11話 白髪の少女
悲鳴が聞こえてすぐに、第一王子は、聞こえた悲鳴のほうに走り出した。
「第一王子殿下!」
第一王子を追って俺も走り出す。
「リュシオン……さっきの悲鳴、ただ事では無かったように感じたのは、俺だけか?」
第一王子が走りながら、話しかけてくる。
「いえ、余裕のなさそうな悲鳴に聞こえましたし、それに……あちらの方から嫌な気配を感じます。」
「ハハッ、奇遇だな、俺もだ。」
第一王子には、笑いながらも、焦りの表情が見えた。
「ここか、何があった!」
第一王子が声を上げる。
「あ、あちらのほうに……魔物が!」
複数の生徒が口々に声を上げる。
「魔物だと!?」
それを聞いて、俺は生徒たちが指さす場所を見る。
……マジでいるじゃん、魔物。しかもかなり強そうな個体だし。
「行くぞ、リュシオン!このままだと生徒に被害が出るかもしれん!」
「はい!」
そして、魔物のいる場所についた瞬間。
突然、そこにいた一人の生徒から、光が放たれた。
「なんだ!?」
……この力って、固有魔法の感じと似てる?
とっさに、魔物の方を見ると、魔物は、苦しむように消えかけていた。
「どう、なっている?」
第一王子が、呆然と立っている中、俺は、焦りを抑えつつ、渓谷の方へ駆け寄った。
自分が魔物の後ろに見た光景を信じられなくて。
渓谷の下を覗き込むと、そこには、白髪の少女が渓谷に真っ逆さまに落ちていっているのが見えた。
すぐさま俺は、空間魔法を展開する。
「どうした、リュシオン……まさか、誰かが下にいるのか!?」
第一王子の言葉を無視して、俺は、魔法の展開を続ける。
頼む、間に合ってくれ……
焦りと、恐怖のようなものを抱えながらも、俺は魔法を展開する。
そして……俺は、魔法で転移させた、少女を受け止めた。
その少女は、やはり、見覚えのある白髪で。
「間に合った、のか。」
後ろで第一王子が、安堵する声が聞こえた。
「サフィーリア!」
先程、光を放った生徒も我に返ったらしく、声を上げる。
サフィーリア、ね。
……こんな会い方は、したくなかったな。
悲鳴が聞こえて、魔物が現れたと考えられる時間から見て、魔物と戦い、進行を妨げていたのだろう。
だが、ここまで無茶をしたところを見ると、やはり、この少女は、八年前から、変わっていないのかもしれない。
「第一王子殿下!」
警備の人も来たみたいだし、あとは任せよう。
いることはわかったんだから、今はそれで十分だ。
再会は、まだあとでもいい。
「あのっ!」
先程の生徒が俺に声をかける。
「サフィーリアを助けてくれてありがとうございました!」
……ちゃんと友達できたみたいだね。
「いえ、俺に出来ることをしたまでです。」
そういえば、あの光って……
「リュシオン、話し中のところ悪いが、戻るぞ。この騒ぎの中、俺とリュシオンがいないと、色々と面倒なことになる。」
「ええ、わかっています、第一王子殿下。」
「えっ、第一王子殿下?……ご、ご無礼を、も、申し訳ございませんでした!」
あっ、気づいてなかったのか。
「俺は、構いません。それより、俺たちはもう行かなければならないので、このご令嬢をよろしくお願いします。」
そう言って少女をそっと近くのベンチに下ろした。
「は、はいっ!本当にありがとうございました!!」
それを聞いて、にこやかに微笑んでから、俺と第一王子は、歩き出した。
……またね、サフィー。約束を果たすのは、また今度ね。




