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ゴッド・イーター ‐神喰者‐  作者: 春夏冬
一章 ‐呪われた左腕‐
1/2

プロローグ

電撃文庫に将来応募する予定の作品です。

参考にしたいので、アドバイスなどよろしくお願いします。

 午前一:〇五(ひとまるご)

 

 静寂に包まれた闇の街。

 まだ、中心街は明るくライトやネオンが夜空に浮かぶ雲を照らす。

 そこから数百m離れた住宅街の上空に、不気味な青白い光がうごめいていた。

 それはいつしか頭、体、尾を形成し、八頭八尾の大蛇へと変貌を遂げる。


「……八頭八尾の蛇。八岐大蛇ヤマタノオロチか」

櫛名田姫神クシナダヒメを喰らおうとして、須佐之男命スサノオノミコトに倒された伝説のかいぶつ……」

 住宅街にポツンと建つ雑居ビルの屋上に、その男女は座っていた。黒衣の和服を着た少年は、左腕に金属製の小手をして、背に十文字槍を負っている。巫女が着るような赤服の少女の手には、古い本が持たれていた。

「――――じゃあ、行くぞ」

「はい。兄様あにさま

 少女がそう答えると、本を放り投げた。本は原型を留めず、光の粒となって消滅する。

 2人は、屋上から暗闇の空に飛ぶ。その身体は重力に逆らうように宙に浮いていた。

 少年が足を踏み込んだ場所には、空間の波動が起こっていた。少女は、足を一切踏み出すことなく最初の踏み出しだけで飛んでいた。

 少年が使っているのは、空間歩行という呪術である。

 祓魔師が使う戦闘術の初歩中の初歩である基本的な呪術だが、足に呪力を集中させなければならないため、かなり高等なものになる。

 少女が使っている呪術も、少年の呪術と同じ系統のものだ。

「――――夏虹耶かぐや、先に行け。俺もすぐに追いつく」

「わかりました。兄様」

 夏虹耶かぐやと呼ばれる少女は、嬉しそうに答えた。すると夏虹耶かぐやは、思いっきり空間を蹴った。それは、さっきの数倍の速度だった。

 初速と変わらない速度で、夏虹耶は八岐大蛇ヤマタノオロチの首のひとつに向かっていく。腰に携えられた日本刀を鞘から抜くと、その刃は、甲高い金属音と共にその姿を現した。

 綺麗に磨かれた刃は、雲の隙間から照る月明かりを反射させていた。

「行くよ『神威かむい』。――――はぁっ!」

 夏虹耶は威勢よく声を上げて、その首に向かい、スピード、刀の重み、振りかざす力の全てをその刀の刃に込めて切りかかった。

 しかし、それは大蛇の堅い鱗に当たった瞬間。その力は、全く逆の方向に変わった。

「なっ!」

 刀を持つ夏虹耶の手を凄まじい衝撃が襲う。しかし、刀を離す事はなく、すでに次の行動に移行していた。

「ふっ!」

 再度振りかざす刀は、呪術によって青白く光っている。

 鱗に刃が突き刺さり、数センチの切り込みが入る。しかし、刃は途中で完全に停止し、その切れ口から抜く以外にすることがなかった。

 その後、夏虹耶を襲ったのは、八つの頭と尾による連続攻撃だった。夏虹耶は、その攻撃を余裕にかわしていく。

「まさか、神威の強化された刃すら通らないなんて……ッ!」

 そう囁いた夏虹耶にスキが生まれた瞬間。尾が赤服の少女に向かって行き、少女の腕に直撃した。

 回避行動をとっていなかった夏虹耶は、そのまま住宅街に吹き飛ばされる。

「夏虹耶っ!」

 その様子を外部から見ていた少年は、夏虹耶を助けに空間歩行最高速度で使い、吹き飛ばされた着地点にまで向かう。

 少年は、住宅ギリギリで夏虹耶を受け止めた。

「間に合った……」

 夏虹耶を雑居ビルの屋上に寝かせると、少年は、安堵の呼吸交じりに呟く。少女は、腕の尾が直撃した部位をを押さえたまま、首を持ち上げる。

「……すいま……せん……油断……しました……」

 夏虹耶の腕は折れていた。その激痛に耐えながら嘆く。

「大丈夫だ。とりあえず治療を……」

 そう言って、治療に移ろうとした時、夏虹耶は少年の腕を制す。

「大……丈夫……です。自分で……治療……出来ます……から……」

「だが……」

「……だから……兄様は……あいつを……」

 吐息混じりの声は、死にかけている人の様だった。

「わかった。行ってくる」

「はい……気をつけて」

 少年は頷くと、八岐大蛇ヤマタノオロチの方向に向かって走り出した。

 八岐大蛇ヤマタノオロチに約40mの所で、少年は足を止める。

「まさか、『三大神刀』に名を連ねる神威の強化刃きょうかばすら入らない鱗とはな……さすが、伝説のかいぶつだな」

 そういいながら、背負っている十文字槍を手に掴み、回しながら持ち帰る。

 少年の眼が、八岐大蛇ヤマタノオロチの目と合うと、戦闘が開始された。

 先手は、少年だった。

 一歩で大蛇おろちの首筋付近にまで接近し、槍で軽くひと突きする。しかし、当然のように軽く弾かれ、すぐさま計16の頭と尾が攻撃してきた。

「これ程か……」

 少年はそう囁くと、連続で襲い来る頭と尾を軽々と避けていく。小刻みなステップによって、空間歩行を行い、連撃を全てかわした。

「仕方ないか……」

 頭のひとつが噛みつきに来た時、垂直にステップし、大蛇おろちの遥か上空に飛び上がった。

 大蛇おろちの頭が全て少年の方を向いた時、少年は槍を構えていた。

「これで終りにする」

 そう力強く囁くと、槍頭の部分が白く光りはじめた。少年の周りには、光の霧がが漂っている。

「――――おりゃよっ、と!」

 そう叫びながら、少年は槍を放った。それと同時に、少年も大蛇おろちに向かって降下して行く。

 槍は、高速で降下し続け、背中の鱗に一度当たった。しかし、貫通は出来ず、一度金属音を立ててバウンドする。

 すると、当たった鱗の部分から白い光のホールが出現し、背全体に拡大していく。

「空間を捻じ曲げて鱗を通らなければ、どんな物だって貫通する……はぁっ!」

 槍は、空間を捻じ曲げる媒体でしか無かったため、もうすでに威力は鱗に当たった瞬間に無となっていたが、少年はそれすらも計算づくだった。

 少年は、柄尻を降下の力も合わせて蹴り下ろした。

 槍は、少年の計算通り鱗を通過せずに大蛇おろちの腹を貫く。

 八岐大蛇ヤマタノオロチは、大量の青白い光の粒となって消滅していった。その粒は、住宅街を一瞬明るく照らし、すぐに消えていき、辺りはすぐに闇に包まれた。

「消滅に神式しんしきが無かったか……簡易的に復活させられた奴か」

 

 少年が路上に刺さっていた槍を抜こうとした時、少年は振り返えって、左手を拳にして構える。

 突如、突風が吹いたかと思うと、少年の左腕に付けられていた金属製の小手が外れ、中から黒い岩のよな腕が出現した。赤い呪詛が刻まれているその腕は、人間の腕ではなく、かいぶつの腕のようだった。

 拳が何もない場所で何かに当たり、その場から衝撃波が発生した。拳がぶつかる瞬間、相手の姿がうっすらと確認できる。

 白の鱗、長い体、短い四肢、背に生えた白い毛、迫力のあるつの。それは、龍だった。

 龍の頭が、拳に当たっていたのだ。

 しかし、龍にも少年にも、追撃をするような素振りは無い。

「さすがね。その呪われた左腕の神喰かみくいさん」

 その声は、夏虹耶とは違う女の声だった。

「ったく、お前は毎回遅いんだ」

 龍の反対に居たのは、少年と同じような黒衣を着た少女だった。

「あれ? 夏虹耶ちゃんは? 朱音」

「ああ。ちょっとさっきの戦闘で怪我――――いや、腕を骨折したんだ。ちょっと治療してくれないか?」

「いいわよ。すぐに案内して」

「おう」

 そう言うと、朱音は軽やかにステップしながらビルに向かって行った。

 少女もその後を追って、龍に乗って夏虹耶の元に向かった。


 朱音と言う少年の腕は、元の人間の腕に戻っていた。

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