20話 情報の共有
学校が終わり、寮に戻ると、部屋には既に、シアンがいた。
「おかえり、シオン。」
「ただいま、シアン。」
今日は、王子たちとの生徒会での集まりもなかったため、シアンとちゃんと顔を合わせるのは、今が初めてだ。
「で、シオン。今日のことなんだが。」
「あ、急に頼んでごめんね。どうだった?聖女は。」
シアンが急に真剣な顔をする。
……珍しいな。シアンがここまでになるのは。
あの時、十年前の、儀式の後、話した時以来かもしれない。
「ああ、スフィアは、おそらく、聖女の立場を嫌っている、というより憎む、と言った方が正しいかもな、あれは。」
聖女としての立場を?
ということは、聖女となったことで、起こったことを嘆いているってことかな。……だとしたら。
「聖女、ラクト子爵令嬢は、サフィーリア・ディアンの話をしてた?」
そう言うと、シアンが半ば呆れたような顔で、こちらを見てきた。
「そうだ。それは、そうだし、いつもの事ではあるが、なんでわかるんだよ、マジで。」
「今回は、少し違うよ。シアンのところにアイルを送り込んだ後、俺は、サフィーリア・ディアンと話していたから。」
シアンが少し、驚いた顔をする。
「シオンが自分で?珍しいな。」
「……今回は、ちょっと特別。相手が相手だっただけに、俺が行った方がいいと思ったの。」
「……なあ、やっぱ、シオン、サフィーリア・ディアンとの間になんかあんの?渓谷の時も思ったけど。いつものお前なら、接点を作らないように、隠れてやるだろ。」
さすがにわかってたか。まあ、そろそろ言わなきゃなって思ってたし。その方が都合がいいんだけど。
「シアン、昔、領地に行った時、君が馬車で酔って初日の一日だけ、寝込んでたの、覚えてるよね。」
「ああ、酷い目にあった。」
シアンが遠い目をして言った。
「あの時さ、君が寝込んでるから、俺一人だけで領地に、出てたじゃん。そこで出会ったのが、サフィー、サフィーリアなの。」
「……その一日だけで、よほど気に入ったんだな。お前、必要以上に名前呼ばねぇし、俺以外を愛称で呼んでんのとか、初めて聞いた。」
そんなシアンに少し笑って返す。
「そうだね。なんだろう、本当にただ、なんとなくで直感的だったんだよね?自分でもよくわかんないけど。……信じてみたくなったんだよね、あって数時間の初対面だったのに。」
「なるほどな。まあ、シオンがいいんなら、いいんじゃね?」
「うん。それで話戻すけど、サフィーは、ラクト子爵令嬢と話したいって言ってた。予想はしてたから、ラクト子爵令嬢の考えも聞こうと思って、シアンを彼女のとこに、送り込んだんだけど、予想以上に上手くいったみたいだね?」
「……まあな。」
「シアンが誰かに対して、そんなに真剣になるなんて、送り込んだ甲斐があったね。」
ニヤニヤしながらシアンを見ると、案の定、目をそらされた。
さらっと、名前呼んでたのも、気づいてるからね。
こうやって、からかわれるのは、わかってただろうに。そこまでして、シアンが助けになりたい、と思える相手ができたみたいで、よかった。
シアンは、俺と違って、人間不信って訳では無いけど、単純に興味を持つことが少ない。
本人がそれを自覚しているかは、別として。
だから、おそらく、シアンにとって、スフィア・ラクトは、重要な人間になる。少なくとも、もう確実に、他人ではなくなっているだろう。
「……なんだよ。」
ずっとシアンの方を見ていたら、不機嫌そうに言われた。
「なんでもないよ。じゃあ、とりあえず、サフィーとラクト子爵令嬢と会う機会を作んなきゃね。」
二人ともが望むなら、きっと、サフィーとラクト子爵令嬢の仲違いは、無くなるだろう。
「……サフィーの立場についても、考えないと。」
「確かにな。他の奴らを黙らせるための、何か、か。」
シアンが悩むように、つぶやいた。
サフィーの地位を高める、要は聖女っていう存在と、並べる立場にしなきゃいけない。
「あ、そうだ。」
ふと、あることを思い出した。
「なんかいい案でも思いついたのか?」
「まあ、そうだけど。サフィーの努力と……多少の職権乱用がいるかなって感じのやつ?」




