表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

ここは魔王城

「遅いですよ、オルト」

「申し訳ありません」


キュイを抱いたオルトバーンが移転した先は、この魔界唯一の城。その名も魔王城。中も外も漆黒の壁で造られたその城は、まさに「魔王が住んでるぜ! 」という雰囲気である。


「さて、そこの娘」

「へあっ!?」


オルトバーンの腕の中にいたキュイの首根っこがガシッと掴まれた。


「あなたに早速仕事です」


首根っこから引っ張り上げられ、足が宙に浮いた状態でキュイは呻いた。


「ぐえっ」


オルトバーンの匂いから解放され、キュイの意識が徐々に正常に戻ってくる。


「まずは選定の儀式を。そこで乳母に選ばれれば、正式に今日から乳母として働いてもらいます」


細い腕でキュイを軽々と摘み上げながら男が言った。キュイは目をパチクリとさせ、目の前の男を見返す。


キチンと整えられた真っ白な髪に、同じく真っ白なキメ細かい肌。笑っているかのように細い糸目の瞳の色は分からない。女性の様に細い身体をしているが、背の高さと声で男性だと分かる。

え〜と、この人は誰でしょうか? そもそも私、ここに連れて来られた理由もハッキリ分かってないのですが。


「…えぇっと、その乳母ってなんですか? 」

「……………」

「………あの……?」


どうしたのかな、この人? 笑顔のまま、固まっちゃいましたよ。っていうか早く降ろして欲しいのですが。首根っこ掴まれてるから首が詰まって苦しいんですよ。


「オルト、どうやらブランルージュの娘は馬鹿だったようですね」

「………」


………え。

今、この人馬鹿って言った? 笑顔でさらっと馬鹿って言ったよこの人!! オルトバーンさんも無言って、どういうこと!?


「ば、バカ?」

「まぁ馬鹿でも乳さえ出れば問題ないでしょう。乳母に選ばれたら、の話しですが」

「きゃっ!?」


突然手を離され、ドサッと床に落ちる。


「来なさい。選定の儀式を始めます」


薄い水色のローブを翻し、男の人はさっさと歩き出した。


「行くぞ」


床にへたり込んでいた私の腕を、オルトバーンさんが掴んで立ち上がらせた。


「ど、どこにですか!?」

「魔王様のもとへ」


わお! いきなり魔王様とご対面!? どうしよう、心の準備がまだ出来てませんよっ!


「ええっ魔王様にですか!? 無理ですムリです! っていうかなんでキュイが乳母に?? キュイはまだ子どもなのにっ……ハッ」


そうでした。私はまだ子どもでした。乳母って母親の代わりに自分のお乳をあげるんですよね? ムリですよ! 子どもの私はお乳なんて出ませんから!


「オルトバーンさんっ、キュイは子どもだからお乳はでませんよ!?」

「問題ない」

「はっ!?」


お乳でない乳母なんて問題ありでしょう!


「魔王様がお前を乳母にしたら乳など勝手に出てくる」

「え? 妊娠もしてないのお乳が出るんですか!?」


前世の記憶を辿っても、たしか妊娠しなければ母乳は出ないはずだったような…。あとホルモンのバランスとか? あ、でも魔族にはそんなこと関係ないのかな??


「魔王様の乳母となった者は皆自然と乳が出るようになっている。魔王様の乳母から出るその乳は、魔力が溢れ、濃厚で甘い蜜の様な味だそうだ。…一度飲んでみたいものだな」


ゾクゥッ!

あれ、なんか急に悪寒が…? オルトバーンさんが熱い目で私の胸を見てる気がするけど気のせいよね?


「いつまで待たせる気ですか。さっさと来なさい」


あ、さっきの男の人が戻ってきて怒られちゃいました……て、怖っ!

顔は笑ってるのになんか怖い! 何で? オーラ? 威圧感のある笑顔怖い!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ