6話 再発
「こうしてはいられません!ノルディック侯爵様!どうかリュシオン様を神殿に置いて貰えませんか!」
……何言ってんだ、この人。
絶対嫌なんだけど。
「リュシオン様の才能は世界で見ても飛び抜けていらっしゃいます。聖女様や勇者様でもこのようなことはありませんでした。」
「……さっき言ったように、私は自分の力は自分で決めて欲しいと思っている。だから私はリュシオンの意見を尊重するが、もし、リュシオンが嫌だと言うのなら、私がそれを認めることはない。むしろ親として、それを止めよう。」
いや、普通に親ガチャ大成功すぎる。子供であったとしても意見を尊重してくれるって、めちゃくちゃありがたいことだよね。
「リュシオン様!どうかお願いします!神に愛されている、といっても過言でない才能を持つあなたが、神殿にいてくれるのなら、きっともっとたくさんの人々が救われます!」
完全に自分の世界に入って、話す。
……あぁ、思い出してしまった。俺はこの目を何度も見たことがある。自分の利益を一番に考える、クソみたいな人間の目を。
『あなたひとりだと大変でしょう?私も協力するわよ?』
『なんてかわいそうな子なんだ、僕に任せてくれれば君は何も心配しなくていいんだよ!』
この神官も、子供だから簡単に扱える、なんて浅はかな考えで、自分の利益のために利用しようとしているんだろう。
「お誘いありがとうございます。ですが、あなた方のような神官の方々と、共に神に尽くすには、力不足と感じます。ですので、ありがたいことですが、今回は、お断りさせていただきたいです。」
「そんなこと!あなたほど神に尽くすのにふさわしい人はおりません!」
「神官殿、リュシオンもこう言っているので。」
「ですが!!」
「……他になにか問題でも?」
父が鋭い目を神官に向ける。
「い、いえ。特に、何も……」
父上に怖気付いたように、あんなに強かった態度がみるみると弱くなっていく。
「では、これで失礼しようか。帰ろう、二人とも。」
「はい。」
そうして俺たちは神殿を後にした。