9話 感謝 sideサフィーリア
その次の日、学年の生徒全員での親睦会が開かれた。
「ここが聖闇の渓谷……なにか不思議な感じがするね。」
スフィアがほほえみながら話す。
「そう?きれいな場所だなーとは思うけど。」
なにか、パワースポットみたいなものなのかな。
最初に話してから、まだ一日も経っていないはずなのに私とスフィアは、一緒にいるのが当たり前のように過ごしていた。
やっぱり自分らしくいられる相手といるのは、楽しいんだな。
お兄様が学園に行ってからというもの、私と対等に話してくれる人すら、ろくにいなかったから、忘れていたみたいだ。
「ねぇ、スフィア、あっちの方も行ってみよ!」
私は、自然が豊かで、あまり人がいなさそうな場所を指さす。
「いいね!行ってみよう!」
そこは、揺らめく木々に囲まれた小さな花畑だった。
「すごいきれいな場所だね、ここ。」
スフィアが、景色に夢中になっている。
よほど気に入ったんだろうなー。
そんなスフィアを見つつも、周囲を見渡してみる。
ほんとに人気がすくない、こんなにきれいな所なのに。
……他の場所にも、ここと似たようなところがあるのかな。
かなり広範囲が整備されている様子だったから、それでもおかしくなさそう、というか、そうでなければ、こんなに人気がすくない理由もないだろうし。
木々の方に視線を向けてみると、ちょうど良さそう木陰があった。
あそこなら、この花畑もきれいに見えそうかも。
「スフィア、あっちに座らない?ちょうど良さそうな場所もあるし。」
はっとした顔をして、スフィアがこちらを振り返った。
「あっごめんね、サフィーリア。つい夢中になっちゃった。」
「いいよ!私もその気持ちはわかるしね。」
そうやって話しながら、私たちは木陰の方に移動した。
そこに二人で座り込むと、風で木々が揺れる音が、はっきりと聞こえてきた。
「風が心地良いね。」
スフィアがつぶやくように言う。
「だねー。」
こんな場所に来ると、八年前のことを思い出す。
あの何よりも楽しかった、シオと過ごした時間のこと。
お母様が亡くなってから、お兄様が父と義母にバレないように、私の味方であってくれたことと、シオとの約束は、ずっと私を支えてくれた。
「サフィーリア?」
ずっと黙ったままの私を不思議に思ったのか、スフィアが私の顔を覗き込んできた。
「ちょっとぼーっとしてた。」
学園のクラス内で友達ができるなんて、思ってもみなかった。というか、必要ないとさえ、思っていた。
シオと会って、家から出られれば、それでいい、と思って入学したから。
「私、スフィアに会えて良かった。」
スフィアが驚いた顔ですこし笑いながら話す。
「いきなりなに言ってるの?というか、まだ会って二日だよ?」
「いいんだよ、思ったことは思った時に言わないと!」
「なにそれ!」
それからしばらくは、二人で笑いあっていた。
補足すると、渓谷の周辺の警備は、学園の人たちが騎士を雇ってやっているので、問題ないってことで、護衛は連れていません。
ただ、サフィーリアとスフィアは、もともと使用人や護衛を連れていないので、いつも必要な時だけ依頼する感じなので、今はあんまり関係ないです。




