表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

事件簿:千堂紅葉 建前の善意①

NIB…それは善なのか、それとも悪なのか....

 時は3000年代の日本。

科学技術の発展により、世界の中でもトップクラスの先進国となった...

しかしその影響なのか全国各地で、災害、公害、人災が頻繁におこるようになり、

治安が良く、住みやすい日本の影さえも残らない劣悪国家になってしまった。

 そのような状態で、最も大事な問題の一つが『教育機関内でのいじめ』だ。

年々いじめの報告件数と、10代の自殺件数は過去最多を更新し続けてている。

なぜそうなってしまったのか。それは、国民のモラル低下が一番とされている。

間違った言葉づかいをして、一人一人の私生活が乱れ、そのような状態では

人災の発生確率が上がるという論文がある。

人災は終焉の元というように、国を滅ぼしかねない。

このことを恐れた政府は、NIB[日本いじめ防止財団]を設立した。


「ふん♪ふふん♪ふふん~♪」

今、その財団の施設内で平和にも鼻歌を歌っている女性が一人いた。

名前は藤沢美咲(ふじさわみさき)と言う。

黒髪のロングヘアを後ろで束ねた、身長160センチ前後の女性調査員である。

(あ、昨日やってたアニメ取り忘れちゃった....)

そう思いだすと、彼女は自分の自室内でスマホを使いアニメを見始める。

(いや~、いいね。この作画がいいんだよ。原作以上って感じがする。)

実は藤沢は大のアニメ好きで、休日はアニメの聖地巡礼や

グッズを買いに行ったりしている。

そんなこんなで、自由時間を満喫していた彼女の元に一本の電話が入る。

『プルルル!プルルル!』

「はい!こちら日本いじめ防止財団です!」

「あ~、藤沢君。私だよ。」

「なんだ、支部長でしたか。どういたしました?」

「いきなりですまないね。ただいま緊急の『案件』が入ってきてね...

 藤沢君に頼みたいんだけど…」

「はい、今行きますね!少々お待ちください。」

そう言って藤沢は電話を切る。

NTBは47都道府県ごとに支部が配置されていて

電話が来たのが藤沢の所属する支部の支部長からだった。

(やっとだ。やっと仕事ができる。)

この財団に入ってから藤沢は一回も仕事を受けたことがない。

つまり今回が初仕事。

昔から藤沢は人のためになることをするのが好きで、この財団に入った。

この財団の過酷さは知っていたが、

それでも誰かの役になりたいという一心で動いている。

「よぉーし!初仕事頑張るぞ!」

そうやって自室内で意気込み、支部長室に向かった。

後々この藤沢がこの判断を悔やむことになることは誰も知らない。


『コンコンコン!』

「うん。入っていいよ。」

「失礼します!調査員の藤沢です。今回このような機会をくださり

 誠にありがとうございます。」

藤沢が深々と礼して顔を上げると、そこには支部長と

フードを被った子供が支部長室のやけに高そうな赤いソファーに座っていた。

「あまりかしこまらなくていいよ...

 さて、今君も察しただろうがこの子が今回の依頼主だ。

 さぁ、さっき私に言ったみたいにあの女の人に自己紹介できる?」

そう支部長が声をかけると子供は藤沢のほうに

恐る恐る向き、やせ細った声で話し始めた。

「.....しょ...小学四年生の...千堂紅葉せんどうもみじで、です。」

「紅葉ちゃんね!いい名前だね。じゃあ今回なんでうちに相談しに来たか話せる?」

「は、話す前に....これを見てくれたほうが......は、早いと思います。」

紅葉はそう言うとフードを脱いだ。

「.......ッッ!!!!」

驚くのも無理はない、たった十歳ちょっとの

少女の体を侵している、切り傷、青痣、火傷があった。

紅葉はフードの下に半袖の服を着ていたが、

おそらくその下にも同様にあるのだろう。

「...うっ!...」

思わず腹から込み上げてきた吐き気を抑えた、藤沢は聞いた。

「それは....一体誰が、やったの?」

「...........です。」

「えっ?」

「く、クラスメイトです...これが起こったのは....」

「ううん。無理に話さなくていいよ。そうか...相談しに来てくれてありがとう。」

「はい....ありがとうございます。」

そう言って紅葉はソファーにまた腰を掛けた。

(こんな親切な子が....いったい何をしたらこうなるの?)

そう考えていると、支部長が話しかけてきた。

「今見たとおり、身体、精神ともにひどい状態だ。

 この子の両親がこの子が歩道橋から飛び降りようとして、

 いじめが発覚したらしい。

 それで君には、この子の代わりとして学校に赴き、調査してきてほしいんだ。

 できるかね?」

そう支部長に問われたが、藤沢はもう答えが決まっている。

「はい!全力で実行します!」

「......ではよろしい。その子と一緒に準備したまえ。」

「分かりました!さぁ行こう!」

「えっ!?あ、はい.......」

こうして藤沢と紅葉は、支部長室を後にした。


潜入調査は多くのステップがある。

まず、いじめ被害者の存在として学校に行くので

外見を同じにする必要がある。

身長、体重、体格、顔の輪郭、髪の形質、ホクロの数と位置までデータをとる。

それを調査員が一人、予備を含め二枚持っている

この特殊スーツにデータを落とし込む。

データを入れた状態でスーツを着ると、読み込んだデータをもとに

被害者と瓜二つな状態になる。

次に声の高さや、性格、癖など外見ではわからないものを同一化していく。

この場合は被害者に、日常生活をもとにしたシチュエーションテストを

受けてもらい、その結果から調査員が限界まで被害者と似せる。

こうして、ようやく完成する。

「ど、どうですか?紅葉ちゃん?そ、そっくりですか?」

「!!!!、は、はい!す、すごいと思います。」

紅葉に似ていると言われ安心した藤沢。

(本当にこの財団に入るときのテストでここが一番大変だったな.....)

そう感慨にふけていると

「あ、あのっ!」

「なに?紅葉ちゃん?」

「明日からですよね?調査始めるのって....」

「うん。そうだね。私、紅葉ちゃんのために頑張ってくるよ!」

藤沢が笑顔でそういうと、紅葉がしもじもじし始めた。

「あの、ふ、藤沢さん。これ...」

そう言って、紅葉は藤沢の前に自分の手を開いて見せた。

その手の中には....

「うわぁ~、上手だね!」

丁寧に刺繡ししゅうされたクマのぬいぐるみがあった。

「お、おまおもりです!絶対に無事に帰ってきてください。」

藤沢はそれを受け取ると

「大丈夫だよ。私は訓練サボったことないから。」

「そういう話じゃ!!...」

紅葉は何かを言おうとしたが、藤沢の人差し指が口の前に出された。

「大丈夫。私を信じて....」

そこまで言われたらもう、心配は口から出なかった。

「......はい。信じてます。」

その言葉を聞いて藤沢は部屋を出る。

(紅葉ちゃんのために頑張らないと.....)


門の前に大きな桜の木がある。

それが青蘭小学校せいらんしょうがっこうの名物だ。

無事に道に迷うことなくたどり着いた藤沢だったが、

(初めての仕事めっちゃ緊張する!!!!)

すごく緊張していた。

(いや~、それにしても広い学校。何か問題があるって雰囲気じゃないけど....)

そう思っていたのもつかの間、中庭に入った瞬間から視線が刺さり始めた。

「あいつってさ......」「そうそう。不登校の.....」

「うっわ、きっも。あんな見た目なんだ....」「ねぇ...何であいつ来たの?」

ギリギリ聞こえるものから、わざと聞こえるように言っているものまで

多くの陰口が聞こえた。

(な.....なにこれ.....?)

背中をつたる冷や汗、恐怖、憎悪、すべてを感じた。

いや、感じてしまった。

(こんなものをほぼ毎日紅葉ちゃんは受けていたの...?)

そんなことを思いながら、下駄箱に行くと...

(あれ?誰か下駄箱の前にいる?)

見ると数人の男子生徒が紅葉の下駄箱に『何か』を入れているのが見えた。

「やべっ!来たぞ!」

「あっ!ま、待って!」

そう呼び止めたが全員逃げてしまった。

(何を入れたんだろう?)

恐る恐る蓋を開けて中身を確認すると.....

「.....うぅっ‼.....オエッッ!」

思わずこみあげてきた吐き気を抑えるために口を手で覆う。

「ぅうっぅ!…オェッ!…何で、なんで!」

その視線の先には....

虫、腐ったパン、洗っていない牛乳パック、汚い雑巾

パッと見たものでもこんなに見つけられた。

全てがとてつもない悪臭を放っている。

鍋で肉を煮るとき、必ず灰汁が出る。

灰汁は回収しないとたまり、最終的に鍋を覆いつくす。

そのような状態では、だれもが食べたくないだろう。

まさにそれだ。

この学校という鍋が、この下駄箱の中に出る灰汁をすべて詰め込んでしまった。

そのような酷さを感じた。

そして、それを誤って食そうものなら......

(なにこれ...臭い、キモイ、汚い....)

テレビとかで出ようものならモザイクがかかりそうなグロさだ。

(これを紅葉ちゃんは耐えてたの?)

ある程度時間が過ぎると慣れてきて、怒りが沸いてきた。

この下駄箱は男子生徒たちだけでやったのか?

そのような疑問が頭を駆け巡る。

おそらくそれはないだろうと藤沢は自己完結する。

(中庭の時のあの感じ....学校の全員がいじめに

 加担してるといっても過言じゃない。)

一人対不特定多数、いじめの状況にマッチしている。

そして、藤沢は決意する。

(絶対いじめの首謀者を見つけて、紅葉ちゃんの日常を取り戻してやる。)

上履きに履き替えた藤沢は校舎内を一歩一歩と進んでいく。

全ては一人の少女のために....

こういう系は書くの初めてで緊張する。

ぜひよかったら...

・レビューして!

・ブックマークして!

・友達に広めて!

くれたらうれしいです。

ここおかしくねって思ったことはバンバン聞いてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ