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カオス ある会社員の告白  作者: 國生さゆり
16/31

シーン16 何かが・・変わったのか・・バカになったのか・・。



 ねこがあのザラザラとした舌で私の頬を舐めていた。私はねこの食事も作らないままゲージの前で寝落ちしていたらしい。久しぶりの屋外業務で汗をかき、ケガで痛い思いをして、苦情処理で人の怒りに触れ、、、多彩な感情が私の中に流れ込んで、知らず知らずのうちに日常へと移行されて疲れてしまったのかもしれない。見れば上着もワイシャツもスラックスもしわくちゃだ。こんなにも体力なかったっけかと考えて、すぐにそうじゃないと思う。心を動かされるが、体力の消耗につながったのだ。



 脳みそフル回転と考えたら笑いが出た。どんだけーと言いたくなる。笑う私をねこが舐め出し「痛いよ」と言いながら抱き寄せる。柔らかい。全てを預けてくれる様が愛おしい。私は「心配かけてすまなかった」と猫の耳元でささやいた。ねこを抱いたまま起き上がって食事の準備し始め、湯を沸かしながら考える。よしのさんに連絡したらと吉乃さんが言っていた。私が、、、愛という不確かなものを信じなくなってからどれくらい経つのだろうか。言葉でも好意でも心血でも裏切られるを知ったあの日から、何もかもが打算とのバランスだとわかったあの日から、バカらしくなった私は一人で生きている。誠意を尽くした言葉が自分に返ってくる事も知った。ちゃんとしょうとすると身動きがとれなくなってしまう。人に関わると自由ではなくなる。だから私は毎日を繰り返すだけの人生の中にいたかった。ねこの食事をゲージの中に入れて、喉をゴロゴロと鳴らしながら食べるねこをしばらく眺め、鞄から滅多に鳴らないからミュートにし続けているスマホを取り出してみる。グループLINEが着信していた。



さちこさん 今日はお招き頂きましてありがとうございました

エース   楽しんで頂けましたか?

さちこさん はい。トモッキーさん大丈夫でしたか?

上司    私たちにはわからないんですよー。

さちこさん そうなんですね。

よしのさん “ありがとうございました“のスタンプ1つ

上司    よかったら、週明けの月曜日にみんなでランチしませんか?

さちこさん “ぜひ“のスタンプ1つ。



 クソ、エースがさちこさんとよしのさんを誘ったのか。私は今日は何曜日なのだろうかと興味をそそられ、テレビをつける。土曜日の午後7時から始まるニュースをやっていた。私は元の時間軸に戻れていた事には安心したが、さしたる忠誠心も感じていない会社のために休日出勤していた事が悔しくなる。当たり前だ、相思相愛ではないのだから尽くしても無駄だ。おお何だか元気じゃないか思考がと自分を茶化しながら“今日は皆様とご一緒で来ず、残念でした“とLINEに書き入れてみる。上司から“いやいや、カスタマーセンターの業務ご苦労さん“とすぐさま返信が来た。知ってて送り込んだくせにと考え、グループLINEでどう皮肉ってやろうかと考えている最中に、よしのさんの“しっかり冷やしてくださいね”が入って、すぐさま私の上司に対する感情は噴霧され“はい。ありがとうございます“と書き込んだ。私なりにカッコつけたつもりだったが、読み返してゲンナリした。




 いけない。何に対しても無難を選ぶが、私には染み付いている。私の中での安穏な毎日は崩れた。ぼやぼや過ごしていたら、またあの負け犬人生が始まってしまう。もうあんなのはイヤだ。もっかいここから立て直そう。



・・・と思う私は・・・何かが・・変わったのか・・バカになったのか・・。


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