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愛・武  作者: 七草 折紙
3/6

敗北する男

どうでもいい内容だと筆がスラスラと進む……

 異世界の皆、こんにちは。

 俺は愛のさすらい人、蕪木(かぶらぎ)太郎だ。


 現在、絶賛迷子中なのだが、どうしたらいいかな?

 怪しい森に入って彼此一ヶ月、未だに将来を模索している。本当に帰れるのだろうか。いざとなったらマッサージ師になるか、宗教を広めるしかないと思っている。

 そもそも異世界に飛ばされた理由が分からん。なので、好き勝手にやらせてもらう。


 ……ん? 前方に誰かを発見、二人目の異世界人だ。アレは!


 長い耳とほっそりとした肉体美、何よりも超美形。


 間違いない、エルフだ!


 木陰で休む様が似合っている。淑やかで線の細い乙女達、ちなみに男は数に入れん。

 そう、エルフとは高貴で繊細な種族なのである。人よりも長く生きているせいか、性格も温厚なのが多いと聞く。

 その分、けしからん豊満なボディや夜のギャップがあったりすると堪らないのだが、目の前の女性は正にそのレアタイプだ。

 推定Eカップのその胸は反則だぞ!


 どうする? ……まずはコンタクトからだな。

 丁度、お嬢さんもこちらに気付いたようだ。


「やあ、初めまして」

「人間!」


 フレンドリーに接触したつもりだったが、エルフがいきなり矢を放ってきた。

 あの猫娘にしろ、この世界の住人は初対面で人を襲うのが習わしなのか?


 いや、違うな……そうか、そういうことだったのか。


 構ってほしいのだな、このツンデレめが! 愛を語るのが、そんなに恥ずかしいのか。

 ならば、期待に添うまで。全力でお相手しよう。


「聴技"愛は(ラブ)罵る事から始まる(・バッシング)"! ――この牝豚が! そのたるんだ身体は何だ! どうせ男と遊びまくっているんだろう!」


 ひたすら言葉攻めで追い詰める。

 冷静沈着そうなエルフの女性も流石に不快感を露にした。――今だ!

 その隙を見逃さず、後ろに回り込む。


「秘技"圧迫Mスタイル"!」


 背と背を合わせて、脚を脚で固定、両手で両手をロックして、ブリッジ!

 敵を締め上げると同時に、下手をすれば自分も圧迫されるという、攻攻一体(攻めて攻められる)の技。正に綱引き状態である。

 痛みと云う名の快楽が女を襲う。


「ホラホラホラ」

「あぁああああああーーーーーーッ、なにぃこれぇーーーーーーッ!」


 女が悶えてグッタリしてきた。この技に抗うすべはない。

 なにせ俺の武器は全身隅々にまで渡る。当然、背中だけで攻めることも可能なのだ。

 この状態でさらに追い打ちをかける。


「撫で技"背面さすりん機構"!」

「こほぉーーーーーーッ!」


 さすって摩って摩すりまくる。力加減を間違えれば意味をなさないその技は、師匠直伝の俺の得意技だ。

 女の反応が薄くなってきた。どうやら力が入らずに大人しくなったようだ。

 ならば次の一手に出るべく、今の体勢を解除するが――


「ジュルリ。もうダメだわ。我慢できない」

「へっ?」


 既に詰んだと思われた女が突如として、逆襲してきた。押し倒されて、俺の服が脱がされていく。

 あ、あれ? あの、エルフさん? 高貴で繊細な温厚な種族……だよ、ね?


「そうよ。アナタの言う通り。私は男と遊びまくっているの」

「ソ、ソウダッタンデスカ……」


 獲物を仕留めようとする猛獣の如き目に、俺の背筋がぞっと冷える。

 野性味溢れる活発さで、女が自分の服を放り投げる。彼女の方のスタンバイも完了のようだ。

 ということは、そのまま……


「いーーーーーーやーーーーーーッ!」




 逆に食べられちゃいました。

 頬が濡れているのは涙だろうか。今だ戦は終わらない。


 もう何回目だろうか。限界を超えたデスマッチに、意識が遠のいていく。

 薄れゆく思考の最中、最後に勝ち誇ったような声が聞こえてきた。


「この万人斬りのワタシをここまで追い込むなんて、アナタ誇ってもいいわよ。オーホッホッホッ!」


 気付いた時には女はいなかった。満足して帰ったのだろう。

 何だろう、この虚しい気持ちは。大切なものを失った気がする。


「この俺が負けた……」



 俺は愛のさすらい人、蕪木(かぶらぎ)太郎。屈辱にも、初めて敗北を体験したばかりだ。

 本日は改めて女の恐ろしさを知った悪夢の日となった。



 ……しばらく女性は控えよう。異世界恐いよー。


作品イメージはう○た京介先生です。

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