お疲れさまっ!私のマネージャー♪
初めての短編
「どうして果汁60%のオレンジジュース買ってくるの!?いっつも言ってるわよね
私は果汁100%のジュースじゃないと飲まないの!分かってるの!?」
といきなり大声で叱られる。
俺の名前は志木悠馬
いちおう、ある女優のマネージャーなんかやってます。
その俺が受け持つ女優と言うのがさっきからオレンジジュースのことで
ガミガミと言って来る少女こそが俺が受け持っている女優だ。
名前は雨宮時雨
という名前で今、世間では「天才女優」とか「日本が誇る天才」
などの肩書きを持つ天才女優というのが表向きで
実際はオレンジジュース1本で駄々こねるわがまま娘である。
こいつとは幼馴染と言う関係であり、そのコネというか時雨の名指しにより
俺はマネージャーという仕事をしている。
今の不況の中、親が失業中で俺も稼がなくてはならないのでこの仕事に就けたことは
とてもありがたいことではあるが……
このわがまま娘なんとかしてください……
なんとかその場を収めて、次の仕事現場に向かうためタクシーにのる俺たち。
「悠馬。今日はどんな仕事があるの?」
「今日か?今日はな、午前中は朝の生放送に出演と雑誌の写真撮影。
午後はドラマの収録があって、最後は雑誌のインタビューだな」
いつもながら、膨大な仕事量である。それも今日の日程は少ないほうなのだから
時雨の仕事ぶりに感嘆するばかりだ。
それに、体のほうも心配だ。女優なので睡眠時間はかなり取れるようにスケジュールは
組んであるが、それにしたって疲労度はすごいものであるはずなのに
1度すら時雨はつらい顔一つせず仕事をこなしている。
やはり世界が違う。あらためて認識した。
「―――っ、ちょっと!聞いてるの!悠馬!」
話しかけられてたみたいだが、考え事してたため聞いておらず
すばやく返事をする。
「すっ、すまん。話聞いてなかった。なんの話だ?」
「悠馬本気で言ってるの?私の話聞いてないなんて……
マネージャー失格よ!!」
「本当、すまん。悪かった。許してくれ!!」
電光石火の誤り方だった。
この仕事をなくすのはイコール家の家族が路頭に迷うことになるので
必死にあやまる。恥などを気にはしていられない。
時雨はそれを予期してなかったのかいきなり慌て始めた。
「ちょ、ちょっと!そんな真剣に謝れても……そんなに謝らなくても
それぐらいのこと許してあげるわよ」
ちょっと顔を赤らめて答える。
なんとか許しを得たようだ。ホッと一息つき
「ありがとうな。時雨」
と笑顔で時雨に返す。
「そっそっそっそんなの当然のことよ!わっ、私は心が寛大なんだから!」
顔を真っ赤にさせながら答える時雨。
俺は、なぜ顔を真っ赤にしてるのかわからず考えて見る……
まさか!と思い時雨に向かって自分の手を伸ばす。
「時雨、ちょっとこっち向いてくれないか?」
「なっ、何よ!どうした……の」
時雨のおでこに自分の手をあて熱を測ってみるが……
熱はなし。でもじわじわと熱とは違うような暑さが
「なっ、なにするのよ!」
俺のほうにビンタをかまおうとする時雨。
それを間一髪のところでなんとかよける俺。
「なっ、なにするんだ!危ないじゃね〜か!」
「うるさい!!何勝手に私の顔に触れてんのよ!」
「許可は取っただろうが」
「あんなの許可って言わない!!それになんでこんなことしたの!?」
「お前が顔赤いからさ、熱でもあったんじゃないかと思って……
時雨、無理する癖あるからな。だから確認のために」
「……そうなの?」
「何が?」
「悠馬は私を心配してさっきの行動に及んだの?」
「うん?ああ。そうだよ。風邪はひどくなれば死ぬ事だってあるんだ。
用心に越したことはないだろう?」
そう俺が言うと時雨はポカンとした顔をして固まっていたが
ある程度時間が立つにつれ、だんだんと表情が奇妙な笑顔に変わっていき
「……そう…なんだぁ〜。悠馬が私を心配してぇ…うふふっ…
やっぱり悠馬は私のことがぁ……」
と、この会話によりスタジオにつくまでのタクシーの中
時雨は、決してファンやマスコミに見せれないほどの不気味な笑顔で
独り言をつぶやき続けており、俺すらも話し掛けられないほどであった。
でも、少し嬉しそうに見えたのは俺の錯覚かな?
なんとか午前中の仕事を終え、次はドラマの撮影現場へ向かうため
またタクシーに乗る俺たち。
時雨はさきほどとは一変、傍から見ても不機嫌だと分かるぐらい不機嫌な顔をしていた。
その理由がわからず悩む俺。
「どうしたんだ?時雨。やっぱり風邪か?」
心配になり、聞いて見るが無視。
「無視されても困るんだが……頼むから、話してくれよ時雨」
とにかく理由を聞かなければどうにもならないので意地でも聞き出す。
すると根負けしたのか、そっぽ向いていた時雨がこっちを向く。
「悠馬……さっきの生放送中……誰と話してたの……」
かなりドスの聞いた声で言う時雨。
自分の頭の中でその時の状況を思い出す。
「たしか……番組プロデューサーの人と話をしてたよ。ちょっとした世間話を」
「世間話を……ね〜」
「それがどうかしたのか?時雨」
「悠馬。こんどから私が仕事をしている間、
ず〜っと私のほうだけ見ていなさい!分かった!?」
意味の分からない命令を出された。
時雨はこのように稀によく意味不明な命令を良く出す。
俺なりの解釈では、仕事中に俺が雑談しているのは
サボりみたいで気に食わなかったんだろう。
まあ多少無理矢理であるが、言いたいことの筋も通ってるし
時雨の気持ちも分かるのでここは言うことを聞いておく。
「わかったよ。今度からは気をつけるよ。それでいいんだろ?」
「そう……それならいいわよ!分かった?今度から気をつけるのよ」
「了解」
その言葉を聞いて安心したのか満足気な顔を浮かべる時雨。
まあこんなことで機嫌が直ってしまう時雨の単純さに感謝しつつ
次のスタジオへ向かう。
ドラマ撮影は何事もなく、時雨もセリフの間違いもせず
めずらしく何の問題もなく終わるかなっと思っていたが……
「悠馬く〜ん!!」
とあちらからちっこい女の子が走ってくる。
やはりタダでは終わらないのが俺、志木悠馬だからな……
「どうしたんですか?東条さん」
「悠馬くん〜。その呼び方やめてっていってるでしょ!麻衣って
呼んで!っていつも言ってるのに〜」
とだだをこねているちっこい少女は東条麻衣
こんなんでも女優であり、時雨と双璧をなすほどの人気女優である。
仕事の中で何回か会っているうちに気に入られてしまい
こうやって俺を見つけてはベタベタとくっついてくる変わったお方である。
それに名前で呼べって……あなたは俺が一般人なのわかってます?
「……悠馬!何やってんの!」
いきなり大声で呼ばれて振り向くと
そこには仁王立ちした時雨が
「あっ!時雨じゃん。久しぶり〜」
軽い感じであいさつをする東条さん
「久しぶりね。麻衣。まだ番組の撮影終わってないんじゃ?」
「今は〜休憩時間だよ。そんなことより時雨もドラマ撮影始まるよ〜」
「今は休憩時間よ!そんなこといいから早く悠馬から離れなさい!!」
「なんで〜いいじゃん。私が悠馬君にくっついたって」
「いいわけないでしょ!!これは私のモノよ!」
「えっ〜!いいじゃん。麻衣にもちょうだいよ〜」
「ダメなの!!」
とさっきから俺をはさんでいい合いを続ける二人。
つうか俺はモノ扱いなのかよ!!
と一人で脳内ツッコミをしながら、二人の争いが終わるのを待っていた。
いつも2人は出会うたびにこういう風に言い合いをしてるが
すこしは仲良くできないものかと思う俺であった。
もう外は真っ暗だった。
ドラマ撮影の後、雑誌のインタビューも何事もなく終わり、今は帰宅するため
自宅へ向かっている。
さいわい、俺と時雨の家は隣同士なので同じタクシーに乗っていく。
疲れが出てきたのかいきなりまぶたが重くなる。
それに車の揺れも相乗効果を誘い、眠気が倍増する。
マネが寝るなんてしてはならないことだが、尋常じゃない眠気に
俺はついに絶えれなくなり、まぶたを閉じ、眠りの中に入ってしまった。
寝ちゃったのかな……
すごく可愛い寝顔。私一人が独り占めしていてとてもいい気分になる。
こうやって毎日二人で仕事をするようになって大分時が過ぎた。
最初は何気ない気持ちで入ったこの世界も今では天才と言われるまで
成長した私。
私はただ悠馬の前で綺麗な姿や活躍する姿を見せたいがためにはじめたのに……
それなのに悠馬は仕事仕事で私のことなんて見てはくれない。
まあたしかに私に構ってられないほどマネージャーという仕事が
忙しいのは知っている。
それにしたってあまりにも構ってくれないのはちょっと寂しい……
それにこの世界に入って一番後悔したこと、それはライバルの増加。
もともと美形の部類に入る悠馬はこの業界ではちょっとした人気者で
人気女優やアイドルなんかも狙っている人気マネージャーである。
かなりのお金を出して悠馬をマネージャーとしてスカウトするように
仕向けた女優がいるという話なんかあるくらいだ。
今日だって麻衣がアタックしてたし、それに朝の番組のプロデューサーだって……
まあ悠馬は鈍感だから人の好意にいっさい気づいてないのが唯一の救いだ。
でも油断できない!いつどこから悠馬が狙われるかわかったもんじゃないわ!
だって1番悠馬を愛してるのは……こっ、この雨宮時雨なんだもん!
そこらへんの女と年期が違うわ!
絶対いつか私のモノにするんだからね!悠馬!
今日はお疲れみたいね……
いつも私のスケジュール組んだり、仕事とってきたり毎日寝てないもんね……
「お疲れさまっ……私のマネージャー……そしていつもありがとうね」
そう小言で感謝の言葉を述べて
私は悠馬の体にもたれながら、自分も眠りの世界へ旅たっていく。
大好きな悠馬の夢が見れればいいな
そう思いつつまぶたを閉じ、眠りの世界へ旅立った。
はじめましてtakutoです!!
先生は17歳!?の前に書こうと思っていたネタを短編にしてみました。
人気があれば連載するかも……
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