52・伝聞
※いきなりの重大変更を行いました。
沢渡一二三の年齢設定を、後の展開のために中学生にしていましたが、高校2年で統一します。
今まで読んでくださった方には逆に混乱を招いてしまうと思うのですが、行き当たりばったりで申し訳ありません。
今後はストーリー進行に合わせて、キャラ紹介の内容は追加だけにしていきたいと思います。
重ね重ね、申し訳ありません。
「あーもう、わけ分かんねえぞ!!」
抱きかかえた花音の無事をベルモットが確認すると、巌流がひとまず7人の集合を確かめた。遠くではまだワームが暴れている。こちらへ危害を加えてくる様子はなかった。
雑踏を避ける必要もない。まだ、周囲はモノクロの亜空間だ。一般人の姿は見えなかった。
「カヅキ、まずはシュルケンの手当てを頼む」
「はい。『救急絆創膏』」
香月が右手をかざすと、傷だらけのシュルケンの身体に、白い包帯のようなモノが巻かれてゆく。
「すみませんが、ヒフミさんにはこのあとで」
「いえ、僕はいいんです。カノンは大丈夫ですか」
ジッと立ち尽くす花音は、暴れ狂うワームを目で追っていた。
「大丈夫だろう。放心している様子だが。無理もない」
安心した一二三が、ベルモットに訊ねてみた。
「ベルさん。あれはいったい、何なんですか。あの侍たち、どうなったんですか」
「だから、分かんねえつってんだろ。命拾いしただけマシだと思え」
「でも生きてたら、またカノンが狙われるかもしれないじゃないですか」
「ああ? 妹の心配だけか? アイツら、フォーミュラの名前まで出してやがった。おいフォーミュラ、お前は何か知ってるんだろ。なんで隠してた」
シュルケンを治療中のまま、香月も答えてみるが、
「私も、心当たりはないんです。ただ、あの一刀斎さんって人には、なぜか以前にも会っているような気がして」
「お前のオヤジに会ってるんだろうから、お前も会ったんじゃねえのか」
「いえ。父からは、あの人たちの転生のことなんて知らされてませんでしたから」
「役に立たねえな」
ふと、妙な感じに気がついたのは巌流だ。
「ユルエはどこだ」
皆で見回せば、彼女だけがいない。
香月が首をひねる。
「さっきまでいたと思ったんですけど――」
「ずっと一緒だったろう」
「はい、でも……あれ? でもガンリュウさんもさっき、全員揃ったって言いませんでした?」
「そういえばそうだな。ああ、なんだ。そこにいたか。大人し過ぎて気づかなかったぞ」
隠れるように立っている姿は確かに、いつものユルエらしくはなかった。
「んだあ、お前? 制服、穴空いてんじゃねえか」
「あーホントだ。さっき、レーザービームが当たったかも」
「死んどるわ! どこかで傷でもつけたんだろ。帰ったら直してやるから、今は我慢してろ」
「マジで? じゃあ、せっかくだから秋物のセーラー服にしてもらおうかなぁ」
それからしばらく。5分が過ぎた。暴れ回っていたワームは消えて、静けさが満ちていた。そこに花音が声を落とす。
「ダックス――」
言うと、瓦礫の山へ走り出した。
「おいカノン! まだ危ないからお前はいかなくていい。俺が代りに行ってやるから」
「ダメ! ダックスは、私のダックスだから!」
言い張ると、駆けていってしまった。慰めのようにユルエが言う。
「ノンノンは、何があってもダックスが守ってくれるから。大丈夫っしょ」
「だが、心配は心配だ。卜伝たちの亡骸探しついでに、俺も向かってみる。気になるヤツは、あとで来い」
残ったのは、一二三とカヅキとシュルケンだ。
「不覚でござった……申し訳も立ちませぬ」
まだ傷は痛むのか、ゆっくりと起き上がったシュルケンが軽く咳き込む。
「シュルケンさん、まだ無理しないでください。応急処置だけしかできなかったんで」
「いや――拙者、一刻も早く皆に伝えるべき話がござる」




