23:00~ 帰宅の途にて
それにしても全く、不愉快な物語である。
卓也はそう思った。
11時も回り酒の席はお開きとなり、一人暮らしで居酒屋からそう遠くないところに住んでいた卓也は歩いて帰ることにした。
洋の話には驚くと共に不快になりかけたりもしたが、そんなのは些細なことである。
やはり久しぶりの旧友とのやりとりは楽しいものであったし、明日からの仕事の活力になった。
だからかもしれない。こんな無茶なことをしたのは。
繁華街からアパートまでの道の途中には役所がある。
昼は職員と一般市民の居場所である役所だが、夜にはどちらかといえばあぶれ者の溜り場といった様相を呈する。
適度なスペースと最低限度の清潔さ、そして一晩中消えることない灯りが彼らを引き寄せるのだろう。
ダンスやスケートボードを披露したり、彼らにとっては重要であろう話に熱くなったりする姿を、
微笑ましいとか汚らしいとかそんな感情は交えず、視野の端に納めるというのが卓也の常であった。
しかしその日は様子が違った。
恫喝するような声が聞こえた。驚いて見てみれば、どうやらホームレスのような男とそれを取り囲む若者たちの姿があった。
これが噂のホームレス狩りなのか、それとも場所の取り合いか、しかし卓也にはそんなことどうでもよかった。
若者たちのリーダーと思しき男はホームレスを今にも蹴り飛ばしそうな勢いであった。
これはまずいと感じた、がさすがに多勢の無勢、跳び込んでいく気にはなれなかった。
とはいえこのまま無視するわけにもいかない。洋もまったく余計な話をしてくれたものだ。
隣のビルの陰で少し考えた結果、卓也は警察に通報することにした。
これでは余計面倒なことに巻き込まれるのではないかとも考えたが、警察も面倒事に巻き込まれる前に早く立ち去ることを勧めてくれた。
卓也はそれに従うしかなくもやもやを腹に詰め込んだまま歩を進め、そしてパトカーとすれ違うころにやっと安堵することができた。




