16話 衝動のようなもの
スフィア・ラクトが聖女であることが公表されて、数日がたった。
学校でも、その波紋が広がっていて、聖女を持ち上げたり、媚びを売ったりする人が現れたりしていて、俺たちは、対応に追われていた。
現在、聖女は、立場から、安全上の理由で、元々住んでいた寮から、王城に移って生活している。
王子二人も、王城で暮らしているが、聖女は、別棟の聖女専用の所らしい。
ただ、話す機会はあるようで、二人との仲が深まっているのが目に見えた。
それよりも、俺が心配しているのは、サフィーのことだった。
俺が、聖女と話すことはあまりない。
だから、今のサフィーについて知っていることは少ないが、元々聖女と仲がよかったことで、なにか因縁をつけて絡まれていそうだと、予想していた。
サフィーなら、上手く対処はできそうな気はするけど。
考えていても、忙しくて、調べることすら出来なかった。
そんなある日だった。
少し仕事が片付いて、アイルと共に校内を歩いていた時、吹き抜けになっている中庭の方が騒がしい、と思い、上から覗き込んだ時、見えた光景は。
聖女が、呼びかけたサフィーを無視し、去っていくものだった。
聖女とサフィーは、仲が良いのだと思っていたけど、違ったのか?……いや、でも、俺がサフィーを助けた時の聖女の様子は、嘘には、見えなかった。
少し考えたあと、他の人に聞かれないように、小声でアイルに話しかける。
「アイル、シアンに聖女を追うように伝えて。俺は別で動くから。」
「わかりました。」
アイルは、小さく頷き、反対方向へ歩き出した。
さて、聖女は、シアンに任せて、俺はサフィーを追いかけよう。
おそらく、まだそこまで遠くには行っていないはずだ。
俺は、歩くスピードを少し速めて、中庭の方に出た。
この時の俺は、ただ、無意識に動いていた。
何も考えずにサフィーを助けるために、行動していた。
昔のように、楽しかった時間を期待していたのか、他のなにかがあったのか。
その理由は自分でもよくわからなくて。
サフィーが昔と変わっていないとも限らないし、もしかしたら、他の令嬢たちと同じように、媚びを売ったり、擦り寄る人間になっているかもしれない。
それでも、俺は……
「あ、いたいた。ちょっと探したんだよ?」
サフィーの助けになりたい。
ただ、それだけなんだ。




