32話 承認
「……どうして、俺たちがお二人と戦う必要が?」
「あなたたちの力量を確認するためといったところですかね。俺は特に、あなたたちのことを信頼している訳ではないので。」
リュシオン様がにこり微笑んで話す。
……本当は、わかっていた。パーシアン様にも、リュシオン様にも、俺たちが信頼されていないということ。
今までは、お二人にとって、父である侯爵様の部下という認識でしかなかったはずだ。
だから、自分たちが信頼できるかどうか、見極める必要がなかった。
変わったとするならば、俺たちが元暗殺者であることがわかったことなんだろうが、それがどうしたといわれると、わからない。
暗殺者だったから、信用できないということなのか、でもそれも何か違う気がする。
ただ、この提案は、俺たちにとっても、悪くないことのはずだ。
「……承りました。戦いましょう。……それで、信頼してもらえるのなら。」
その場にいた、俺とリュシオン様以外が、驚いた顔をする。
「アイルさん?いいの?」
アルネが不安そうに問いかけてくる。
「必要なことなんだよ、きっと。俺たちがこのままお二人と、関わるのなら。」
俺たちが、侯爵様の部下であり、お二人の部下でもある以上。
「ありがとうございます、アイル。……では、始めましょうか。」
俺たちには、お二人の気持ちはわからない。
きっとお二人も、
「といっても、どんな風に戦うんですかー?どう考えても、俺らの方が有利なのに。」
アルネが口を挟む。
「それは気にすんな。2対4で、本気で戦ってくれ。……どれだけ差があったとしても、俺たちは、負ける気はねぇよ?」
強気な口調のパーシアン様にハッとする。
基本的にお互いしか信頼していない二人なら、二人だけで何かを成し遂げてしまえる力をもっていたっておかしくない。
「「かしこまりました。」」
四人で声をそろえて言う。
そうやって、生きてきたんだろう。
だからこそ、俺たちをすこしでも信頼してほしい、と思ってしまう。
覚悟は決まったな。
「始めましょう。」
きっと、これが、お二人に信頼してもらえる、最初で最後のチャンスだから。




