7話 正体
家に帰ってきてからは、いつも通りに過ごした。
いつも通りのふりをしていた。
誰も信じたくないと思うようになった自分を隠すように。
かつての、救いのなかった頃の私に戻ったように。
そして夜になって、パーシアンと二人きりになった。
「リュシオン、お前、前世でどんな感じだったんだ?」
人間不信になり、自己嫌悪に陥ってしまった俺は、目の前にいる、この双子の兄だって信じられるという確証はないのだと、気づいてしまった。
「いきなりだね。あと、どんな感じって、自分で言うの難しくない?」
無理やり口角を上げ、笑って話す。
不自然になってないといいな。
なるべく普通に過ごそう。不利になることは言わないように、細心の注意をはらって。うまく会話を進めなければ。
「……お前さ、前世に幼なじみっていた?」
ふと、覚悟を決めたように、パーシアンが話し始める。
「いた、けど。それがどうしたの?」
「俺もいたんだ、幼なじみ。けっこう変なやつだったんだけど。」
パーシアンはこちらを気にせずに話し続ける。
「素直で破天荒なやつだった。口は悪いけど、誰にでも優しいやつだったよ。」
この人は何が言いたいんだろう。いきなり、こちらの反応もいらないように話し始めて。
「……でもそいつが13歳の時、そいつは自分の両親と姉を事故で失った。それからは、自分の本音を話さないようになった。何があったか、詳しく知らないけど、養父母にも、最初は俺にもそうだった。」
これはいったい誰の話なんだろう?
「完全に話し方が変わった。優しいように見えて、突き放すような話し方、はっきりと思い出したよ。お前がさっき、神官にと話していたのを見て。」
なんでこの人が知っている?
「弱みになるようなことは絶対に言わない、疲れるぐらい集中しなきゃいけない会話をしてた。誰も信用しないように、誰にも裏切られないようにって。」
この話を私は誰よりも知ってる。
「これは前世のお前の話。お前の次ぐらいに詳しく知ってるよ。いや、次の次、かもしれないけどな。」
そして、俺は目の前にいる人間のこともよく知ってるはずだ。
「わかるだろ。俺はお前の……」
なんで気づかなかったんだ。こんな大切なこと。
「前世での幼なじみだ。」