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27.ミミズ――襲来

一二三の妹――花音の手のひらに謎の文字が浮かび上がる。

ついに揃った、香月が口にした7人の聖者たち。

しかし、そのショックのために花音はふさぎ込んでしまう。

そんな折、大きな地震の揺れが一二三たちを襲う――。


なんていう普通の前書きですが、眠れなくなったので怒涛の連投を開始します。


「それで、カノンさんですが今はどこに?」



 結局は河原に向かうしか手立てのなかった一二三は、テントの中で香月と向かい合っていた。


「朝ごはんになっても、部屋に閉じこもってたんだけど。さっきフラってやってきて、ダックスを連れて散歩に出ていきました」

「そうですか……。ショックだったでしょう。ただ、気になりますね。カノンさんの手の話――」


 彼女が話し始めた途端だった。大地が大きく揺らいだ。テントの中でぶつかり合う物が、派手に音を立て始める。


「フォーミュラさん、地震ですよ! ひとまず表に出ましょう!」


 言うものの、これがただの地震ではないことを二人は感じた。一瞬にして、目の前のすべてがモノクロの、白と黒だけの世界に変貌したのだから。赤も青も緑もない。


 二人がテントの外へ転がり出ると、そこもまた、白黒の世界だった。何より異様なのは、河原の土手から巨大な何かが這い出ているのだ。それは生物のように(うごめ)いていた。


(なんだ……これ……)


 あまりの出来事に立ちすくんだ一二三の隣で、香月が怯えながら呟いた。


「まさか……ワームが……」


 ワーム――。それは確かに巨大なミミズだった。一二三と香月は、思わず身を寄せ合う。


 ただし、そんな光景を目の当たりにしても微動だにしない男がいた。


「なんだ一二三。お前の世界には、あんなデカいミミズがいたのか」


 木陰で立ち上がった巌流が、右手を刀にかけた。

 刹那(せつな)の出来事だった。

 巨大なミミズは真っ二つ、縦一文字に切り裂かれ、断末魔(だんまつま)の叫び声も上げず消滅したのだった。


 巌流は抜いた刀を一振りして、血飛沫(ちしぶき)を拭った。と共に地鳴りも止み、世界の()り方が元へと戻った。崩れたはずの土手も戻り、見慣れた光景が広がっていた。今の惨状がなかったかのように。


「久々にデカい獲物(えもの)を斬ったな。で、お前らは大丈夫か。仲睦(なかむつ)まじく抱き合ってるみたいだが」


 そこで二人は気づく。お互いが必死になって縋り合っていることに。


「ご、ゴメンなさい!」


 まずは一二三が慌てて腕を離した。続いて香月。


「いえ……。私こそ動転してしまって……」


 刃を(さや)に収めた巌流が、二人のもとへ歩み寄ってくる。その目は香月に向かった。


「お嬢ちゃん。さっき、何か言ってたな。『わーむ』だったか。まあ、今は誰もいない。テント掃除でもして、ちょっと話そうか」


 それには香月も黙るしかなく、従った――――。



「なんだあ? あれだけの地震で何もなしか」

 

「そうです……ね。物も落ちてないですし、倒れてる物もありませんし」

 

 巌流と香月が交わしたように、テントの中もまったく異常なかった。

 椅子にどっかと座り込むのは巌流だ。


「それでだ、嬢ちゃん。あのデカいミミズになんか心当たりが――いや、知ってるのか」


 あとの二人も着座して、香月が躊躇(ためら)いがちに話し始めた。


「あれは……『ワーム』という生物なんです」


 一二三は息を飲み、巌流は目を細めた。

 香月が話を進める。


「私の住んでいた星では一時期、人口増加によって世界の1/4の人々が他の星への惑星移住を強いられました。まず最初に、とある惑星を見つけることができたんですが。そこには見たこともない恐ろしい生物たちが繁殖していて、とても人類が住める星じゃなかったんです。その生物の一つが、さっき見た『ワーム』という生物です――」


 途方もない話に一二三は言葉を失くしたが、巌流にはまったくその意味が伝わらない。香月が彼へ詳細説明するのに、1時間がかかった。


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