58・金の斧
なんだか深夜にストックを放出して、背水の陣に挑みたくなりました。
気まぐれな私です。
~前回のまとめ~
静かな湖畔で竹刀の手入れをしていた一二三はカエルのモンスターに襲われましたが、ベルモットに助けられました。ベルモットのオッ○イが、また大きくなりました(雑)。
ベルモットの眠りをジャマしない程度に氷漬けのカエルを砕いたあと、なぜだかユルエの顔が頭をよぎり、一二三は青春真っただ中だった。
(なんかダメだ。これってダメだ)
という苦悩のさなかにも、イベントは待ってくれない。またしても湖の底から何かが飛び出してきた。一二三は雑念を捨てて、竹刀を構えた。
だが現れたのは――、
「あなたが落としたのは、この『金のたまごっぴ』ですか」
モンスターではなかった。女神でもなかった。
「ゆ……ユルエさん?」
続いて、
「ぷわっは! ぷはぁっ! 主殿、早く頭の上から! ごぶっ!」
「おほほほ、くるしゅうないぞよ」
「いや、拙者は苦しいでござる……」
思いもつかない出現は、さすが忍びとギャルだった。
「どうしてたんですか二人とも。まあ、無事でよかったですけど」
「いやはや、何から説明すればよいか」
ずぶ濡れの覆面を目の前で絞れば、もう顔は丸見えだった。まあまあのイケメンだった。
脱線が8割のユルエの話を要約すると、砂漠地帯で巨大ワームに飲まれ、気がついたら水の底に出たらしい。
「ワームの口の中って。消化液とかなんとか、大丈夫だったんですか?」
「いやはや。それが意外と居心地のよい場所でござって」
意味が分からない。が、無事ならばどうでもよかった。それよりも、ベルモットは眠ったままだ。それにユルエが気づく。
「あー、ベルモっち! また練乳術使ってる!」
そして、その目が一二三を射抜く。
「じ―――――――っ」
「何もしてません」
「み―――――――――っ」
「見てませんてば。カエルのモンスターに襲われて大変だったんですから」
濡れ衣は、ベルモットが目覚めるまで晴れなかった。
「そうか。で、ガンリュウのおっさんとか、妹は見なかったのか」
「面目ない。ずっとワームの中でござったもので」
その辺りの情報は、まったくだった。
「僕は、カノンはダックスがいるから大丈夫だと信じてます。ただ、フォーミュラさんとか、もしも一人きりだったら危なすぎますよ」
「おーおー。妹よりもフォーミュラが心配か」
「もう、真剣に聞いてくださいよ。だって、普通に考えて、そうじゃないですか」
数が増えたことで安心も増したのか、場の緊張感は薄い。それぞれにこうして生きていたのだから、全員が無事だと信じるだけだった。
「フォーミュらんがいないと、スマホの充電ができないんだよねぇ。渡辺が寂しがってるかも」
くだらないと思いつつも、一二三もポケットで無事だったスマホを取り出してみた。すると、思いもよらない状態になっていた。
「これ、電波入ってるっぽいんですけど」
「えーマジ!? 貸して! 渡辺に――」
「ちょっと待ってくださいよ、ここは慎重に。母さんは怒鳴り散らすと思うから、そうだな、渡辺に」
「えー、やっぱ渡辺じゃん!」
一二三がまず、当たり障りのないメッセージを送ってみた。『ごめん カゼひいて ちょっと休んでる』と。しばらくのアリバイも成立させるためだった。
それでも話は、やはり深刻にならざるを得ない。
「7人が揃わねば、まず何からはじめてよいのやら。どうでござるか、ベル殿」
「オレかよ。7人が揃うのを待つより、揃った時に、どれだけの情報を交換できるかが重要だろう。『ワームに食われても死なない』とかな」
そこには一二三も疑問がある。
「ベルさん。決めつけるのは早いんじゃないですか? たまたまってことも、ありますし」
「まあな。ただ『そういうこともある』のがこの世界だ。とにかく動き回るぞ」
どうやら、この4人パーティーではベルモットがリーダーで決まりのようだ。




