遊ぶ少年
オマケです。
僕は愛の継承者、蕪木太々郎、七歳。パパは太郎っていう名前なんだ。
"あい"は知らないけど、"けいしょうしゃ"ってカッコいいよね。
気になることといえばアレかな?
実は毎朝毎夜、パパとママの部屋から変な声が聞こえてくるんだ。何やってるんだろうね?
この間、質問してみたら「絶対に負けられない戦いがある」って言ってた。僕には意味が分からないよ。
まあ、仲が良いのは僕も嬉しいんだけどね。
物心ついた時から、カッコいい拳法を習ってきたんだけど、パパに言わせると僕は天才なんだって。
僕には理解できないけど、喜んでくれているなら、気にしないよ。
あっ、ご近所のみっちゃんだ。
そういえば、この間教わった拳法を使ってみたら、みっちゃん気絶しちゃったんだ。
何でだろうね。ピクピクと丘に揚げられた魚みたいだったよ。
彼女、翌日から僕を見る目が可笑しいんだ。
何ていうのかな、ライオンさんみたいな目? 腕に鳥肌が立っちゃったんだけど、これって危険信号なのかな?
彼女には近づかない事に決めたよ。
「だぁ~れ、だッ!」
いきなり目を塞がれて、後ろから声がしたよ。
これは優子おねえちゃんかな? たぶんそうだよね。
おねえちゃんは七十二番目の拳法を使うと、褒めてくれるんだ。
今日もきっと待っているよね?
「えっと、……えいっ」
「はうぅぅぅうううん……」
やっぱり、座り込んじゃったよ。
おねえちゃん、"こうこうせい"なんでしょ? 学校行かなくていいの?
「もうっ、タタローちゃんは悪戯っ子ね」
怒った顔しているけど、実は違うんだって。この間、影から見てたパパとママに教えてもらったんだ。
これって、もっとやれって合図らしいよ。
だから、とっておきをプレゼントするんだ。
「はいッ! はいッ! はいッ!」
「ひあっ、あふっ、ぁあああっ」
あれっ? おねえちゃんも倒れちゃった。口をパクパクしてるよ。何が言いたいんだろうね?
みんな同じ反応するんだもん。つまんないよ。
暇つぶしに、もうちょっと遊んでもらおうっと。
「えっ? ちょっと、やめなさい! コラッ、お姉ちゃん本気で怒るよ!」
僕はもう七歳なんだ。そんな嘘に騙されないよ。
パパ直伝の技を……こうして、こうして……こうかな?
「だから待ちなさいって! あ、ソコは、ぁあああああああああッ――!」
僕は愛の継承者、蕪木次郎だよ。最近、近所の女の子達が従いてくるんだ。
好きにしていいって言うけど、僕はそうしているつもりさ。
今も、ほら、後ろでみっちゃんが睨んでいるよ。
こっそり覗いてたパパが、青い顔で去っていくのは何故だろうね。
何というか、ノリで……