22話 二人の思い
サフィーが部屋に入ったのを確認して、気配隠ぺい魔法を解く。
「シアン。」
奥に進み、既に席に座っていたシアンに、声をかける。
「来たな。」
「あ、ノルディック侯爵令息様。」
ラクト子爵令嬢が、こちらを見てつぶやいた。
「お久しぶりですね、ラクト子爵令嬢。」
つい癖で猫かぶったけど、態度どうしようかな、この状況。
もう既にシアンって呼んじゃったけど。
「え、シオなんか、気持ち悪い、というか違和感がすごい。」
「君も言うのね、それ。」
前にシアンにも言われたけど。
「……ノルディック侯爵令息様は、あの、その……」
ラクト子爵令嬢が、戸惑ったように言う。
「ああ、こいつ、昔から人間不信なせいで猫かぶんのが癖になってるだけだから、そんな気にすんな。シオンも、今は、別に普通でいいだろ。」
「だから、癖になってんの。ラクト子爵令嬢にこっちを見せるつもりは、なかったし。」
「そう、なんですね。すこし、びっくりしました。」
……まだ、なんか緊張してる感じあるな。
俺が、前と違いすぎて、逆にってこと?
「で、そろそろ話進めるぞ。とりあえず、二人で話したいんだろ。」
シアンが言った。
「あ、ありがとうございます。パーシアン様。」
とは、言ったものの。
「「……」」
ま、そりゃそうだよね。この状況で、普段通りに話ができるわけがない。
お互いに、嫌われるのを恐れている、この状況じゃ。
ただ、この状況で口を挟むのも、あれだよね。
どうしようかな。
「……サフィーリア。」
そんなふうに考えていると、ラクト子爵令嬢が突然、サフィーの名前を呼んだ。
「スフィア?」
サフィーも、それに応えるように、名前を呼んだ。
「……ごめんなさい。本当に、ごめんなさいっ!」
「え、あ、スフィア?」
「あなたを無視するようなことして、傷つけてしまって。ずっと後悔してた。でも、私の立場の問題に、サフィーリアを巻き込みたくなくて。これが一番良い方法だって、思ってしまって。本当に、ごめんなさい!」
「スフィア……」
サフィーが、呆然とした顔で、つぶやく。
ただ、すぐに、切り替えて、言った。
「スフィア、たしかに、すっごく、嫌だった。悲しかった。これは、はっきり言っておくね?」
ラクト子爵令嬢が、小さく、頷く。
「でもね。私、他の人に、何か言われたりするのは、別に、そこまで気にしてなかったよ。」
「……え?」
「別に、嫌な言葉は、言われなれてるし。手も出されてないし。それより、私は、もっと、スフィアに頼ってほしかった。」
待て待て、なんか今この子、色々問題になりそうなこと、言ったよね?
絶対口挟める雰囲気じゃないけど。
「別に、いいよ、巻き込まれても。私は、スフィアのこと、大事な友達だと思ってるから。迷惑ぐらい、かけてよ。」
「サフィーリア……」
その瞬間、ラクト子爵令嬢の目から、涙が溢れた。
「いいの?本当に?これからも、サフィーリアの友達で?」
ラクト子爵令嬢が、震える声で、必死に言葉を紡ぐ。
「いいんだよ。私が良いって言ってるんだから!」
そんなラクト子爵令嬢に、サフィーは、ニコッと笑って、そう言った。
「……とりあえず、上手くいったみたいだな。」
シアンが、すこし小声で、話しかけてきた。
「そうだね。……聞き捨てならないことも、聞こえたけど。」
多分、家でのこと、だろうな。
……大丈夫そうだったら、もうちょっと詳しく聞いてみよう。
しばらくして、ラクト子爵令嬢が、こちらに話しかけた。
「もう、大丈夫です。この場をつくってくださり、本当にありがとうございました。」
ラクト子爵令嬢が、深々とお辞儀をする。
「別に、俺らは、やりたいようにやっただけだしな。」
「そうだね。無事に和解できたなら、良かったよ。」
さて、次は……
「ねえ、シオ。私、具体的に何すべきだと思う?結局、私が変われば、済む話じゃん?」
サフィーが、俺に話しかけた。
「今、ちょうどその話をしようと、思ってたんだよね。……じゃあ、とりあえず聞いてもらおっか。軽い職権乱用の話。」




