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カオス ある会社員の告白  作者: 國生さゆり
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シーン5 私を出迎えたネコ



 その日、帰宅した私を出迎えたネコに「寒いよ、ほんと寒い」と声をかけた私は“あっ!“と思い出す。牛乳を買い忘れたと。カバンを玄関先に投げるようにして置きながら「ちょっと待ってて」と言いつつ、私は閉めたばかりのドアを開けた。クリスマスのイルミネーションが小煩い街をズンズンとゆく。ねこを引き取った時、あまりにも小さな体を見た私は早く大きく成って欲しくて、とにかくカルシウムと牛乳を与えた続けている。私自身、中学の頃、小柄な身長を伸ばしたくって毎日、牛乳を1ℓ飲んで今の183センチになれたと信じている。おかげで“木偶の棒“と頂けないニックネームを頂いてしまっているが……。牛乳は今や、ねこの大好物で、なるべく新鮮な牛乳を飲んで欲しくて残りは私の朝食になるしと、帰り道のコンビニで150mサイズを買って帰るを習慣にしていたのに、今日の私は昼間のエースくんの涙の理由をあれこれと考え、迂闊にも買い忘れたのだった。



 どうして、「大丈夫だ」と肩を叩かなかったのだろう。

 どうして、「大変だったね」とか言えなかったんだろう。

 どうして、「今日はいいよ」とか言ってエースくんが差し出した金を受け取らず、労ってやれなかったのだろう。



 どうして、いつも…、私は、こうなのだろう。



 そんな事ばかりが、脳を、脳裏を通り過ぎて…過去は過去だ。過去になったことはやり直せない。またも考えながら、いつもの銘柄を手にしてレジの前に立っていた。いつものおばさん店主ではなく、インド系の若手の初顔だった。財布を開くとUNIQLOの振込用紙が目に入った。私は考える。“この人は処理の仕方を知ってるだろうか“と。もたつかれても困るし、英語は不得意だし、日本語は話せないだろうし、まっ次でいいか…、いやいや、待て待て、もう期限が迫ってるはず…、ずいぶんと財布の中にいた様子の用紙は、角がヨレヨレになっている。私は賭けに出た。



 差し出した用紙を見た店員から「現金のみになりますが」と綺麗な日本語が返ってきた。「あっ、」と答えて財布を見ると一万円札が一枚入っていた。渋沢を差し出しながら私は思う。外見で人を判断してはいけないと教育されているのに、またも私は見た目で人を判断してしまっていた。人類皆平等が地球理念のはずなのに、私はすぐにそれを失念してしまうようだ。




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