8話 学園での日々 sideサフィーリア
「はぁ。」
一人、人気のない学園内の庭園のベンチに座り込んだ私は、小さくため息をついた。
あの両親から離れられたはいいものの、平民の愛人の子である私への、ほかの貴族の生徒からの当たりは、酷いものだった。
『愛人の子が、よくも堂々としていられるわね。』
『汚らわしい血が混ざっているくせに。』
『あなたの容姿、どちらの親のものでもないんでしょう?本当は貴族の血すら混ざっていないんじゃないかしら?』
罵詈雑言の数々には、思わず品性を疑った。
毎回、にこやかに微笑んでその場を去っている私を誰か褒めて欲しいものだ。
ちなみに、私の髪と目の色の話は、事実で、伯爵である父や、母であるネティアのどちらとも違う色を持っている。
……でも、ふつうに気に入ってるからいいんだけどね。
そんなことを考えながら、私は一人、食事をとる。
まだ学園に入学して、二日目だというのに、こんな調子で五年もやっていけるんだろうか。
「はぁ。」
そう考えてしまうとまた、頭が重くなる。
その時、突然そばで物音がした。
「……誰ですか?」
人がいるかもわからないが、とりあえず声をかけてみる。
すると、プラチナブロンドの髪の少女が、おそるおそるといったように、影から出てきた。
「す、すみません!あの、えっと隠れていた訳ではないのです!」
……隠れていたくせに何を言っているんだか。
「別に怒っている訳ではないので、大丈夫です。それより、あなたは……」
「あっ!すみません、申し遅れました。私は、スフィア・ラクトと申します。」
スフィア・ラクト、確か魔法の才を認められて平民から養子になった子爵令嬢、だったっけ。確か、クラスも同じだったはず。
「なにか御用ですか、ラクト子爵令嬢?」
「あ、そう、ですね。あのこんなことを言うのはおこがましいと思われるかもしれないのてすが……私、ディアン伯爵令嬢様とお話してみたいと思っていたのです!」
意を決したようにスフィアは、話し出す。
「何故ですか?私があなたと同じようにクラスの貴族令嬢からぞんざいに扱われているから、ですか?」
あくまでにこやかに、そんな言葉を発する。
そう、彼女も平民という生まれのせいで、私と同じような扱いを受けている。
もしも、そんな理由で来たのなら、もちろんお断りだが。
「それは、違います!」
さっきまでのおどおどした態度とは、うって変わってしっかりとした声が返ってきた。
「私は、かっこいいと思ったんです!あんな扱いを受けても、貴族としての対応を崩さないあなたを!そんな人を自分と同じだなんて思うはずがありません!」
正直、驚いた。
すくなくとも、すこしは私を舐めてかかっていると思っていた。
「あははっ!」
つい、笑い声をあげてしまった。
「どっ、どうされたのですか!ディアン伯爵令嬢様!」
「サフィーリアで構いません。あなたがそこまで言うなら、私もスフィアと呼ばせてもらうので。」
かっこいい、か。穏便にすますための行動に、まさかこんなおまけがついてくるなんて。
「え、いいのですか?」
スフィアが戸惑いながらも、すこし嬉しそうな表情を浮かべながら、私に言葉を発した。
……なんでだろう、この子となら、きっといい関係を築けるだろう、という確信めいたものが生まれた気がする。
「私がいいって言っているんだから、気にしないで。口調も楽にしてね。私も素であなたと接してみることにするから。」
「はいっ!いや、うん!サフィーリア!」
こんな子と出会えるだなんて、今の私は運がいいのかもしれない。
「これからよろしくね、スフィア!」




