12・放浪者たち
「お前らなあ――。」
街をそぞろ歩く、ギャルとコスプレ侍と、真夏にフードマントをかぶった錬金術師。さすがの大都会でも目を引く存在だった。
「お前ら、オレの体力削って錬金したコインをムダに使ってんじゃねえぞ! 特に娘! なんだ、その菓子の山は! パンだけ食ってろ! パンだけ!」
ぶらぶらと当てもなく歩く3人の前へ、二人の人物が現れた。警官だ。
「あのー、あなたち、最近よく見かけるんですが。何か怪しいって通報とかも入っててねえ。ちょっと身分証とか見せてもらえる? 特にそちらの男性。まさかとは思うんですけど、腰に差してる刀とか、本物じゃないですよね?」
やぶ睨みのベルモットが、ユルエに小声で尋ねる。
「なんだコイツら。上から目線で」
「えっと、お巡りさんなんだけど。アタシもちょっとヤバいんだけど」
「保安官かなんかってことか。おい、アンタら。オレたちは別に怪しいモンじゃないぞ。まあ、観光旅行みたいなもんだ」
「観光ねえ。じゃあ、そっちの男性から。その刀、見せてもらえますか?」
ふと、巌流が険しい目つきに変わる。
「侍の命、おいそれと見せるものではない。これはれっきとした、名のある剣だ」
「いや、本物でしたら相当にまずいんで。銃刀法違反ですよ? とにかく全員、所持品出して――」
そこでベルモットが、懐を探ると、
「おい、逃げるぞ」
言うや否や、目の前の警官へ向けて何かの粉末を振りまいた。
「うわっ! ちょいコラ! コラ……こ……」
警官たちが急に意識を失くしたようにひざを落とした。
そうなると、ここぞとばかりに3人は逃げ出す。
「ベルモっちすごいんだけど! あれ何? 何なに?」
「ただのパウダーだ。催眠系のな」
「だがこれで、俺たちはお尋ね者という訳か」
「さあ――。あとのこたあ知らねえ――」
河原を3人は走り抜ける。それぞれが出会った少年との再会を目指して。
「とりあえずぅ、行ってみたいとこあるんだけど?」
ユルエの、走りながらの提案だ。
まずはベルモットが答える。
「もしかしてだが――またオレに金出せって言うんじゃねえだろな」
「えー。電車賃くらい、いいじゃん」
「テメエなあ……」