異世界へ来ちゃった男
気まぐれな、くだらない物語です。期待はしないで下さい。
世の女性諸君、おはよう。
俺は愛の求道者、蕪木太郎だ。
最近の自慢は、大画面のテレビを買ったことである。迫力あるスケベな映像を堪能する今日この頃だ。
ところで……
本当に異世界に来てしまったみたいである。神はいたのだな。
フッ、俺の願いが聞き入れられたようだ……
――ちょっとした冗談でした。スイマセン、帰して下さい。
此処はどこでしょうか? 行く宛てもなく、どちらへ向かえばいいのかも分からない。だいいち言葉は通じるのだろうか。
流石の俺もこの状況は愛せない。異世界で生き抜く度量を、俺は持っていないのだ。
デリケートな俺にサバイバルなど似合わない。ああ、ホテル暮らしが懐かしい。
「にゃっ?」
孤独な俺の耳に何かが聞こえてきた。可愛らしい声だ。俺の萌えセンサーが激烈な反応を起こす。
これは……
視線を下ろすと、目の前に大きな赤目を輝かせている、小柄な娘っ子がいた。ちなみに俺の身長は195cmと高めである。この猫娘は150cmといったところだろうか。
見た目は十代半ばだが、異世界常識は分からない。案外一桁の年齢、又は三桁ということもありえる。
下手に手を出すと捕まりそうな危機感があるが、ここは違う世界だ。
ノープロブレム!
例え実質百歳の老人だろうが、俺の愛に壁はない。見た目通りでいいじゃないか。見てみよ、この小動物のような魅力を!
痩せすぎず太ってもいない。出るとこは出ている素晴らしいプロポーションだ。
健康的な小顔が愛らしさを醸し出しており、髪もサラサラと艶が……い、い? ……ん?
……
……
……大発見しました。頭の上に注目。
髪の隙間から耳がピョコンと飛び出ていた!
――これはッ猫耳ではないか!!!
この牝がッ! 俺を誘惑するつもりか! その水着のような格好はそういうことか! ……いいだろう、俺の愛を甘く見ているのなら大間違いだ。
この娘、どうくる? さあ、来てみろ!
「勝負にゃッ!」
初っ端から何を言い出す? 頭が不憫な娘なのか? いや、違うな……そうか、そうだったのか。
……可哀想に、愛を知らないのだな。
幸い、言葉は何故か通じるようだ。ならば――
「……よかろう。秘伝の愛の調教術、たっぷりと披露してやる。さあ、来いッ!」
調教は甘くない。常に命懸けの高等テクニックなのだ。
油断することなく構える。
これぞ、愛天然流抹殺拳法を極めた者だけに伝えられる技――愛天然流教育指導だ。
その身に叩き込んでやろうぞ。
帰るんじゃなかったって? ふっ……そんな勿体無いことするわけないじゃないか。
だって猫耳だよ。ならば服の下には尻尾も隠れているはず。モフモフするまでは帰らん。
神よ、前言撤回だ。寄り道してもいいじゃないか。飽きたら帰してね。
そう、臨機応変が俺のモットーなのだ。さあ、折角来たんだ、たっぷりと堪能しようじゃないか。
「にゃにゃーーーーーーッ!」
来たか。ならば――
「まずは――掌術"髪サロン"!」
猫娘の拳を躱しつつ、すれ違いざまに髪を掬って、愛でる!
「はうにゃっ」
猫娘から力が抜ける。だがここで手は緩めない。
「さらに指圧術"肌レール"!」
瞬間で顔、胴、腰、手足など、肌部分を撫でていき攻める。この技の前では服など無いに等しい!
「へはぁ~」
恍惚とした表情に代わり映えした猫娘がペタンと股をくっつけたまま崩れ落ちる。
あと一歩、次でラストだ。
「――奥義"恋の滝登り"!」
二本の人差し指で秘孔を突く。
「にゃうぅぅぅうううううう~ん……」
猫娘は横たわり痙攣している。勝ったな。
これにて抹殺完了だ。貴様は既に落ちた。それでは――
「ここからはサービスタイムだ」
草むらに飛び込んで、ラウンドワン!
カ~ン
どこからか鐘の音が鳴った気がするが気にしない。
バーサーカーモードが発動してしまったのだ。止まらない。
「な、なにするにゃ……待つにゃ、ダメにゃぁぁぁああああああッ!」
……ふうっ、調子に乗って鐘が五回も聞こえてしまったではないか。
特にあの尻尾がヤバかった。愛天然流の免許皆伝を持つ俺が本気を出してしまったではないか。
俺をここまで惑わすとは、異世界も侮れんな。強敵は隠れた所にいるものだ。
そういえば、何でこうなったんだっけ? ……まあ、どうでもいいか。
猫娘は気を失っている。今のうちに撤収だ。
「さてと、……これからどうすればいいんだ?」
俺は愛の求道者、蕪木太郎。現在、見知らぬ世界で迷子になっている。
至急、道案内を頼む。
ありがとう、神よ。夢が一つ叶いました。