24・とりあえず揃ってしまった導かれし者たち
全ての状況は飲み込めなかったが、一二三の取り乱し方を見て、香月は話を合わせることに決めた。
「そ、そうなんですね。本当にありがとうございます」
ただし、一二三が伝えたかった事柄を彼女は知らない。焦ったままの顔で彼女が言い放ったのは――、
「私は香月・フォーミュラです。あなたのお名前も聞いていいかしら?」
「あー。沢渡カノンですけど?」
一二三の耳には、何かの崩落する音が聞こえた――――。
「ヒフミさん! どうして黙ってたんですか! 分かっていたら、私にも振舞い方があったのに――」
花音は、河原でダックスと駆け回っている。その間に説明を迫られる一二三だった。
「いや……。まさか自分の妹が、そんな大それた人物だとは思えなくて。すみませんでした。けどまだ、名前から考えて外国の方かなとか思ってたんですよ」
香月・フォーミュラは、静かに首元の鎖を手にした。そして、その先に光る、緑色で楕円形の宝石を見せるのだった。
「大転生者は仰っていました。『その者たち集いし時に、その宝玉は熱く眩く輝くであろう』と。まさしく、今、この時がそうなんです」
爺さん、そんな大事なことを隠してやがった――というのは、一二三の隠さぬ本心だった。まず第一に、大転生者などと仰々しく名乗る人物が寿命で絶命するなど、思いもしていなかったからだ。
香月が頭を下げる。
「ちなみに私、犬は苦手なんです。猫は好きなんですけど――」
異世界にも犬や猫が存在するのかと、一二三はどうでもいいことだけで頭を埋めた。でなければ、この状況を打破する方法が浮かばなかったからだ。現実逃避ともいう。
香月がキャンプ椅子から勢いよく立ちあがる。
「とにかくカノンさんに、この事実を伝えましょう。話はそこからです――」