『回想・ユルケン(ユルエとシュルケン)』
第三章のエンディング前なのですが――。
時々こういうのを、無性に書きたくなります。
テント生活時の、ユルエとシュルケンの、まったり会話です。
「して、ユルエ殿。『その陸上部』というのは?」
うららかな秋の午後。一二三と花音は学校。香月はテントに。ベルモットは買い出しに。そして巌流はその辺りの道場破りに。
ということで、シュルケンは河のほとりでユルエの高校生活の話を聞いていた。
「リクジョー部? まー。なんていうか、走ったり跳んだり? 夏場は水泳やってたけどぉ」
「走って飛んで、泳ぎでござるか? それはまるで、忍びの修行と同じでござるな」
シュルケンの属性の一つに『勘違いキャラ』というモノがある。
「して、ユルエ殿はどうやって飛んでいたのでござるか?」
「まー。跳ぶっていっても5……いや、4メートルくらいだけどお」
シュルケンが興味深く頷く。
「4メートルといえば、10と3尺の距離はあるでござるな。拙者も忍びの端くれゆえ、数え3歳の頃には木の幹から幹へ、それくらいは飛んでいたものでござる。ユルエ殿も、時代が違えば立派な九ノ一になれていたかもしれませんぞ」
「へー、そうなんだぁ」
ユルエはスマホから一切目を離さず淡々と、渡辺に送る508行の文章を打ち込んでいた。ちょっとした小説が書けそうだが、内容は『たまごっぴ』の壮大な生育日記だった。もう少しで超レアな『えんじぇるっぴ』に育つらしい。
「最近では魔物の出現も多くなったでござる。闘えとは言わぬでござるが、ユルエ殿も何か身を護る術があればよいのでござるが――」
「わたしぃ? フライパンでいいんじゃない?」
またシュルケンが深く頷く。
「フライパンでござるか……。確かに多少の火炎攻撃ならば防げぬこともないと思うでござるが。おお、そうでござる! それをベルモット殿の錬金術で巨大化させれば、なかなかの防御手段にはなりましょう!」
ユルエの目も指も、スマホからは離れない。
「まあ、ベルモっちのオッパイも一緒にデカくなるけど。見たいの?」
「いや! そういう訳ではござらぬ! いや、その、拙者は決して……」
「ふーん。やっぱ見たいんだ」
秋空は高く、遠くには夏の名残の入道雲が見えていた。ふと、ユルエが思い返す。
(陸上部かあ。なーんか、青春してたよねぇ。私も――)




