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イセカイセブン~僕だけ転生できなかった世界に、異世界人がなだれこんできました~  作者: ニーガタ
第三章・異世界突入編

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56・バカ班


主殿(あるじどの)! ご無事で何よりでござった!!」

「おほほ。くるしゅうない、くるしゅうないぞよ」


 一二三班、巌流班から遥か遠く、黒い砂塵(さじん)の舞う砂丘地帯(さきゅうちたい)に飛ばされたのはユルエとシュルケンだった。広大な大陸の端から端までの距離だった。


「して、主殿(あるじどの)。どこかお傷などありませぬか。痛むところなど」

「おほほほほ、くるしゅうないぞよ」

「それは何よりでござった。拙者、皆とはぐれた時にはどうなることかと」

「おほほほほ。それでケンケン。ここ、どこ?」


 砂丘だ。低い灰色の空の下に、砂鉄のような真っ黒な砂山だけが続いていた。ただ一つ、小さな岩がそこにあるだけ。


「はあ。それが皆目見当(かいもくけんとう)もつかぬでござる。誰がどこにいるのやら、果たして皆は無事なのか。しかし主殿、心配()さるなでござる。必ずや拙者がお護り通し、晴れて他の者たちとの再会にいたると約束申す!」


 とは言ってみるものの、まったく当てはない。当然だ、どこを見回しても砂の山。それを越えたとして、またその先に何があるやらだ。


 2時間後――。


「ねーえ、ケンケン。のど乾いたしぃ。コンビニ探してきて」

「はあ、コンビニでござるか。かなり歩いたでござるが、それらしきものは」


 また延々と1時間、ひたすらに真っ直ぐに歩くだけだった。その道中、何か見えればそこへ向かう。それ以外に手立てがなかったのだ。


「あれえ。私、『たまごっぴ』どこかで落としてるんですけどお。ちょっと取りに戻る」

「主殿、今はまず目先の目的を見失わないことでござるよ。砂漠というモノは恐ろしいのでござる。真っ直ぐに歩いていたつもりが、いつの間にやら元の場所へ戻っていたりと、奇怪な現象が起こる場所でして。『たまごっぴ』は必ずや、この手裏(しゅり)剣寿助(けんじゅのすけ)が取り戻しますので。この世界に日暮れがあるかは分かりませぬが、砂漠の夜は冷えるでござる。先をいそぎましょう」


 3時間後――。


「ねえケンケン。なんかすごく暑い感じするんだけどぉ」


 どうやら朝がきたようだ。となると、その前の数時間は砂漠の夜。気温はこれから上昇を続ける。


「ダメぇ! のど乾いた! 疲れた! 動きたくなぁい!」


 ようやく見つけた岩陰で座り込むと、ユルエが駄々をこね始めた。


不憫(ふびん)でござる……。しかしこの剣寿助、扇子(せんす)の先から水を出すほどの術はまだ会得(えとく)しておらぬでござる。面目ない」

「もういい。ペットの水飲むから」


 シュルケンが耳を疑っていると、次は目を疑った。ユルエが首から下げたペットボトルで水を飲んでいる。


「あ、主殿? それは……」

「ごくっ。ブクロの駅んとこで買ってたんだけどぉ。ごくごく」

「そ、その……。よろしければ拙者にもひと口……」

「えー。間接キス、キモイ」


 挫けた。


「あ、でもねえ。これだったらいいかも。ケンケン、そこに座って上向いて口開けて。あーん、って」

「え? こ、こうでござるか? あーん」


 ここで空想しましょう。



(女子高生が立っています。その目の前に(ひざまず)いて顔を上げ、間抜けに口を開いている間抜け面の忍者がいます。女子高生は手にしたペットボトルを少しずつ傾けて、慎重に、一滴ずつ水を垂らしています。)



「ほおら。お飲みなさぁい。美味しいでしょぉ、美味しいでしょーお」

「あ、あるじどの! お、おいひいでございまう! おいひいでございまする!」

「おほほほほ。くるしゅうない。くるしゅうないぞえ」


 そしてまた2時間――。



「はあ、はあ。主殿、この世界は1日が短いように思われます。今日のところはこのくらいで。おお、そこにちょうど岩場があります。そこで野宿といたしましょう」

「だねー。結局なんもなかったし」


 シュルケンは背中から大きな風呂敷を取り出し、ユルエの寝床を作っていた。そこへ。


「あれ?」

「主殿、何かございましたか」

「うん。『たまごっぴ』見つかった」

「……」


 砂漠の恐ろしさは、その幕を開けたばかりだった。



明日より12:00更新です。

21:00からは激戦区なので。。

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