起こるか分からないですよね?だから平時から努力するべきでしょう?』
にっこりと笑いながら言う団長ののほほんとした、ほわんとした空気には誰も逆らえなかった。流石の俺でも無理。アレに逆らえる勇者がいるのなら是非御目にかかってみたいさ。
そういう経緯から騎士団ではこの実地訓練を『地獄の強化合宿』と呼んでいる。
ちなみに闘いの相手は自分の胃袋だ。泣ける。
まぁ少し前にヒルダやエレンが入団してから殺人兵器(勿論俺が作ったものも含む)が登場することは極端に減ってきたが。よくよく観察しているとどうやらエレンの奴が見込みのありそうな奴らに料理指導をしているらしい。ご苦労なこった。
で、そう。実地訓練だ。
流石に訓練でそう生易しい言い分など通ることはなく、またこの場面では入団して一番日の浅いエレンやヒルダがへばるのは想定内。
……そうなったら誰が飯を作るのかって?
残った俺らしか居なくね?(泣)
俺は一応努力はするべきだと考えた。当然俺の胃袋の為に。
生還は何もちゃんと訓練を終えればいいというわけではない。当然『実地訓練が全て終了するまで』だ。
寝首を取られること、食糧を自給出来ること等、実は裏事情を鍛えることが目的なこの訓練の実態を―――正確に捉えるまでに騎士団に残れるか。実はそんなことも試されているのだ。
ま、俺は直ぐに気づいたけどな。
さーてエレンやヒルダはちゃんと気付くんだろうか?
なんて内心ほくそ笑みながら訓練前に調達しておいた(当然騎士団の調理場からだ)調味料をゴソゴソと取り出す。
味の無い肉など納得出来るか!!
キチンと準備しておくのも生き抜くにはアリだろ!?
俺は生き抜く為に手段は選ばん。
――――――そして大量の香辛料は結果としてちょーっとばかり刺激的な味に仕上がってしまった。
まぁ食えるからいいよな?
「「いいわけあるかボケぇ!!!!」」
……後でアインと何処からか現れたハルから長すぎる説教を喰らう羽目になった。
何故だ。