表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イセカイセブン~僕だけ転生できなかった世界に、異世界人がなだれこんできました~  作者: ニーガタ
第二章・七人の侍編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/92

38・カヅキ・ユーカスティス


 河原の芝生で7人の侍が野宿。朝からそういった光景が通勤通学の人々に晒されている。


 最近では警官の見回りで、何度か職務質問があった。それを上手くやり過ごすのは、ユルエの出まかせだった。


「伝説のチョーデカい魚がこの河にいるって聞いてぇ。ウチら、それ狙ってんだよねえ。SNSでバズったらヤバいじゃん? ちょっと長期戦になるけど、ここってBBQとかやっていいんでしょ? それのチョー長いバージョン」


 ただし警官は、その裏付けを取りたい。身分証の確認だ。

 そこは、シュルケンが拾ってきた落とし物の中にあった免許やパスポートを、香月の正確なデータトレースと、ベルモットの偽造練成(ぎぞうれんせい)によって完成していた。

 ベルモットはこの世界で、プラスチック素材や合成樹脂における構成要素の把握によって、練成が可能なレベルに達したのだ。その練成の度に胸を大きくしながら。



「ユルエ殿。もう一杯汁をくださらぬか――」


 侍たちに(もっぱ)らウケがいいのは、ユルエだった。胃袋をつかまれた男どもは、いつの世界でもそんなものなのだ。世間話に花が咲いていた。

 しかし、会話の手綱(たづな)を誰かが握り始めると、様相が変わっていった。


「この世界は恐らく、地球がまるごと転移しておるのです。魔物の住む星を、すっぽりと包み込むように」


 とんでもなく重大な事実をさらっと告げたのは、朝食後のお茶を飲んでいた卜伝だ。侍たちにも緊張が走る。


 お茶を振舞っていた香月が、真っ先に話へ飛びつく。なぜなら彼女もまた、その思いつきを胸に隠していたからだ。言いだせなかったのは、仲間の心を乱さないためだった。そして彼女自身もどこかで、これ以上何も起こらない平穏を望んでいた。


「詳しく! そのお話、詳しく教えてください!」


 彼女の心の揺れを見抜いたか、卜伝は逆に()らし始める。


「ワシも、そこで知ったのですわ。星々というものは無限に存在すると。星というのは丸い球のようなモノだと。ワシらの住むこの『地球』という星も、宇宙という無限の世界でたった一つの塵芥(ちりあくた)の星に過ぎないのだということを、あの方――あの御方は教えてくださりました」


 香月が、卜伝へ叫びに近い声で問う。責め寄る勢いだ。


「あの御方――その御方というのは、どなたなんですか!!」


 見かねた巌流が(いさ)める。


「香月、落ち着け。まだ卜伝殿の話は終わっておらぬ」


 そうですなあ――と、卜伝がお茶を啜った。


「お嬢さん。そなた、名を香月と申しましたな。もしや、『香月・ユーカスティス』殿の縁者(えんじゃ)ではありませんかな――」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ